第94回全国高校野球選手権大会 予選展望5
【岡山】(参加57校)
倉敷商・倉敷工・関西の3強が有利も、ほとんど差なく続く後続勢。
◎ 倉敷商
〇 倉敷工 関西
△ 玉野光南 創志学園 興譲館
▲ 岡山理大付
昨年の関西のように、力が抜けているチームは見当たらない。しかし、選抜出場の倉敷商、春力をつけて中国大会を制した倉敷工など戦力の充実した学校は数多い。倉敷商はセンバツから帰って一時調子を落としたものの、エース西を押し立てて安定した戦いぶりができるところは一番手に推せる要因だ。もともと得点力もそこそこあり、夏の一発勝負には向く戦い方を身に着けている。何と言っても一昨年まで3年連続で夏を制した経験は、何物にも代えがたい。倉敷工は、春の県大会、中国大会を猛打で制した打線に力がある。反面投手陣の安定感には疑問符がつくことから、前半戦をしっかりと戦い上位に進出して、消耗戦になったところで一気に打線でねじ伏せるとのストーリーを描きたい。連覇を狙う関西は、ようやくここにきて戦力が整ってきた。昨年ほどの安定感はないものの、今年もしっかりとした投手陣がチームをけん引。加藤、栗原、児山の3人の安定感は県内では光る。看板の打線も振り込んできてスイングの力が増して、”打の関西”の異名通りの猛打線を形成できる。秋優勝の玉野光南も9年ぶりの甲子園を狙う。守りからはいる伝統の光南野球は健在。あとは勝ち運に恵まれるかどうかだ。昨年1年生だけの甲子園で話題をさらった創志学園は、今年は音沙汰なしで1年を過ごしてきた。しかし甲子園を経験したメンバーが全員そろって、経験値はこれ以上なく高い。興譲館は女子の陸上部に続けと意気盛ん。全国という大会に漕ぎ出せるか。岡山理大付や名門の岡山東商、岡山城東あたりまでが覇権争いに加わってくるとみている。
【広島】(参加95校)
広陵の復活か、如水館の連覇か。はたまた新鋭の台頭、古豪の復活はあるのか。
◎ 広陵
〇 如水館
△ 広島新庄 尾道
▲ 広島商 広島国際学院 盈進
広陵という一本の柱が、広島県の高校野球界の中心にどっしりと立っていた一昨年まで。昨年からその雲行きはやや怪しくなり、今年はますます混迷の度合いを深めていきそうだ。そんな中、昨夏の代表である如水館のまとまりは、他校には脅威に映っているところだろう。大ベテランの迫田監督率いるこの軍団は、とにかく夏の勝ち方を知っている。おまけに今年は、昨年のベンチ入りメンバー5人を擁し、経験値も高い。今年も大会の中心になっていくことが予想される。そうはさせじと腕をぶすのが広陵。今年もプロ注目のエース・松村を擁する。松村はMax145キロを投げ、野村、中田、有原ら最近のエースたちの”剛腕の系譜”を受け継いでいる。ただ、どうしても今年は公式戦で勝ち進んだ経験がないので、そこをどう払しょくできるかがカギ。打線は相変わらず【県下一】の破壊力を誇る。秋準優勝、春優勝と今年は結果を出し続ける尾道は、4,5人で回せる豊富な投手陣がチームの中心。打線の援護次第ではあっさりと覇権を奪取できる力を持つ。広島新庄も迫田(弟)監督がしっかりとした野球を身につけさせ、初めての夏をうかがう。春は強豪を倒しての準優勝。すっかり自信をつけた選手たちの夏の戦いぶりが楽しみだ。盈進のエース・谷中はプロ注目の右腕。昭和49年以来38年ぶりをを手繰り寄せられるか。伝統の広島商も今年は元気だ。そして広島国際学院の速球はエース・今井のピッチングにも注目。
【山口】(参加60校)
V2へ戦力充実の柳井学園。間津の復調次第では春夏連続もある早鞆。
◎ 柳井学園
〇 早鞆 岩国
△ 徳山 華陵 宇部商
▲ 南陽工 宇部鴻城
『本命なき激戦』これがここ10年以上にわたる、山口県大会の変わらぬ予想だ。今年も例年通り、本命なき激戦となりそうだ。トップを走るのは、昨年に続きV2を狙う柳井学園。素材のいい選手を大量に入学させる手法で、県内トップに躍り出る目論見は当たっている。公立の強い山口県においては、やはり有効な手段だ。昨年もエースだった谷沢は、延びる速球の精度が増した。スタミナも十分で、夏への不安は少ない。甲子園を知る選手たちが中心の打線も活発。追うのはまずセンバツ出場の早鞆。センバツ前に調子を崩してまだ完全に復調したとは言い切れない間津の出来が、すべてのカギを握る。選抜で好投した2番手の堀田の成長は目を見張るものがあり、大越監督としては嬉しい誤算になりつつあるが、やはり最後の夏は間津の復調なしには見通せない。好投手ということで言えば、徳山のエース、安野を忘れるわけにはいかない。安野は強豪・宇部商相手にノーヒットノーランを記録した好右腕。打撃でも他の追随を許さない好打を連発する”ワンマンぶり”は、昭和の球児を連想させる。春準優勝の岩国は、伝統のしぶとい野球が健在。相手をアリ地獄に追い込んでいく野球は、相手には脅威。そのほか、名門の宇部商や華陵、南陽工など近年実績を残すチームが上位をうかがう展開になりそう。宇部鴻城の笹永も、県内屈指のレベルを誇る好投手だ。
