第105回目の夏がやってきます。
例年通り、すでに沖縄では開幕。
7月末の49代表確定まで、
暑さの中、熱き戦いが繰り広げられていきます。
今年の高校野球、
選抜から完全に応援と声出しが解禁。
3年間の雌伏の時を経て、
また高校野球が正常な形で戻ってきています。
先日、5年ごとに行われる高校野球実態調査の結果が出ました。
部員の総数も激減し、
これまで「高校野球の当たり前」だったことが、
どんどん変化していっている実態が見て取れました。
物事は時代とともにどんどん変化していかなければなりませんが、
その中に受け継いでいくべきものが必ずあるはずで、
それを受け継ぎ、さらにブラッシュアップしていく。
そんな「次の100年」の高校野球であってほしいと、
心から願っています。
昨年は仙台育英が、
東北に初めて真紅の大旗を持ち帰り、
新しい時代がやってきたことを多くのファンに印象付けてくれました。
準優勝も新鋭の下関国際で、
なんと絶対王者の大阪桐蔭を撃破しての決勝進出。
大いに驚かせてくれました。
さらに今年の選抜では、
挑んでも挑んでも甲子園の壁に跳ね返され続けていた山梨学院が、
ひとつの壁を破るとあれよあれよと進撃。
なんと頂点に立ってしまいました。
力がありながら、
甲子園では活躍できない、
あるいは甲子園に手が届かない、
そういった学校は本当にたくさんあります。
彼らにとって、
この2年の甲子園の結果は、
勇気をもたらしてくれたのではないでしょうか。
「俺たちも、何かのきっかけがあれば大きく飛躍できる」
そう思って臨む、この105回大会だと思います。
いずれにしても、
多くの高校球児にとって、
この夏が「自分の野球生活の集大成」になることでしょう。
「自分史」の中に、
鮮烈な1ページを書き込めるよう、
頑張ってほしいと思います。
今年も熱い夏、
始まります。
地方大会の展望を9回のシリーズで。
≪第105回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望1 北海道・東北地区 -
【北北海道】(参加校71チーム)
クラーク国際中心に、3強が鎬を削る。
◎ クラーク国際
〇 白樺学園
△ 旭川志峯
▲ 遠軽 旭川実 帯広農
選抜に2年連続出場したクラーク国際が本命。選抜では初戦で沖縄尚学に屈したが、強豪に対してエース新岡がしっかりと投げて接戦に持ち込み、ある程度の自信を得た。ネックは新岡ひとりに頼る投手陣だが、北北海道大会はさほど日程がタイトではないので、新岡が好調であれば乗り切れる可能性も高い。打線は相変わらず質の高い選手が揃い、攻撃力は水準以上。追っていくのはこちらも常連の白樺学園か。西村を中心に4,5枚揃う投手陣が機能すれば本命に躍り出る。打線もクラークに引けを取らず、勝負の夏にすべてをかける。昨年代表の旭川志峯は、旭川大高から校名を変更して初めての夏を戦う。エース伊地知が成長、今年も戦える布陣になってきた。もともと夏には強さを発揮するチーム。昨年は勢いに乗って聖地でも大阪桐蔭をあと一歩まで追いつめるなど、確かな足跡を残した。3強が鋭く代表権を争うが、そのほかの学校にもチャンスあり。まずその筆頭は、春の全道大会で優勝した北海をあと一歩まで追いつめた遠軽が上がる。打線は北海の強力投手陣を打ち込みその力を見せた。投手陣に不安は残るが、勢いに乗ると一気に、という感じもする。2年ぶりの夏を狙う帯広農は、甲子園の生き残りである千場がチームをけん引、エース東村にも安定感がある。そのほかでは、エース田中で波乱を狙う旭川実や、旭川竜谷なども聖地を狙う。
【南北海道】(参加100チーム)
圧倒的な戦力を誇る北海が大本命。札幌大谷、立命館慶祥、北海道栄、札幌日大など精鋭が追ってくる。
◎ 北海
〇 札幌大谷 立命館慶祥
△ 北海道栄 札幌日大
▲ 駒大苫小牧 東海大札幌 札幌第一 北照
