三丁目ファンの皆様 10月13日土曜日16:20、東京秋葉原のUDXのASAIAGRAPH 2007で行われた、トークショーレポートです(長文注意 ほとんどネタバレなし)。
当日は修行坊主様とお会いし、私の子供とあわせ3名で4階の開場へ行きました。170人の席はほぼ満席で、キャンセル待ちの人も多少いたようです。観衆は映画ファンより、CG関係者や業界関係者といった感じの人が多かったです。出演は司会のほか、白組から山崎監督、渋谷紀世子VFXディレクター、高橋正紀ディレクター/シニアCGアーティストでした。司会の質問に対し、山崎氏が中心となって回答し、渋谷氏が補足、高橋氏はあまり話されませんでした。当日は撮影と録音は禁止でしたので、以下メモと記憶によるものです。私の記憶ほど当てにならないものはありませんので、修行坊主様、または参加された方、間違えや抜けがありましたらご指摘下さい。
司会:CGといえばハリウッドの大規模なプロダクションが有名だが、白組は小ぶり。少人数のよい点と悪い点は?
白組調布スタジオは20人程度。本社と離れているので治外法権(自由な雰囲気)。役職がある人でも、なんでもやる。
少人数のデメリットは、作業が遅い。本編が終わった後の作業が長いので、役者さんはその後2~3本も他作品に出てしまう人もいる。
メリットは、監督の指令(意図)が末端まで行き届く、工程管理が楽、担当者が少ないと過去の推移を全員が理解しているのでトライアンドエラー(やり直し)が楽。
飛行機のシーンでは、設計図どおりに作るとうまくいかず、デフォルメを行った。
司会:ハリウッドでは、一部屋全部1000台サーバーという例もあるが、白組は?
高橋氏:サーバーはXeon1.8の8コアが9台、Xeon2.8の2コアの12台、一人ごとにコンピューターを持ちその中でも作業を行う。
司会:映画製作で心がけている点は
映画はそれぞれの観客の物。監督の物と思いがちだが、どうしても譲れないところはともかく、例えばアシスタントの青年が気軽に意見を述べられる雰囲気が必要と思っている。ラブストーリーであれば、女性スタッフ達の反応なども常に気にし、裸の王様にならないよう気をつけている。
司会:前回の東京タワーから今回は日本橋に変わったが?
橋は出会いと別れをイメージしている。VFX技術を誇るだけでなく、なにかを象徴させる対象としたかった。
当初で日本橋でロケを考えたが、現地を視察し、交通量が多過ぎること、上の高速道路の影ができてしまうこと、高速道路が邪魔でクレーンが使えないこと、などのためあきらめた。
◎屋外の日本橋のセットの写真(道路側から 2枚ほど)
霞ヶ浦の脇の駐車場で、橋のたもとのセット(全長20mくらい周りはブルーバック)を作った。橋の欄干上の装飾のライオンやキリンは予算の関係でなし。橋の表面は緩やかなR(湾曲 弧)があるため、平らな普通の道路上の撮影にVFX、で代えることができなかった。
◎クラシックカーの写真(3枚程度)
日本橋の撮影と同じ場所、同日同時刻の光で撮影した写真が、後のVFX作業のため必要で、多数撮影した。
クラシックカー専門のコーディネーターがいる。旧車クラブには横の繫がりがあったり、前作からの関係もあり、いろいろな車に出演してもらった。無料でなく、ギャラも支払ったはず。
◎屋外の日本橋のセットの写真(1枚 川面側から 年季が入って汚れいてる)
司会:「汚し」(経年による自然な汚れ)はいつ、どうやるのか
ミニチュアやセットに直接やるのが理想。CGは非常に難しく、自然にできない。
司会:このような大きなセットも白組でつくっているのか。
これは造形のプロダクション、土台の製作、その他とかなり分業化されており、白組ではやっていない。橋の欄干などは発泡系の素材で製作された。これらの製作プロはかなり売れっ子で、映画、テレビ、CMと製作範囲は多岐に渡る。
◎クラシックカーの写真
晴海で撮ったのかも、との発言(渋谷氏)
◎日本橋のミニチュアの写真(数枚)
橋の部分のミニチュアは1.5x2mほどで、かなり大きい。土台はスタイロフォーム。3階の工房で製作し、1階のスタジオで撮影する。分解して階段をおろして持ってくる。
スタジオで撮影するので、凄腕のライトマンが屋外のセット撮影にも同行し、光について向き、色、雲、その他のデータを詳しく調べ、スタジオのミニチュア上で再現する。
高橋氏:汚しも入った精巧なミニチュアだが、原則としてリファレンス(CG作成の基礎・目安という意味か)であり、いつもそれがそのまま映像になるわけではない。