【鳥取】(参加25校)
参加25校のどんぐりの背比べ。鳥取城北が勢いを持続しているか。
◎ 鳥取城北
〇 八頭
△ 鳥取育英 鳥取商
▲ 鳥取西 倉吉総合産
今年も全国最小の25校による県大会。秋の中国大会で、県勢久しぶりの中国制覇を成し遂げた鳥取城北の力が抜けているとみる。選抜の経験値と、相対的な力は一歩上を行く印象だ。今年の春の中国大会は鳥取から4校が出場したが、4校のうち3校はほとんど何もできないまま大敗。結局鳥取城北だけが初戦を勝ち抜いた。全国で戦うということを視野に入れた場合、正直鳥取城北しか”全国区”のチームはいないのが現状だ。その鳥取城北は、平田、西坂という2本の柱を持つ投手陣が心強い。打線も振りは鋭く、粗い試合運びをしなければ県内では敵なしなのだが、どうも県内で抜けだすことが出来ないのは戦い方に問題アリ?か。常に夏の優勝争いに絡む八頭は、2年ぶりの夏を狙う。今年もその全員野球は健在。勝負強さは県内のチームではピカイチだ。秋に優勝した鳥取育英は、本格派の箕浦がマウンドに君臨。140キロ台の速球をビシビシ投げ込んでくる。昨年の代表・鳥取商は、9人の甲子園メンバーを残して今年も進撃する。これといった特徴のない戦力だが、昨夏も甲子園でほとんど価値というところまで相手を追い詰めるしぶとさを発揮する。その他では、名門の鳥取西、春準優勝に輝いた倉吉総合産などが有力だ。
【島根】(参加39校)
ポスト野々村時代の盟主はどこか。名門の公立校の復権がなるか。
◎ 浜田
〇 大社
△ 石見智翠館 開星 立正大淞南
▲ 松江商 大田
島根の名将・野々村監督が引退して、ここ10年ほど続いた開星のトップ独走状態は、一応の終わりを告げそうだ。県内の覇権争いは、その前の時代、80~90年代の群雄割拠の様相を示すことになりそうで、県内を二分した公立の名門、浜田、大社が台頭してきそうな気配だ。今大会の筆頭候補に推される浜田は、先輩・和田(オリオールズ)張りの安定感を誇る技巧派左腕・村川をエースに押し立てて一点を守り抜く野球を貫く。それこそが浜田の長年築いたアイデンティティというもので、その伝統のチーム作りで2004年以来の覇権奪還を目指す。一方の雄、大社は、あと一歩で選抜を逃した悔しさを夏に込める。こちらは活発な打撃陣が投手を支えるチーム。負けられない夏に挑み、気合い充実の模様だ。ここ10数年ずっと覇権争いをしてきた開星は、相変わらずの強打を誇るが、野々村監督という求心力を失ってチームが機能するかが最も心配な点か。その開星の長年のライバル、石見智翠館は、学校の方針転換で選手を広域から集めなくなって、なかなか上位に顔を出せなくなってきた。しかし大黒柱の捕手・加部を中心として、何とか甲子園への道筋をつけたいところ。立正大淞南も、8強に輝いた3年前の夏以来音沙汰なし。このあたりで復活を期したいところだ。そのほかでは、評判のいいエース増本を擁する松江商も、虎視眈々と覇権奪回を狙っている。
【香川】(参加40校)
春は小豆島-丸亀の驚く決勝戦。英明・香川西・寒川の私学3強はどんな戦いを見せるか。
◎ 寒川 英明
〇 香川西 丸亀 小豆島
△ 高松商 尽誠学園
▲ 三本松 観音寺一
香川のこのところの新興勢力と言えば、英明、香川西、寒川。この3強が県内の高校野球を引っ張っているのは事実だが、今年はどこも戦力に一抹の不安を抱えており、その間隙をぬって公立勢が春の大会を制した。小豆島は小さな島から甲子園を狙い、打線を強化してきた。四国大会ではその打線が不発で敗れ去ったが、第1シードで臨む夏は春の再現を狙っている。その小豆島に敗れたものの、チーム力では上との評価をもらうのが丸亀。伝統の守り勝つ野球の中心に、今年は好投手山口を据える。四国大会で強打の宇和島東を完封した力は本物。県大会の初戦では英明打線から17三振を奪うという驚愕のピッチングも見せた。夏の大会だけに、敵は”消耗度”だけだ。昨夏代表の英明は、春は丸亀に初戦完敗。しかし香川監督は夏に向けて秘策を練っていることだろう。何しろ2年連続代表をつかんだチームなのだから。香川西も、過去10年間で4度の春夏甲子園をつかんでいるチームだけに、調整能力は抜群。打線の破壊力では県内一を誇る寒川は、なかなか結果を出せない夏の大会という印象。今年は一発にかけている。名門・尽誠学園も覇権争いに顔を出しそうだし、高松商の復活もあるかもしれない。20校近くにチャンスがある、大混戦の大会になりそうだ。
