≪第101回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望6 近畿 -
【滋賀】(参加49チーム)
春の近畿制した近江が圧倒的な候補No1. 滋賀学園がどこまで追い込むことができるか。
◎ 近江
〇 滋賀学園
△ 近江兄弟社 彦根東
▲ 綾羽 比叡山 光泉
とにかく今年は、近江がダントツに強い。昨夏甲子園でセンセーションを巻き起こした戦力が今年1枚も2枚もアップ。春の近畿大会も制し、現時点では強豪揃う近畿の中でもトップを争う実力の持ち主だ。その力の源泉は、まずは安定した投手陣。昨年も甲子園のマウンドで”魔球”チェンジアップを自在に操りセンセーションを巻き起こしたサウスポーの林はさらに成長した。安定感だけでいうとあの星稜の奥川とも遜色ないほどのピッチングを披露しており、高校日本代表の中でも主力の一角を担っている。細身ながら昨夏も見せたようにスタミナも十分に持っており、他校にとってはまさに難攻不落の大エースといったところか。打線の破壊力も十分で、大ベテランの多賀監督が本気で全国制覇を狙う今年の夏だ。ライバルの出る幕は、ほぼないのではと思われる今年の夏だが、追ってくる中ではやはり春準Vの滋賀学園が目立つ。エース左腕の尾崎はなかなかの好投手で、近江・林にかなりの対抗心を持っている様子。それがいい方向に出ると面白い試合を演出できるかもしれない。秋準Vの近江兄弟社は、近年少しづつ実績を積み重ねてきており、四半世紀以上遠ざかる甲子園へ、何とかコマを進めてみたいところだ。昨年、一昨年と2年連続で聖地の土を踏んだ名門・彦根東の巻き返しにも期待が集まる。もともと全員野球で相手に襲い掛かるのが得意の好チームだけに、相手にとっては気が抜けない。昨夏準優勝を飾った綾羽は「あと一勝」を掲げて昨年からのエース伊藤が再度決勝のマウンドに上がれるか。比叡山に光泉など、逆転を狙う各校の動向にも注目だ。
【京都】(参加75チーム)
やはり今年も龍谷大平安が一番手。安定した投打で連続出場狙う。京都国際、乙訓の”新顔2校”が鋭く追い、名門各校も黙ってはいない。
◎ 龍谷大平安
〇 乙訓 京都国際 福知山成美
△ 立命館宇治 京都翔英
▲ 京都外大西 京都成章 京都共栄 東山
昨夏甲子園100勝という金字塔を打ち立てた龍谷大平安。「古都の高校野球のリーダーは、昔も今もウチで間違いはない」との強い思いを感じることのできるこの学校が、今年も中心になるのは間違いない。選抜では頂点も狙える戦力を持ちながら悔しい敗戦を喫した。しかしその悔しさが夏への糧になる。熱さでは全国屈指の原田監督も、夏このまま終わるわけにはいかない。毎年好チームを作ってくる近年は平安の何度目かの”黄金時代”の到来ともいわれ、戦力は充実している。チームの肝となる投手陣は野沢、豊田の両左腕が安定感のある投球を披露。打線は火が付くと止まらない打線で破壊力も十分だ。唯一の心配は、今年は秋、春ともに県大会では決勝に進出できていないことぐらいか。しかし夏に圧倒的な強さを見せる平安のこと、心配には及ばないだろう。その平安を秋春ともに破って春は優勝まで駆け上がったのは京都国際。投打ともにいい戦力をそろえて、初の全国の舞台へ進出する準備は整っている。特に平安に秋春と連勝しているところが非常に心強い。名門を破って一気に新興勢力の力を見せるつもりだ。新興勢力といえば、昨年選抜に初めて登場した乙訓。今年も春は決勝まで進出しており、すっかり京都での”顔”になっている。今年も林・嘉門の2本柱の投手陣は昨年並みの分厚さを誇っており、覇権争いに絡んでいきたい。さらに立命館宇治、京都翔英の近年実績を残す両校が絡んできそうだ。両校ともに頼れるエースがマウンドを守り、簡単には負けない戦力を持つ。選抜に出場した福知山成美は、初めての「春夏連続出場」を狙っている。京都外大西、京都成章、東山の名門組に、初出場を狙う京都共栄がどこまで絡んでくるか。大雨でグラウンドが崩落した京都共栄、逆境をバネに変えられるか。