なることもあるが、関係者の合議制でミニチュアでいくかCGにするかを決める。CGでいこうといった人が、それを担当させられる。
ミニチュア担当は3人。4~5ヶ月かかった。ミニチュア製作のうち、古い広告や当時の街並みなどの資料集めが半分を占めた。
前作のミニチュア(大通りの建物と思われる)は、階層に別け少しづつ変化させて6回使用した。そのためもう今回には使用できる状態ではないので、全部新たに作り直した。
◎潮来のエキストラに出演した人のホームページの写真らしきもの(数台の車と大きなブルーバック)
司会:どうして日本橋では車がないのに、ここでは車があるのか
これは銀座日劇の前の道路のシーンで、橋と違って路面にはR(湾曲)が無いために車を入れて撮影できた。車の台数が少ないため、早く走ると途切れる。よって渋滞していることにして、ゆっくり走らせた。
◎監督提供の日本橋のシネマティクス(名称?)
ラフなグレーのCGで監督が製作した、動画イメージ。日本橋を北に望み、上方から左下に回りこむ 欄干脇の歩道にトモエ、一平、美香がいるが、トモエふと立ち止まり下から見上げアップになるシーン。これを見せられたスタッフからは、あまりの難しさに失笑がもれた。見上げるシーンは、構造物としての橋の下側も見せたかったからで、そのため日本橋のセットも、高さ1~1.5mくらい浮かせて作った。
日本橋でのロケを行ったが、歩道と車道1車線を午前中一杯閉鎖したが、過去にこんな日本橋閉鎖ということはなかった。日本橋保存会の協力を得て行ったが、実際にはリハーサルでしかなかった。
◎メイキングのDVD上映(数分)
実際にトモエ、一平、美香が映っているシーンが、セットからVFXが付加されいく経緯がわかる日本橋シーンのメイキング。
渋谷氏:この日本橋シーンでは約270レイヤー(画像の重ね合わせ)ものCGが重ねられており、作った本人にもレイヤー数がよくわからなくなっている。
そのほかにも飛行機の離陸シーン(これは以前の予告編の問題ありのシーンと差し替えられたようです)、羽田空港の駐車場のシーン、羽田の屋上の見送りデッキのシーン、こだま号が直線路を走っていくシーンなど(ほかにもあったかもしれませんが忘れました)などです。
◎初おかしいなあ 修行坊主様発見! ここでは秘密、皆さん見つけてください(笑)。
◎観客からの質問1:三丁目その3を作るのか
次回作は三丁目ではないものとして決まっている。過去のものを再現するばかりでは面白くない。
◎観客からの質問2:ガラスのうつりを通して、ブルーバックを抜くのは難しいが、どうやっているのか
ガラスをはずして撮影し、後から映り入りのガラスをCGで入れるほうが多い。そのほうが容易。
◎観客からの質問3:作ったミニチュアはどうするのか
同じスタジオで製作・撮影をするので、他社のようにトラックなどで運ぶ強度すら考慮しないで製作している。そのため長期の保存に耐えられず、前作のものもしばらくしたら素材が波打ってしまった。当分倉庫で保存し、その後粗大ごみとなる。
このメイキングは、後にDVDで発売される。
予定を20分ほどオーバーして終了。監督は、この後NHKへ行くそうでした。監督と渋谷氏がよく話されましたが、次の機会にはぜひ高橋氏の技術的につっこんだお話を聞きたいです。CGのイベントなので役者さんの話などは皆無、またその他製作の話も余りありませんでしたが、私は楽しかったでした。
写真禁止でしたので、監督らの写真が撮れませんでした。以上レポートでした。修行坊主様、おかしいところがあったらご指摘をお願いいたします。
当日は修行坊主様とお会いし、私の子供とあわせ3名で4階の開場へ行きました。170人の席はほぼ満席で、キャンセル待ちの人も多少いたようです。観衆は映画ファンより、CG関係者や業界関係者といった感じの人が多かったです。出演は司会のほか、白組から山崎監督、渋谷紀世子VFXディレクター、高橋正紀ディレクター/シニアCGアーティストでした。司会の質問に対し、山崎氏が中心となって回答し、渋谷氏が補足、高橋氏はあまり話されませんでした。当日は撮影と録音は禁止でしたので、以下メモと記憶によるものです。私の記憶ほど当てにならないものはありませんので、修行坊主様、または参加された方、間違えや抜けがありましたらご指摘下さい。
司会:CGといえばハリウッドの大規模なプロダクションが有名だが、白組は小ぶり。少人数のよい点と悪い点は?