【徳島】(参加31校)
鳴門と川島が県内2強。旋風おこすか、合併後初挑戦の鳴門渦潮。それとも池田の久々の復活か。
◎ 鳴門 川島
〇 徳島商 鳴門渦潮
△ 池田
▲ 生光学園
しぶとさを持ち選抜8強に進出した鳴門が、まずは県内トップを走る。自慢の”渦潮打線”の破壊力は県内一で、投手陣が踏ん張れば快進撃も十分に可能だ。その鳴門に秋、春といずれも頂点を目指す対戦で敗れた川島は、3度目の正直を狙って意気盛ん。一昨年のセンバツでの戦いで自信をつけ、今年は堂々と夏のキップを獲りに行く。守り一辺倒ではない、強気の攻めもチームの自慢だ。昨夏出場の徳島商では、昨年の経験者でもある瀧田などを軸に据え巻き返しを狙っている。夏に強いところを見せたい。鳴門工と鳴門第一が合併して誕生した鳴門渦潮は、高橋監督が自信を見せる自慢の打線がチームの軸。個々の選手の力では県内一なだけに、合併の影響が出なければいいのだが。巻き返しに躍起なのは、かつて一世を風靡した池田。そのころと今のチーム力は比べるべくもないが、今年は春の県大会で準優勝。一定の結果が出だして、岡田監督をはじめ関係者はやる気を見せている。そして”県内初”の私学代表を狙っている生光学園は、中学野球部を硬式にして、6年計画の選手育成で聖地を狙う。県内の高校野球界に風穴を開ける存在として、注目度はNO1だ。
【愛媛】(参加59校)
夏に強い今治西、宇和島東。久々狙う夏将軍・松山商。大混戦の大会で、まったく展開が読めない夏。
◎ 宇和島東 今治西
〇 松山商 済美
△ 西条 小松
▲ 八幡浜 松山北
今年も例年以上に大混戦が予想され、本命なき群雄割拠の大会になりそうだ。そんな中で本命に挙げられるのは、過去2年の代表校である宇和島東と今治西だ。宇和島東は春の県大会を制し、いま乗っている。投手陣の層が厚く、先行逃げ切りのパターンに持ち込めるかがカギ。今治西は、ここ一番での強さを発揮するチーム。春は敗れたものの、秋は準優勝に輝いており、精度の高い好守は県内トップクラスだ。続く松山商は本来夏の大会は大の得意としているが、近年は他校に途中で足元をすくわれるケースが多い。松山商伝統の『しっかりした勝ち上がり』で夏将軍ぶりを見せられるか。上甲監督に率いられるタレント軍団、済美は、今年も1年生エースの安楽を加入させた。どうも投打がかみ合わず敗退するケースの目立つ昨今だが、復権にかける。そのほかでは、秋優勝の小松、春4強の松山北、八幡浜などが上位進出を狙っている。県下NO1と言われるエース・小川を擁して夏を狙う西条は、小川が大車輪の活躍をすれば県内トップの実力は揺るぎない。あとはここまで結果を残せていないチームをどう引き上げるのか、新任の菅監督の手腕が問われる夏になりそうだ。
【高知】(参加33校)
大本命の明徳義塾に、待ったをかけられるか高知。。
◎ 明徳義塾
〇 高知
△ 高知商
▲ 高知中央 土佐 須崎
今年も2強と呼ばれる明徳義塾と高知の2校が他を引き離しており、この”宿命の対決”が濃厚だ。しかし今年に限って言えば、2強の戦力にもかなりの差がある。春の四国大会を圧倒的な強さで制した明徳義塾は、練習試合では大阪桐蔭に圧勝するなど、いよいよ全国制覇を狙って殴り込みをかける準備が整ったと言えそうな戦力を誇る。エース福だけでなく、小方、岸などドンドンと飛び出してくる新戦力に、馬渕監督のほほも緩みっぱなしだ。伊代田、西岡、宋とつながる打線も全国屈指。ライバルである高知さえ倒せば、全国でも上位進出を狙える戦力だ。そのライバル高知。センバツでの負け以降、どうもチームがピリッとしない。しかし、明徳相手になった時には『全員が全く別の選手になる』と言われるぐらい集中力が高まり、このライバルに全員で挑みかかっていく。戦力的には今年は差があるものの、一発勝負は何が起こるかわからない。そのため、高知も有力な代表候補だ。3番手以降のチームには、残念ながらチャンスはそう大きくはない。その中では、やはり名門の高知商が一番手に上がるか。そして土佐、高知中央なども戦力を整えている印象だ。春準優勝の須崎は、軟投派のエースを擁するだけに、はまると上位陣に一泡吹かせることも。