こうま座通信

終わりのない文章

『大豆田とわ子』最終回。

2021-06-15 | Weblog
あれこれドラマをみた今期でしたが、結局
「大豆田とわ子」が、ものの見事に全てを綺麗にかっさらっていったのでした。
「俺の家」ロスから、一気に「元夫」ロスへ・・・。

最終回、とわ子がお尻で踏んづけたシナモンロールを取り出して食べるとき、
これ、「かもめ食堂」の対偶世界なのでは・・・とも思った。
「かもめ食堂」は自分たちで粉からこねて焼いて、それも大好きだけど、
自分のお尻で潰した買ってきたシナモンロールを食べる大豆田とわ子の人生も本当に本当に素晴らしくて。どちらかというとこの先、自分でシナモンロールを焼く可能性はほぼゼロだが、お尻で潰したシナモンロールを食べる可能性は人生100年と考えたらわずかながらある気がする。

とわ子が転んでも何度でも起こしてくれた人たち。レジリエンスってそういうこと。
遠いフィンランドまで行かなくても、とわ子はそんな人たちに囲まれて、とっても豊かに暮らしている。
かもめ食堂の3人には、元夫はいなさそうだったけど(描かれていなかっただけ?)、その分、とわ子がまとめて引き受けた世界。
たくさんのろうそくの火に灯されて。
なんて素晴らしい最終回なんだ。

今、『100分で名著』で、華氏451度をやっている。
火炎放射器の火と、ろうそくの火は、火は火でも、全然違うという話。
そんなろうそくがたくさんともっている中、「パーティーの片付け」について語るシンシン。。。

うたちゃん、医者の妻になることを目指すのではなく、医者を目指すことになった。
つき子さんの人生も、なんと味わい深いのか・・・。
みんなそれぞれ大変だけど・・・

だいたい、田中さんは、「大豆田」って苗字になりたいとまで言っていた。世の男性は自分の苗字が変わることなんて考えたこともないという、(そして多くは苗字が変わらないことが当たり前で、男女問わず話し合うことすら思いつかないことも多い)この社会で。すごいドラマですよ・・・。

「一匹オオカミ」という書初めも良い。
タッチの主題歌も良い。
何もかもが良い。良すぎだ。

我ながら野暮だなと思いつつ「女社長、ドラマ」で検索すると、
連ドラで女性社長で主人公ってものはほとんど見当たらない。
タコ社長然り。(←社長のイメージが貧困)
やっぱり社長=男性・・・。
森発言から何から、このジェンダーギャップあり過ぎ社会で、
とわ子みたいな人が決して順風満帆ではないにしても、人生を思う存分謳歌する主人公として描かれる。
うたちゃんも紆余曲折ありながらもまっすぐ育っている。
「かもめ食堂」のようにフィンランドに行かずして、
代々木八幡あたりで好きな服を着て美味しいものを食べて素敵に楽しく暮らしている。

「社長が寿退社」というフレーズも笑った。なぜそこで私は笑うのだ。
「寿退社」というフレーズ、これどう翻訳しますかと思って
DeepL先生に聞いたら、resignation from a company on marriage
って「寿」感を出すつもりはさらさらなさそうだ。
このことばが隠蔽してきた構造的な問題を、笑いのなかで。

音、音楽がまたつくづくよかった。
とわ子がカレーの皿を指さすときの音とか芸が細かい・・・。
作曲家の方が、武満徹の名前を出しながら朝日新聞のインタビューに答えていて、
もうそれだけで、何か、こみ上げてくるものがあった。
このドラマに、武満徹もいるのだと・・・。

全てのものが贅沢で、料理も家具も洋服も、あまりにも素敵で、
國分巧一郎さんの
「デモクラティック・ラグジュアリー」の世界に迷い込んだようだ。
「われわれは常に、贅沢をさせろと要求しなければいけない」世界。
この程度で我慢しろ、ありがたくおもえ、感謝しろ、という恩着せがましいところは一切ない。1ミリも妥協しない。

そして前触れのなかったオダギリジョーにトドメを刺されるという贅沢の極み。
なんなら最終回、ワインのコルク4つになっていて欲しかったけど・・・。
「夢が叶いますね」、そこまでジョーに言われても靡かないとわ子の強靭な一匹オオカミぶりは驚嘆すべき。
そして、たった数回の登場で、視聴者を「小鳥遊ロス」に陥れる仕掛け、これもまた贅沢。

脚本、松さん、音楽・・・本当に何もかもが素敵すぎた。
豆・・・カラット・・・永遠・・・とわ子・・・
しばらく何度か見返したくなる気がします。

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