≪第107回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望9 九州 -
【福岡】(参加132チーム)
激戦も、西日本短大付の戦力が充実。3季連続の甲子園へ、立ちはだかるものはない。
◎ 西日本短大付
〇 福岡大大濠
△ 東筑 九州国際大付
▲ 飯塚 育徳館 福岡第一 東福岡 東海大福岡
出場校も多く、毎年激戦が繰り広げられる福岡。しかし今年は、西日本短大付の戦力が抜けている。昨夏、今春と甲子園でそれぞれ2勝を挙げ、非常に自信をつけた。チームの看板は強力打線だ。斉藤、佐藤、山下の中軸はどこからでもさく越えを放つことができるパンチ力抜群のクリーンアップ。ここに出塁率の高い奥、井上の俊足1・2番がしっかりとチャンスを作りまわす打線は九州でも屈指。投手力はエース中野に加え、山口や原なども春先から陣容に加わってきて、非常に層の厚い布陣となった。この夏は壁を破って甲子園3勝以上が目標。ここのところ何度も甲子園に出場していると思われがちだが、福岡大大濠は夏の甲子園に限っては、なんと1989年、平成元年から出場はない。ひと世代を通り越し、今年は36年ぶりの夏を狙う。昨夏は決勝で惜敗、甲子園にあと一歩で届かなかった。その悔しさは選手全員に染み付いており、今年こその意気込みは強い。伝統的に好投手を生み出す土壌のチームだが、今年は左腕の志村がエースとしてマウンドを守る。制球力抜群で、試合をしっかりと作ることができる。そしてそのほかにも多彩な投手陣をそろえ、守りの方に心配はない。打線は西短付には劣るが、どこまで試合の中で得点力を上げていけるか。春優勝の東筑は、その春は投手戦あり、打撃戦ありと多彩なゲーム展開を制しての優勝だった。九州大会では優勝した神村学園とも互角以上の戦いを繰り広げており、チーム力はかなり高い。チームは池口、深町の2枚看板の投手力が中心。春しっかりと打てた攻撃陣が夏もどこまで援護できるかがカギか。2年ぶりを狙う強豪・九州国際大附は、相変わらず打線の破壊力はかなりのもの。投手陣もここにきてかなり整備されてきており、甲子園への道ははっきりその視界にとらえられてきた。飯塚も伝統の守備力に磨きをかけて激戦に挑む。秋に九州8強まで行き甲子園まであと一歩と迫った育徳館は、なんと1758年創立の、全国屈指の超名門校だ。甲子園まで来たら、かなり話題になることは間違いない。その他福岡第一、東福岡、東海大福岡の各伝統校は、夏の戦い方を知る好チームだ。
【佐賀】(参加36チーム)
秋春連覇の龍谷が10年ぶりの夏をつかむか、春準優勝の唐津商が巻き返すか。両校は初戦で激突。そして勝者は昨夏優勝校の有田工と。
◎ 龍谷
〇 有田工 唐津商
△ 佐賀商 神崎清明 鳥栖工 鳥栖
▲ 佐賀北 早稲田佐賀
秋春ともに県大会を制した龍谷が10年ぶりの夏を目指す。エース勝間田は安定感のある右腕。最近では珍しい投手1枚看板だ。しかしそこがチームのウィークポイント。夏の大会を見据えて春はほかの投手も試したものの、どうもしっくり来ていないようで、いずれにしても勝間田の奮闘なくして甲子園はない。打線はそこそこ打てるが、強打線というにはまだ心許ない。その龍谷と初戦で激突するのは、春の県決勝で対戦した唐津商。こちらもエース木本が1枚看板。春は両エースの好投で2-1のロースコア決着。夏は初戦激突という事で、この試合にいかにコンディションを上げて臨むことができるか。しかしこの勝者を2回戦で待ち受けるチームがいる。昨夏の覇者、有田工だ。有田工は2年連続の甲子園へ、甲子園経験者をずらりと揃えて臨む。昨夏は初日に敗れて甲子園から帰還となったが、今年は長い夏にするため、負けられない。1年生の時に甲子園でセンセーションを巻き起こし、2年生の昨夏も決勝まで進出した鳥栖工の松延も忘れてはいけない。現在は150キロ到達を目指し、しっかりとその実力を上げてきており、松延次第では2年ぶりの夏も見えてくる。伝統校の佐賀商も、ここ数年すっかり上位争いから姿を消しているが、ポテンシャルの高い選手が揃っており、なおかつ組み合わせに恵まれ上位進出を目指せる夏になりそうだ。春4強の神崎清明、がばい旋風の佐賀北、2度目を狙う早稲田佐賀などの有力校も力をつけてきており、すんなりと龍谷に全大会制覇は許さないだろう。