好投手を擁するチームが大会を制することが多い南北海道大会。今年は注目のエース熊谷に岡田、長内ら分厚い投手陣を誇る北海が大本命。北海は昨秋の全道大会でクラーク国際に敗れ準優勝に終わったものの、力は互角か上回るとされていた。そして迎えた春、北海はそのエース熊谷を欠きながらも、分厚い投手陣と強力打線を押し立て全道を制覇。今のところ、北海道内に敵はいない、盤石な体制を築いたように見える。唯一の心配は春の大会を故障で棒に振った熊谷だが、復調の気配を見せており、夏はしっかりと復帰の気配だ。打線は鋭く振り切る北海らしい打線で、どんな投手からも4,5点は間違いなく取れる。どこを切っても穴はなく大本命だ。追っていく一番手は、昨夏の覇者、札幌大谷か。今年は打線が強力で、ライバル北海とは春の全道で準決勝で対戦、0-4と完封で敗れた。しかしこの試合で投手陣に収穫もあり、夏は逆転を狙う。秋、春ともに全道4強入りの立命館慶祥は、こちらも強力打線がチームのストロングポイント。打ち負けない力で、一気に初出場を奪えるか。春準優勝の北海道栄は、試合をするたび強くなっていった感じのチームだが、やや絶対的な戦力が足りないように見える。打線が爆発すれば覇権争いにからめるか。札幌日大はエース左腕の小熊は注目だが、打線が奮起しないと厳しいか。名門の駒大苫小牧、東海大札幌は今年はやや後ろに隠れている感じだが、個々の選手が力は持っており、勢いに乗りたいところだ。
【青森】(参加48チーム)
今年は県の優勝はないものの、やはり”絶対王者”八戸学院光星が本命。気合満点の八戸工大一、青森山田がどこまで迫れるか。
◎ 八戸学院光星
〇 八戸工大一 青森山田
△ 弘前学院聖愛
▲ 弘前東 弘前工 青森商 東奥義塾
ここ数年、2000年代から絶対王者に君臨した八戸学院光星を追って、青森山田、八戸工大一、弘前学院聖愛の3校が勝負をかけるという展開になることが多い青森大会。今年もその図式は変わらず、八戸学院光星が逃げ切るのか否かが焦点となりそうだ。その八戸学院光星は、秋、春ともに県大会を制することができなかったが、県2位で出場した春の東北大会で、その力を見せつけて、鶴岡東、明桜、そして仙台育英と各県優勝の強豪を次々と破り優勝を果たし、高らかに復活を宣言した。もともと力は持っていたチーム。岡本と洗平の2本の2年生左腕がついに本格化し始め、守りが固まったことが勝ちだした要因。もともと強力だった打線は相変わらずの強打を見せ、夏に向けて視界は良好だ。春の県大会で、接戦で光星に逆転勝ちを収めた八戸工大一は、その光星戦で見せた強さと、続けて出場した東北大会初戦、盛岡三戦で見せたもろさが同居したチームで、評価がしづらいことは確か。夏もライバルには投手陣が踏ん張って勝負を後半に持ち込めれば勝機が出てくる。秋優勝の青森山田は、秋に県優勝を飾り、東北大会で仙台育英に接戦を繰り広げた強さが春は感じられなかった。投打ともにコマは揃っていて、光星や工大一とがっぷりの勝負ができる戦力は整っているだけに、いい波に乗っていきたいところだ。四強の一角である弘前学院聖愛は、充実した投手陣で2年ぶりの夏をつかみたい。そのほかでは、秋準優勝の弘前東が、再度旋風を巻き起こそうと腕を撫している。名門の青森商は、エース佐々木と主砲・木村と、投打の軸で勝負だ。
【秋田】(参加40チーム)
過去2年の代表、能代松陽と明桜が双璧。秋田商、秋田、秋田中央、秋田南らの名門が虎視眈々と狙う。
◎ 能代松陽 明桜
〇 秋田商 秋田 秋田南 秋田中央
△ 横手 由利 大曲工
▲ 大館鳳鳴 金足農 本荘
能代松陽・エース森岡の選抜でのピッチングは、まさにセンセーショナルだった。敗れたとはいえ、大阪桐蔭をほぼ完ぺきに抑えきった投球は、県民のハートをグッとつかむものがあっただろう。その能代松陽は、選抜から帰って森岡を休養させ、2番手以下の投手の育成を優先させた。もともとしっかり守って勝機をつかむチームカラーだけに、エース森岡と2番手以下の投手陣がいかに踏ん張れるかがカギ。打線は相変わらず戦は細いものの、夏にはしっかりと得点を取れるように仕込んでくるのが例年のこと。その能代松陽のライバル明桜は、2年ぶりの甲子園へ実力を蓄えている。春はしっかりと県大会を勝ち切り、東北大会でも2勝。特に花巻東に完勝したゲームは素晴らしい戦いだった。