
第94回全国高校野球選手権大会 予選展望6
【福岡】(参加135校)
さあ決戦。福岡工大城東の笠原か、東福岡の森か。はたまた筑陽学園の黒川が飛び出るか。
◎ 福岡工大城東 自由が丘
〇 東福岡 西日本短大付
△ 九州国際大付
▲ 飯塚 筑陽学園 福岡大大濠 柳川
スカウト垂涎の大会になりそうだ。全国的に注目される左腕が3本もそろい、剛腕対決に大いにスタンドもわきそうな予感がする。まずは『注目度は全国一』と言われる笠原を擁する福岡工大城東に注目だ。 今更言うまでもないことだが、大阪桐蔭・藤浪、花巻東・大谷と並んで今年の高校生ビッグ3と言われる左腕は、185センチの長身から150キロに届こうという速球が武器。大きく腕を振って投げるその速球の威力は、観る者すべてに驚きを与える存在だ。その笠原に強烈なライバル心を燃やすのが、東福岡の森だ。こちらも145キロを軽く超える速球を投げ込む本格派。しかも東福岡は、森のほかにも安定感抜群の右腕・野原も擁しており、投手力に関しては万全だ。筑陽学園の黒川も未完成ながらなかなかいい球を放る、今大会の注目株。この3人が大会の超目玉だが、西日本短大付の井手、福岡大大濠の箱島などもおり、今年の福岡大会は熱く燃え上がりそうだ。そんな中、投手陣では一歩譲るが、打線を軸に秋、春ともに県大会を制した自由が丘の安定感は光る。県内久々の『完全優勝』に向け気合十分だ。
【佐賀】(参加41校)
佐賀北が”あの夏”以来の大チャンス。そうはさせじと龍谷、鳥栖、佐賀工の3強が狙う。
◎ 佐賀北
〇 鳥栖
△ 佐賀工 龍谷
▲ 佐賀商 伊万里農林 佐賀学園
2007年の全国制覇。あの感激を味わった佐賀北が逆襲に出る。今年は春の県大会で優勝。”あの夏”はすべてがうまくいった夢のような夏だったが、本来のしぶとくロースコアゲームをものにする野球で、5年ぶりの夏をつかむ可能性は十分に持っている。秋優勝、春4強と”はずさない”鳥栖も、有力な候補。左腕のエース初瀬で2002年以来久しぶりの夏を狙う。打撃陣がどうサポートできるかがカギ。伝統的に好投手を輩出する佐賀工も、今年はエース岸川を育て、甲子園に近いところまでやってきた。秋準優勝の龍谷は、エース野中のコンディション次第か。11月に手術した膝で春は”欠席”だったエースが復調するようだと、悲願の甲子園に一歩近づく。その他では勝ち方を知るチームの台頭がありそう。特に佐賀商は、継投を軸とした崩れにくいチーム。伊万里農林、佐賀学園あたりまでが覇権争いの中心となりそう。
【長崎】(参加58校)
秋春連覇の創成館がトップをひた走る。清峰・長崎日大の2強も打倒狙って戦力アップ。
◎ 創成館
〇 清峰 長崎日大
△ 波佐見 佐世保実
▲ 長崎商 海星 佐世保工
九州大会4強の末、まさかの”センバツ落選”の憂き目にあった創成館。しかしショックをものともせずに春優勝した姿は立派だった。『甲子園に行きたい』というモチベーションは、おそらく県内随一。3本柱の投手陣を助ける捕手の草野が離脱しているのは心配だが、初の夏にひた走れるかは攻撃陣の底上げ次第だ。全国的にも強豪で知られる清峰、長崎日大の両雄は、名将が秘策を持って県大会に臨む。清峰は、春から夏にかけ、投手陣の底上げが著しく、今までとはまったく別のチームとしての登場が可能な状態だ。長崎日大は伝統の強打が健在。金城監督も、エース福田ひとりに頼らなければならない投手陣にメドさえつけば、と自信ありげだ。秋春ともに4強入りの波佐見は、昨年の選抜メンバーがチームの中心に座り軸になる。あとは先輩の松田に匹敵する投手だけ。佐世保実は春準優勝。十分に県内トップクラスの実力は備えている。選手層は厚く、あとは経験だけか。昨夏出場の海星、名門の長崎商、佐世保工など久しぶりの名前も大会を盛り上げそうだ。
【熊本】(参加67校)
全国制覇を狙う九州学院。荒法師・濟々黌、熊本工にチャンスはあるのか。
◎ 九州学院
〇 濟々黌
△ 熊本工
▲ 秀岳館 必由館 ルーテル学院
九州学院の充実ぶりが際立っている。選抜で大阪桐蔭をあと一歩まで追いつめた迫力のある打線と安定感ある投手陣は健在。九州勢の中では”実力NO1”と言われ、今度こそは全国4強以上の誓いを立てている。この九州学院の指揮をうかがうのが、県内超名門の2校、濟々黌と熊本工だ。濟々黌は、実に久しぶりに”本気で狙える”戦力を整えてきた。今年のチームは、大竹、中村ら投手陣に安定感を持つ駒が複数揃った。もともとチームのまとまりは県内一。『力負け』することさえなければ、厳しい県大会を勝ち上がっていける可能性は十分だ。熊本工は、昨夏も本命・九州学院を破った実績を持つ。優勝へは、チーム一丸となった得意の”盛り上がり”が必要。秀岳館は、春準優勝。投打に太い軸を持ち、バランスの取れたチーム力が出色。ルーテル学院は秋準優勝。新興勢力の”赤い軍団”が上位陣に一泡吹かせる。そのほか、必由館や鎮西、八代東や昨夏代表の専大玉名など、上位を脅かすだけの力を持ったチームも数多い。
【大分】(参加48校)
本命なき戦国大会へ。最後に出てくるのは、やはり名門?!