白組調布スタジオは20人程度。本社と離れているので治外法権(自由な雰囲気)。役職がある人でも、なんでもやる。
少人数のデメリットは、作業が遅い。本編が終わった後の作業が長いので、役者さんはその後2~3本も他作品に出てしまう人もいる。
メリットは、監督の指令(意図)が末端まで行き届く、工程管理が楽、担当者が少ないと過去の推移を全員が理解しているのでトライアンドエラー(やり直し)が楽。
飛行機のシーンでは、設計図どおりに作るとうまくいかず、デフォルメを行った。
司会:ハリウッドでは、一部屋全部1000台サーバーという例もあるが、白組は?
高橋氏:サーバーはXeon1.8の8コアが9台、Xeon2.8の2コアの12台、一人ごとにコンピューターを持ちその中でも作業を行う。
司会:映画製作で心がけている点は
映画はそれぞれの観客の物。監督の物と思いがちだが、どうしても譲れないところはともかく、例えばアシスタントの青年が気軽に意見を述べられる雰囲気が必要と思っている。ラブストーリーであれば、女性スタッフ達の反応なども常に気にし、裸の王様にならないよう気をつけている。
司会:前回の東京タワーから今回は日本橋に変わったが?
橋は出会いと別れをイメージしている。VFX技術を誇るだけでなく、なにかを象徴させる対象としたかった。
当初で日本橋でロケを考えたが、現地を視察し、交通量が多過ぎること、上の高速道路の影ができてしまうこと、高速道路が邪魔でクレーンが使えないこと、などのためあきらめた。
◎屋外の日本橋のセットの写真(道路側から 2枚ほど)
霞ヶ浦の脇の駐車場で、橋のたもとのセット(全長20mくらい周りはブルーバック)を作った。橋の欄干上の装飾のライオンやキリンは予算の関係でなし。橋の表面は緩やかなR(湾曲 弧)があるため、平らな普通の道路上の撮影にVFX、で代えることができなかった。
◎クラシックカーの写真(3枚程度)
日本橋の撮影と同じ場所、同日同時刻の光で撮影した写真が、後のVFX作業のため必要で、多数撮影した。
クラシックカー専門のコーディネーターがいる。旧車クラブには横の繫がりがあったり、前作からの関係もあり、いろいろな車に出演してもらった。無料でなく、ギャラも支払ったはず。
◎屋外の日本橋のセットの写真(1枚 川面側から 年季が入って汚れいてる)
司会:「汚し」(経年による自然な汚れ)はいつ、どうやるのか
ミニチュアやセットに直接やるのが理想。CGは非常に難しく、自然にできない。
司会:このような大きなセットも白組でつくっているのか。
これは造形のプロダクション、土台の製作、その他とかなり分業化されており、白組ではやっていない。橋の欄干などは発泡系の素材で製作された。これらの製作プロはかなり売れっ子で、映画、テレビ、CMと製作範囲は多岐に渡る。
◎クラシックカーの写真
晴海で撮ったのかも、との発言(渋谷氏)
◎日本橋のミニチュアの写真(数枚)
橋の部分のミニチュアは1.5x2mほどで、かなり大きい。土台はスタイロフォーム。3階の工房で製作し、1階のスタジオで撮影する。分解して階段をおろして持ってくる。
スタジオで撮影するので、凄腕のライトマンが屋外のセット撮影にも同行し、光について向き、色、雲、その他のデータを詳しく調べ、スタジオのミニチュア上で再現する。
高橋氏:汚しも入った精巧なミニチュアだが、原則としてリファレンス(CG作成の基礎・目安という意味か)であり、いつもそれがそのまま映像になるわけではない。
なることもあるが、関係者の合議制でミニチュアでいくかCGにするかを決める。CGでいこうといった人が、それを担当させられる。