県大会では全5試合を完封したエース難波が中心の投手陣は、控えにも好投手が並び夏の対策は万全。打線も例年よりもパンチ力があり、チーム力はここ数年でも最高レベルと胸を張る。この2強が他校より頭一つ抜け出している感じだが、そのほかでは秋田商が春準優勝と結果を出した。秋田商らしい正攻法の野球で、キッチリと2強と決着をつける腹づもりだ。秋田南はここ数年常に上位に顔を出す強豪校。念願の甲子園初出場に向け、今年も仕上がりの良さを見せる。春は4強、昨夏は準優勝と、あと一歩の壁が敗れていない状況で、今年も気合満点で大会に臨む。名門秋田、秋田中央は巻き返しに秘策を練り、エース藤原が注目の大曲工も無視できない存在だ。
【岩手】(参加56チーム)
さあ、佐々木の最後の夏。聖地に届くか、花巻東。
◎ 花巻東
〇 一関学院
△ 盛岡大附 盛岡三
▲ 専大北上 盛岡四 大船渡 盛岡誠桜
すでに高校通算ホームランの本数は130発を超え、まさに無人の野を行くスラッガー・佐々木。その佐々木を擁し、佐々木監督が長年狙っていた全国制覇への道を突き進むかと思われた花巻東だが、昨年、今年の戦いぶりは不安定なものだった。どうしても核になる投手が確立せず、負ける時は必ず打ち込まれて苦杯をなめるというパターンが確立してしまっている。その佐々木も、ややケガがちで、過去の数多のスラッガーよりも記憶に残る活躍は少ない。このままでは「記憶より記録」で高校生活を終えそうな気配だ。投手陣はコマは豊富だが、花巻東が甲子園で勝ち上がるときに見せる「豊富なコマで、キッチリつなぐ」というパターンに持ち込めていない。夏まで時間は少ないが、投手陣をきっちり確立し、甲子園でも優勝に絡む活躍をぜひしたいところだ。今年と去年、花巻東は秋春を連覇しているが、夏はコロナ前の2019年まで出場はさかのぼる。花巻東の強力な対抗馬としては、昨夏甲子園出場の一関学院が上がる。昨夏も甲子園で好投したアンダースローのエース小野が健在。強力打線こそは待ってしまう「小野マジック」を今年も見せられるか。花巻東の長年のライバル・盛岡大附は、今年はここまで音なしの構えだが、力を持っているのは確かで、夏に突如の大ブレークも十分に考えられる。伝統の強力打線は健在。花巻東のウィークポイントも投手陣だけに、得意の打撃戦に持ち込んで勝利をつかみたいところだ。そのほかでは、春県3位に入り東北大会に出場した盛岡三もなかなかの好チーム。東北大会では八戸工大一、日大山形を撃破して4強入り。大いに気を吐いた。自慢の投手陣は東北大会3試合でわずか6失点と安定しており、ロースコアのしのぎ合いになったら県下No1ではないかとの噂。専大北上、盛岡四らのかつての甲子園出場校も虎視眈々と覇権を狙い、森岡誠桜のエース高橋にも注目が集まっている。
【山形】(参加42チーム)
鶴岡東・日大山形の2強に、割って入るか? 注目の山形中央の二刀流エース・武田
◎ 鶴岡東 日大山形
〇 山形中央
△ 東海大山形 羽黒
▲ 山形商 東北文教大山形城北
2強である鶴岡東、日大山形の歩みはしっかりとしていて、今年も覇権を争う大本命だ。しかしここに全国で大注目の二刀流・山形中央の武田がどう絡んでくるのか?! なかなか興味深い大会になりそうだ。鶴岡東は、相変わらず選手層が厚く、力を持った選手たちがパワーで押し切る野球を推進している。エース桜井は安定感抜群の左腕。打線は相変わらず振りが鋭く、振り切る野球で大量得点を狙う。日大山形も打線が看板。春の県決勝ではエース菅井を登板させずに鶴岡東打線につかまったが、菅井は準決勝でノーノーを達成する程の好投手。夏の対決を心待ちにしている。打線もタイプは違うが鶴岡東に引けを取らない強力打線だ。さて、この2強の力が抜けていると思いきや、山形中央の武田がこの大会のカギを握っている。高校日本代表では最も目立っていた選手として明徳の馬淵監督からも名前が上がるほどの好投手。さらに打っても通算28本塁打のスラッガーで、好調ならば上位2校の打線とも真っ向から勝負できる。しかもチームの総合力もなかなか高く、2強ではなく3強というのが正直なところか。ここのところずっと甲子園とはご無沙汰な東海大山形も総合力の高いチームで”久しぶり”を狙っている。羽黒は5年ぶりの夏を狙い、秋8強、春4強とスケールアップしてきた。