【長崎】(参加42チーム)
3連覇狙う創成館、春優勝の海星が双璧か。選抜出場の壱岐、力を伸ばす大崎などの離島勢の活躍も楽しみ。
◎ 海星 創成館
〇 長崎商 大崎
△ 波佐見 壱岐
▲ 長崎日大 清峰
海星が秋春の県大会を制し、県内トップに君臨する。投手陣はエース陣内が離脱も、継投でしっかり試合をつくれることを逆に証明した。打線も例年通りしっかり振り切る打法で強力。県内トップの座を渡す気配は見当たらない。その海星に待ったをかけるのが、3連覇を狙う創成館。奥田、森下のタイプの違う2枚看板は強力で、春の九州大会では強打のエナジックをほぼ抑えきった。打線は現在夏に向けて再構築中だが、例年打線は夏にはきっちり仕上がっており、期待は大きい。長崎商は3年ぶりの夏を狙うが、今年はしっかり守る守備型のチーム。春の九州大会で沖縄尚学を完封した守備力は侮れない。大崎は近年グングンと力を伸ばしているが、まだ初の夏には届いていない。今年は何とかしたいところ。選抜で21世紀枠をゲットして甲子園の土を踏んだ壱岐とともに、離島勢の躍進にも期待が集まる。波佐見もあの隅田(西武)以来の8年ぶりの夏へ虎視眈々。打線は県内でも強力打線で知られる。長崎日大、清峰の名門校は、夏の戦い方を知っており要注意の存在だ。
【熊本】(参加52チーム)
連覇狙う熊本工か、秋制覇の専大熊本玉名か、春制覇の東海大熊本星翔か。
◎ 熊本工 専大熊本玉名 東海大熊本星翔
〇 有明 文徳
△ ルーテル学院 九州学院
▲ 熊本国府 秀岳館
ここのところ新顔の登場が目立つ熊本県の高校野球界。しかしどっこい夏の大会になれば、しっかりと名門校が上位に顔を連ねるという事は例年変わりがない。その中で、昨夏の代表、熊本工が連覇への視界良好だ。昨夏もエースとして甲子園で好投を見せた山本が今年もマウンドをしっかりと守る。そして投手陣全体の底上げもなされ、夏の大会に向けて準備は万端だ。打線は例年通りパンチ力があり得点力が高い。追っていくのは秋春の優勝校か。秋優勝の専大熊本玉名は、左腕のエース山本次第。春は初戦で完敗を喫したが、チーム全体としては優勝まで駆け上がる可能性は十分とみる。春優勝の東海大熊本星翔は2年ぶりの夏を目指す。春の九州大会では選抜出場の柳ヶ浦に勝ち、エナジックとも接戦を展開。その後の県の各大会でも好成績を収め、実績的には完全に県内屈指と言える。春を超えて投手陣がしっかりとまとまってきたのが好材料。全員野球で覇権奪回を狙う。一昨年センセーションを巻き起こした有明は、このチームでも秋に準優勝。攻守にしっかりとまとまったチームで、波に乗ろことができれば一気に初の代表の座も。文徳も春準優勝だけに圏内だ。県内NO1と言われるエース阿蘇品を擁するルーテル学院も、上位に進出する力を持ち、昨年のチームで春の甲子園に出場、夏も決勝まで進んだ熊本国府は、今年も上位を狙う。名門の九州学院、秀岳館は、今年は目立った成績を残していないものの、夏に向けてしっかりと実力を蓄え、甲子園への帰還を夢見る。
【大分】(参加42チーム)
夏は明豊のもの。コロナ以降5年連続の甲子園を目指す。名門・柳ヶ浦はセンバツに出場し、打倒明豊誓う。
◎ 明豊
〇 柳ヶ浦
△ 大分商 大分舞鶴 佐伯鶴城
▲ 大分 藤蔭
県内最長の5連覇を狙う明豊が順調に力を伸ばし今年も1番手。投手陣のコマは揃い、打線も例年通りの強打線。しかも県内では完全に相手を見下ろして試合ができるため、選手が完全に自信をもって戦いを進めていくことができる。まさに「スキなし」の構えだ。エース格の寺本、大堀は昨夏の甲子園でも登板経験のある経験値の高い左腕。ここに九州屈指と言われる打線が絡んで、狙いはいつも全国でどこまで行けるか、ということだ。ライバルの柳ヶ浦は、センバツで久々に甲子園の土を踏んだ。この経験を生かして夏に戦いを挑みたい。投打ともに着々と戦力の整備がなされてきており、今年はチャンスの年だ。大分商は県内屈指の速球派、平田が急成長。一気に優勝圏内まで上がってきた。あとは打線の援護だが、こちらも徐々に夏に向かて整備されていkている印象で、面白い夏になりそうな予感だ。明豊が県内1強のここ数年の大分県高校野球界だが、そこに常に勝負を挑みあと一歩届いていないのが大分舞鶴。毎年素晴らしいチームを作ってきて、全国に出したいという思いは強い。今年も球速よりもいかにアウトを取るのかということに主眼を置くしっかりしたピッチャーが育成されてきており、今年こそ明豊の壁を破れる可能性があるかもしれない。佐伯鶴城は春準優勝。1年生4番の嶋原を軸に、投手でも1年生を起用するなど先を見据えた戦いを行う。大分や藤蔭など、今年の各大会で実績を残した各校がスキをうかがう。