【大阪】(参加174チーム)
大阪桐蔭の巻き返しは必至。逃げ込みを図る履正社に、新顔がどう絡んでくるか。
◎ 大阪桐蔭
〇 履正社
△ 大商大 大阪偕成 東海大大阪仰星
▲ 大体大浪商 近大付 興国 箕面学園
どんなに夏まで実績がなかったといえども、夏の大阪大会で大阪桐蔭を本命から外すことなど、誰もできないのではないか。根尾・藤原の黄金世代を擁した過去2年、大阪桐蔭は4度の甲子園の出場で3度全国制覇。こんなチーム、おいそれとは現れはしない。今年はそのツケが回りチーム作りが遅れて秋春と実績を残せていないが、選手の持っているポテンシャルはもちろん全国屈指。「やっぱり夏は、桐蔭が来たなあ・・・・」というような展開が、最も現実的に考えられる大会になると思われる。正直なところ、昨年のメンバーはすべて抜け、今年は目にしたことがないためプレーヤーのことはほとんど知られていない。しかしそれでも、「大阪桐蔭のメンバー」というだけで、何かオーラがかかったように見られるのは気のせいか。夏の大会に入って試合を積み重ねていけば、おのずと経験値が上がっていき、彼らのポテンシャルは大会終盤には存分に引き出されていることであろう。そのためには、最も注目されるのはその組み合わせ。シード制のない大会だけに、いつぞやの大会の様に初戦からライバルの履正社と激突する可能性も、ないとは言えない。そうなったときは、大阪桐蔭には最大のピンチだ。ライバルの履正社は、プロ注目の左腕エース清水が注目される。選抜では星稜・奥川と投げ合い敗れたが、その中でもきらりと光るものを見せていた。大阪桐蔭を破るには、直接対決した時にいかに自分のベストピッチが出せるかがカギ。春の大阪を制した大商大は、その府大会の戦いは称賛されるものの、その後の近畿大会で奈良の郡山に完敗したところで評価を落とした。履正社、東海大大阪仰星を立て続けに破った好投手・上田の出来がカギを握る。「やんちゃ軍団」の大阪偕成は、初出場を果たした夏のように、やんちゃな選手たちが一つのベクトル方向にまとまるととてつもないパワーになる。左右のスラッガー、辻野・松山をそろえ、”あの夏”と似通った戦力を持つだけに期待も大きい。東海大大阪仰星の打線、名門復活を狙う大体大浪商、昨熱に続いて連続出場を狙う近大付、智辯和歌山出身の北監督が指揮を執る興国、そして春準優勝の箕面学園ぐらいまでが、「打倒大阪桐蔭」を狙って大会に臨む。
【兵庫】(参加161チーム)
ダントツの強さ誇る明石商。令和時代の、全国の公立校のモデルケースとなるべく、全国制覇を狙う。
◎ 明石商
〇 神戸国際大付 東洋大姫路 報徳学園
△ 須磨翔風 姫路南 西宮東
▲ 社 関西学院 滝川二
選抜で4強まで進出した明石商は、21世紀において公立校がどのようなプロセスを経て強豪になっていくのかというのを体現しているチームで、非常に興味深い。選抜では初出場の8強進出で全国にお披露目をし、今春は4強まで進出。全国制覇は手の届くところまで来ているのいう実感を得ているところだろう。夏の選手権も県大会決勝で跳ね返されることが多かった歴史を打破し、昨夏ついに初出場を果たした。明石商のサクセスストーリーはまだ始まったばかりだが、チームとしては、今年この戦力でどうしても県大会を落としたくはないだろう。来年のドラフト上位指名候補である2年生の中森を軸に、2枚の左腕で構成する投手陣は強力。そして打線も選抜で爆発したように、来田、重宮を中心に破壊力十分。そしてこの明石商が私立校全盛の県内の勢力図に風穴を開け、そこから次々に公立の有力校が飛び出してきている。