【宮城】(参加62チーム)
連覇狙う仙台育英が盤石で1強。選抜出場の東北や名門の仙台商がスキをうかがう。
◎ 仙台育英
〇 東北
△ 仙台商
▲ 古川学園 東陵 利府 日本ウェルネス宮城 仙台一
昨夏の劇的な東北勢初の全国制覇で、仙台育英はそのステージを1段上に上げた。狙うのは現在の大阪桐蔭、かつての横浜や智辯和歌山のような、「県大会は通過点。常に甲子園で優勝候補に上がるチーム」への昇華だ。今年の仙台育英は、決して昨年のチームよりも劣っているわけではない。むしろ経験値の分だけ昨年よりも上とみる向きも多い。投手陣は高橋、湯田、仁田の150キロトリオに、その下からも続々と好投手が名乗りを上げ、まるで大学のチームのような層の厚さを誇る。この強力投手陣をベースとしているだけに、このチームが敗れるとすればそれは「打てなかったとき」の一点に限られる。昨夏のように打線が大会で「乗って」しまえば死角は一気になくなるが、今年の選抜、そして昨夏の前までのように、「敗れる時は打てずに・・・・・」という試合があると勝ち上がれないのがトーナメント戦の怖さ。今年もこの宮城県大会で敗れるという事は考えにくいが、ひょっとしたら・・・・・があるとすれば、好投手がいるチームと対戦した時か。その観点から見ると、やはり東北のエース・ハッブスに期待がかかる。東北はこの選抜出場時、自由と自立を大幅に認めたという事に注目が集まったが、プレーではその注目を集められなかった。選手たちは甲子園に忘れ物をしてきたと考えているのではないか。戦う相手は全国屈指の強豪だが、一波乱を狙っていきたいところだ。仙台商は技巧派エース・阿波がしっかりと試合を作るチーム。事実花巻東の強力打線も2点に抑えており、なかなか面白い投手だ。この3校以外は少し力の差を感じるが、古川学園や東陵などは打線も活発で面白い。利府や日本ウェルネス、仙台一なども波に乗れば。。
【福島】(参加62チーム)
聖光学院の優位は変わらない。ライバルである学法石川、日大東北の巻き返しなるか。
◎ 聖光学院
〇 学法石川
△ 日大東北
▲ 光南 郡山 東日本国際大昌平
夏14連覇の偉業がストップして新たな道を模索した聖光学院が、昨年甲子園に返り咲くと伸び伸びと自分たちの力を発揮して快進撃。学校として最高成績の甲子園4強まで上り詰めた。連覇が続いていたころ、「東北勢初の優勝」の期待を散々背負わされて、何か少し委縮した戦いになっていた聖光学院が、去年は見違えるように伸び伸び、溌溂と戦っての偉業。一つ殻を破って、「ニュー聖光学院」を見せた大会となった。もとより昨年、仙台育英が東北勢初の全国制覇を成し遂げていて、聖光学院としても背負ったすべての荷物を下ろして、いい感じでこれから戦っていけるのではないかと感じている。さて、今年の福島大会もまた「聖光学院のための大会」となる可能性が高い。投打ともにスキのない野球は健在、そして「夏の勝ち方」を熟知した斎藤采配は、他の追随を許さない。トーナメントの大会でここまで勝ち続けるのは容易ではないはず。今年のエース北沢と星名は安定感抜群で、打線は昨年並みの破壊力を誇っている。さて、追っていくのはどこか。やはり県内のライバル、学法石川と日大東北が有力。学法石川は秋準優勝、春4強だが、聖光学院の壁を破れないまま夏を迎える。投打ともにスキなくまとまるが、少しずつ聖光学院を下回るとみられるだけに、打倒には何か一つ、違うものを見つけたい。日大東北は双子の堀米兄弟がバッテリーを組み、聖光打倒を目指す。まだまだ差は感じられるが、夏までにどのくらい迫っていくことができるか。長い間聖光学院が「絶対王者」として君臨している福島大会。それだけにライバル学法石川、日大東北を含めた各校が、何か聖光学院と対戦するときは「引いた」感じになってしまっていると見える。実力のある学校が「いっちょぶちかましたる」という感じで臨んで行かない限り、この堅固な城は傾かないとみるが。。。。。