◎ 明豊
〇 柳ヶ浦 大分 情報科学
△ 楊志館 別府青山
▲ 大分西
春は大分西が初制覇。エース小野のピッチングに見るべきものはあるが、夏の厳しい戦いを勝ち上がれるかとなると、やや疑問符がつく。同じ公立勢の別府青山も、大分西と同じようなチーム構成なので、厳しい戦いは続きそう。それならば秋優勝、春準優勝と結果を残す情報科学が浮上するのか。接戦をことごとくものにする野球は買えるものの、やはり夏を制する”何か”が一枚たりないような気がする。今年実績を残した3校の公立校がどこも決め手不足の夏は、やはり私学の強豪が”目覚める夏”となりそうな気がする。筆頭格はやはり明豊。打線の力は県内随一で、昨年のように大会中に投手陣の救世主が現れば、一気に連続出場のキップを奪いそう。ここのところ音沙汰のない柳ヶ浦も、ハーフのエース・クリストファーを押し立てて一気の加速を狙う。層の厚さで言えば、大分がNO1か。主砲・佐野の強打に期待がかかる。”あっこの夏”以来の出場を狙う楊志館は、高校通算40本塁打の主砲・塗木のバットで2007年以来の歓喜の夏を手繰り寄せるか。
【宮崎】(参加50校)
日章学園、日南学園、延岡学園、聖心ウルスラ、都城商。5強が差なく並び、最後の直線たたき合い。
◎ 日章学園 日南学園
〇 延岡学園 聖心ウルスラ 都城商
△ 宮崎工 宮崎西
▲ 都城泉ヶ丘 宮崎日大
大本命はいない。調子をつかんだチームが駆け上がりそうな大会だ。そんな中、5強といえるのは日章、日南学、延岡学、聖心ウルスラ、都城商か。どこも強さと弱さの同居したチームで、つかみどころがない。日章学園はバッテリーの安定感が際立つチーム。日南学園は、戦力的な厚みは県下一。勝ち方をどう構築していくかが課題。延岡学園は打線の力強さでは抜けているが、投手陣が踏ん張れるか。聖心ウルスラは、総合力で勝負。選手の力は最もある。都城商は、エースの温水を中心にした守りに自信を持つ。ここにきてリリーフの満行が台頭し、盤石の状態を築ける可能性がある。この5強が一応の大会の中心。しかしそれで決まりでもない匂いもする。その筆頭格は、選抜出場の宮崎西や宮崎工。都城泉ヶ丘も面白い存在。とにかく、決勝がどんな組み合わせになっても全く驚かないほど、たくさんの学校が入り乱れての大混戦になりそうだ。
【鹿児島】(参加84校)
神村学園が混戦を抜け出た。鹿児島実・樟南の両巨頭がどこまで追いつめるか。
◎ 神村学園
〇 鹿児島実 樟南
△ 鹿児島工 鹿児島商
▲ 鹿児島城西 薩摩中央
秋、春の九州大会を連覇した神村学園の戦力は盤石。例年2,3番手から追い上げを狙うが、今年は堂々のトップランナーとして大会に臨む。『おそらくチーム史上最高』という戦力だけあって、神村学園の投打のバランスは抜群。特に柿沢、平藪の2本柱は全国的に見てもトップクラスの投手力だ。支える打線の破壊力も水準以上。昨夏、今春と2度の甲子園で悔しさを味わっているチームは、甲子園に『忘れ物を取りに行く』と意気盛ん。ほぼ”1強”状態が続く今年の鹿児島だが、やはり名門の鹿実と樟南は、やすやすとは甲子園を許さない強い気持ちで臨むだろう。鹿実は昨年より戦力はダウンしたものの、経験十分のエース徳永を軸に得意の切れ味鋭い好守で逆転を狙う。樟南は小粒になったものの、戦い方は最もうまいチーム。侮ると痛い目に合う。そのほかでは、昨年の夏旋風を巻き起こした薩摩中央に期待。今春もしっかり4強に進出してきており、県内で一定の地位を築こうと躍起になっている。名門の鹿児島商、鹿児島工、そして春の県大会を制した鹿児島城西は、甲子園に行ける力あは十分に持っている。
【沖縄】(参加63校)
沖縄尚学か興南か。全国制覇チームの動向に、目が離せない。
◎ 沖縄尚学
〇 興南
△ 糸満 浦添商
▲ 浦添工 中部商 沖縄水産
何しろ近年、沖縄のチームに対する全国のファンの興味は一気に高まっている。いまや大阪や神奈川にも負けないぐらい”熱き戦い”になる沖縄大会。その切れ味の鋭さを堪能できる大会になりそうだ。東西の横綱に挙げられるのは、いずれも2度の全国制覇を果たした沖縄尚学と興南。沖縄尚学は、先輩の甲子園V投手・東浜にそっくりのフォームからキレのいい球を投げ込む山田がエース。打線は相変わらず右に左に、鋭い打球を打ち分け破壊力は十分だ。対する興南。150人もの部員の中から選ばれた選手たちは、自信を持ってプレーしている。春は沖縄尚学の圧勝に終わった直接対決だが、監督の腹の中にはすでに『打倒尚学』のシナリオは出来上がっている気がする。両雄の決勝対決が実現した時は、本当の意味での雌雄を決する凄い戦いが見られそうだ。追ってくるチームとしては、昨夏の代表校である糸満、名門の浦添商などが上がる。浦添商はエース宮里の出来がカギを握る。糸満は得意の足攻を仕掛けていけるか。浦添工は春4強に入り自信を深めた。名門の沖縄水産は、何とか復活へのきっかけをつかみたい夏。
<了>