須磨翔風はこの春は明石商を破り県大会準V。準決勝に進出した姫路南、8強の西宮東など、明石商が敗れたにもかかわらず県大会8強には6校もの公立勢がずらっと並び、新時代を予感させる県大会となった。しかしそんな中で優勝に輝いたのは2年ぶりの夏を狙う神戸国際大付。”プロレス監督”の青木監督に率いられたこの軍団は、今年もその強さが健在。打線の破壊力は抜群で、近畿大会でも決勝の近江戦では、敗れはしたものの好投手林から5点を奪いその強力打線ぶりを見せつけた。明石商との決戦が濃厚な夏の陣だが、はたして明石商の強力投手陣vs神戸国際の強力打線の戦いはいかに。その他では名門の2校、東洋大姫路と報徳学園も、決して後れを取っているわけではない。ただ、今年の2強はちょっと強すぎる気もする。
【奈良】(参加38チーム)
天理と智弁の2強の構図に、風穴を開けるのか、名門の郡山。
◎ 智弁学園
〇 天理
△ 郡山 奈良大付
▲ 高田 法隆寺国際
昨年はまさかの奈良大付属が甲子園の切符をさらっていったが、今年は強さでいうとやはり天理、智弁の2強が軸になりそうだ。天理は秋の県大会を制したものの、春は調子を崩して初戦からバタバタの戦いの末3回戦で大敗。しかしやはり夏は確実に仕上げてくることが予想されるため、本命の一角からは降ろすことはできない。一方の智弁は、春は打線が爆発して4連覇。近畿大会でも4強と実績を積んだ。夏に向けていい感じで仕上げてきそうだ。しかしこと夏に限って言えば、智弁は戦い方がうまいとは言えず、実績では一歩ライバルの天理に譲るだけに、今年はどんな戦いにしていくつもりだろうか。一方久しぶりに覇権争いに加わってきそうなのが名門の郡山。春は強打を軸に県大会では天理を、近畿大会では大阪の大商大を下し、一躍台風の目に躍り出た。あの伝統のユニフォームがまた甲子園にお目見えするというシーンが、はたして現実になるか。昨夏超絶な打力で甲子園を席巻した奈良大付は、今年も打線強化で上位を狙う。高田、法隆寺国際ら今年の県大会で4強入りしているチームにもチャンスは十分。長らく続いている天理-智弁の2強時代に、昨年に続いて今年も風穴があくのか。
【和歌山】(参加39チーム)
智辯和歌山と市和歌山の宿命の対決でフィナーレを迎えそう。スキを突きたい他の37チーム。
◎ 智弁和歌山
〇 市和歌山
△ 日高中津 初芝橋本 桐蔭 南部
▲ 海南 和歌山東 那賀
新時代を迎えた智辯和歌山は、選抜でも指揮を執った中谷監督が初めて夏の県大会に臨む。力は断トツのモノを持ち、普通にやれば連続出場間違いなしと思われる智辯和歌山だが、中谷監督の夏へのアプローチの仕方は高嶋元監督とはかなり違うようで、その辺が注目される大会だ。智辯和歌山は、自慢の強力打線が健在。西川、黒川、東妻と続く打線の破壊力は見事の一言。池田、小林らの投手陣は、元プロの捕手である中谷監督のメソッドをしっかり吸収して成長してきており、むしろ戦力的には昨年までを上回るものを見せてくれそうだ。一方ライバルの市和歌山も、選抜では8強入りしており、一歩も引かない構えを見せる。柏山、岩本を軸とした分厚い投手陣を軸に守り勝つ野球が得意。県大会では昨夏を起点に秋春ともに智辯和歌山に連敗しているものの、春は最終盤まではリードを奪っており、思ったほど苦手意識はなさそうだ。最後の夏に一発逆転を狙っている。何度も甲子園の土を踏む卯滝監督を迎えた初芝橋本にも注目が集まる。勝ち方を知る監督だけに、2強にとっては嫌な相手になるか。名門の桐蔭は、春は4強入り。戦える手ごたえをつかんだ。日高中津、南部などかつて甲子園をつかんだ各校も巻き返しを狙う。プロ注目の落合を擁する和歌山東も、市和歌山、智辯和歌山とそれぞれ県大会を戦ってきており、強豪と十分戦えるという手ごたえはつかんでいる。