ミニチュア担当は3人。4~5ヶ月かかった。ミニチュア製作のうち、古い広告や当時の街並みなどの資料集めが半分を占めた。
前作のミニチュア(大通りの建物と思われる)は、階層に別け少しづつ変化させて6回使用した。そのためもう今回には使用できる状態ではないので、全部新たに作り直した。
◎潮来のエキストラに出演した人のホームページの写真らしきもの(数台の車と大きなブルーバック)
司会:どうして日本橋では車がないのに、ここでは車があるのか
これは銀座日劇の前の道路のシーンで、橋と違って路面にはR(湾曲)が無いために車を入れて撮影できた。車の台数が少ないため、早く走ると途切れる。よって渋滞していることにして、ゆっくり走らせた。
◎監督提供の日本橋のシネマティクス(名称?)
ラフなグレーのCGで監督が製作した、動画イメージ。日本橋を北に望み、上方から左下に回りこむ 欄干脇の歩道にトモエ、一平、美香がいるが、トモエふと立ち止まり下から見上げアップになるシーン。これを見せられたスタッフからは、あまりの難しさに失笑がもれた。見上げるシーンは、構造物としての橋の下側も見せたかったからで、そのため日本橋のセットも、高さ1~1.5mくらい浮かせて作った。
日本橋でのロケを行ったが、歩道と車道1車線を午前中一杯閉鎖したが、過去にこんな日本橋閉鎖ということはなかった。日本橋保存会の協力を得て行ったが、実際にはリハーサルでしかなかった。
◎メイキングのDVD上映(数分)
実際にトモエ、一平、美香が映っているシーンが、セットからVFXが付加されいく経緯がわかる日本橋シーンのメイキング。
渋谷氏:この日本橋シーンでは約270レイヤー(画像の重ね合わせ)ものCGが重ねられており、作った本人にもレイヤー数がよくわからなくなっている。
そのほかにも飛行機の離陸シーン(これは以前の予告編の問題ありのシーンと差し替えられたようです)、羽田空港の駐車場のシーン、羽田の屋上の見送りデッキのシーン、こだま号が直線路を走っていくシーンなど(ほかにもあったかもしれませんが忘れました)などです。
◎初おかしいなあ 修行坊主様発見! ここでは秘密、皆さん見つけてください(笑)。
◎観客からの質問1:三丁目その3を作るのか
次回作は三丁目ではないものとして決まっている。過去のものを再現するばかりでは面白くない。
◎観客からの質問2:ガラスのうつりを通して、ブルーバックを抜くのは難しいが、どうやっているのか
ガラスをはずして撮影し、後から映り入りのガラスをCGで入れるほうが多い。そのほうが容易。
◎観客からの質問3:作ったミニチュアはどうするのか
同じスタジオで製作・撮影をするので、他社のようにトラックなどで運ぶ強度すら考慮しないで製作している。そのため長期の保存に耐えられず、前作のものもしばらくしたら素材が波打ってしまった。当分倉庫で保存し、その後粗大ごみとなる。
このメイキングは、後にDVDで発売される。
予定を20分ほどオーバーして終了。監督は、この後NHKへ行くそうでした。監督と渋谷氏がよく話されましたが、次の機会にはぜひ高橋氏の技術的につっこんだお話を聞きたいです。CGのイベントなので役者さんの話などは皆無、またその他製作の話も余りありませんでしたが、私は楽しかったでした。
写真禁止でしたので、監督らの写真が撮れませんでした。以上レポートでした。修行坊主様、おかしいところがあったらご指摘をお願いいたします。
僕も観に行きたかったなぁ。
もやしもんなんか長野で放送していないんで、
淋しいもんです。orz