【宮崎】(参加45チーム)
宮崎商と日南学園のマッチレースかと思いきや、富島、延岡学園、聖心ウルスラなど追ってくる各校が肉薄。
◎ 宮崎商 日南学園
〇 延岡学園 聖心ウルスラ 富島
△ 宮崎学園 都城
▲ 小林秀峰 日章学園 宮崎日大 桜美学園
昨夏出場の宮崎商は、昨年と同じく春優勝からの夏連覇を狙う。春は打線が活発だったが、本来は投手力を中心に接戦を勝ち切るチーム。エース永友は好投手。守備もしっかり鍛えられており、昨夏は甲子園で接戦を展開したが、今年は何とか勝って校歌を歌いたい。日南学園も一歩も引かない。注目のスラッガー、蔡の前にランナーを置ければ、得点のチャンスは広がる。投手陣もエース長友を中心にキッチリと投げることができ、不安感はない。春準優勝の延岡学園は、久しぶりの聖地を目指す。今年の注目はエースの藤川。Max153キロの剛球は九州最速に近い。しかも安定感のある投球ができる好投手で、他の投手の台頭、打線の強化で、藤川のワンマンチームから脱することができればあの2013年の準優勝以来の甲子園へ向かうことができるが。。富島は秋春ともに4強進出と戦いぶりに安定感がある。昨夏は決勝での惜敗。甲子園への思いは強い。聖心ウルスラは、打線は一級品。投手陣の踏ん張りが勝利へのカギ。宮崎学園は、強豪とも互角の試合を繰り広げており潜在能力はピカ一。名門都城が浮上を狙えば、旧都城東の桜美学園は新校名での甲子園を狙っている。
【鹿児島】(参加63チーム)
全国制覇を狙う・・・絶対王者・神村学園の目標は高い。追ってくるチームは少なく、名門校が大逆転を狙う。
◎ 神村学園
〇 樟南 鹿児島実
△ 鹿児島工 鹿屋中央 出水中央
▲ 国分中央 鹿児島城西
過去2年、神村学園は全国の舞台だその強打を見せつけて躍進。連続の4強進出を成し遂げた。そして今年。その過去2年に勝るとも劣らないチームとして3連覇、そして悲願の全国制覇を狙っている。エース早瀬は150キロ右腕。そして春の九州制覇の原動力となった左腕の窪田、さらに高木など、質量ともに他校を完全に圧倒する投手陣をそろえる。さらに打線もあの圧巻の打球の速さは今年も健在。対戦する相手を萎えさせる投打の圧倒的な力は、次の全国制覇の最有力校と言っても差し支えないほどだ。県内の公式戦は40連勝中で、正直鹿児島県内では敵なしなのだが、追ってくるチームがあるとすれば、投手陣が強力な名門・樟南か。エースの五反田とサイドの犬窪のデュオは相手にスキを与えない。樟南としては、神村学園と互角の勝負をするには、以下にコンディションよく投手陣が当たっていけるかという事に尽きる。鹿児島実は例年通りに投打の底上げが出来ている。実力的には例年通りで、甲子園に出場できても何らおかしくはないが、今年は神村学園という高く厚い壁が存在する。ここをいかに打倒するのか、名門のパワーと知恵に期待だ。春準優勝の鹿児島工も久しぶりの甲子園を狙う。鹿屋中央はエース溝淵が好投手。出水中央も好素材の選手をそろえる好チームだ。しかしなんといっても、今年の大会は完全な1強の神村学園に、他校がどう挑んでいくかという戦いになる。果たして波乱は起きるのか。
ということで、
今年の107回大会の予選展望、終了です。
既に北海道や沖縄では、
熱い戦いが繰り広げられています。
しかし・・・・
今年はことのほか暑い。。
甲子園の最後の試合まで、
なんだかこの暑さで、不幸な事故が起きないことを、
まずは祈念してしまいますね。
その中で・・・・
日ごろの成果を存分に発揮して、
ひとりひとりの心の中に長く思い出として残る「あの夏」にしてほしいと思っています。
がんばれ、高校球児たち!
(終わり)