三丁目ファンの皆様 10月13日土曜日16:20、東京秋葉原のUDXのASAIAGRAPH 2007で行われた、トークショーレポートです(長文注意 ほとんどネタバレなし)。
当日は修行坊主様とお会いし、私の子供とあわせ3名で4階の会場へ行きました。170人の席はほぼ満席で、キャンセル待ちの人も多少いたようです。観衆は映画ファンより、CG関係者や業界関係者といった感じの人が多かったです。出演はデモレータ(司会)のほか、白組から
山崎監督、渋谷紀世子VFXディレクター、高橋正紀ディレクター/シニアCGアーティストでした。デモレータの質問に対し、山崎氏が中心となって回答し、渋谷氏が補足、高橋氏はあまり話されませんでした。当日は撮影と録音は禁止でしたので、以下メモと記憶によるものです。私の記憶ほど当てにならないものはありませんので、修行坊主様、または参加された方、間違えや抜けがありましたらご指摘下さい。
(⇒修行坊主の追加・修正反映済み)
デモレータ:CGといえばハリウッドの大規模なプロダクションが有名だが、白組は小ぶり。少人数のよい点と悪い点は?
白組調布スタジオは20人程度(クリエイター7人、コンポジット3、ミニチュア3、ミニチュア手伝い2、カメラマン3)。本社と離れているので治外法権(自由な雰囲気)。役職がある人でも、なんでもやる。皆一通りできる。
少人数のデメリットは、作業が遅い。本編が終わった後の作業が長いので、役者さんはその後2~3本も他作品に出てしまう人もいる。ポスプロ期間が長くなるため、待つという我慢ができる会社としか組めない。
メリットは、監督の指令(意図)が末端まで行き届く、Quality管理が楽、担当者が少ないと過去の推移を全員が理解しているのでトライアンドエラー(やり直し)が何度でもでき、Qualityアップにつながる。
飛行機のシーンでは、かなりすったもんだあった。設計図どおりに作るとうまくいかず、デフォルメを行った。
デモレータ:ハリウッドでは、一部屋全部1000台サーバーという例もあるが、白組は?
高橋氏:サーバーはXeon1.8の8コア(作業マシン)が9台、Xeon2.8の2コア(レンダリング・サーバ)の12台、一人ごとにコンピューターを持ちその中でも作業を行う。カット毎に担当者が担当する。
デモレータ:映画製作で心がけている点は
映画はそれぞれの観客の物。監督の物と思いがちだが、監督の物差しを捨てる、なくす。どうしても譲れないところはともかく、例えばアシスタントの青年が気軽に意見を述べられる雰囲気が必要と思っている。ラブストーリーであれば、メイクさんなどの女性スタッフ達の意見を求め、顔色の反応なども常に気にし、裸の王様にならないよう気をつけている。独りよがりにならない。たくさんの人の頭脳を活用する。でもこだわりも大事にする。
デモレータ:前回の東京タワーから今回は日本橋に変わったが?
日本橋は映画の真ん中あたりで出てくる。橋は出会いと別れをイメージしている。VFX技術を誇るだけでなく、なにかを象徴させる対象としたかった。
当初で日本橋でロケを考えたが、現地を視察し、交通量が多過ぎ交通を止められないこと、上の高速道路の影が濃くできてしまうこと、高速道路が邪魔でクレーンが使えないこと、などのためあきらめた。駐車場に16分の1のセットを作った。
◎屋外の日本橋のセットの写真(道路側から 2枚ほど)
霞ヶ浦の脇の駐車場で、橋のたもとのセット(全長20mくらい周りはブルーバック)を作った。橋の欄干上の装飾のライオンやキリンは予算の関係でなし。橋の表面は緩やかなR(湾曲 弧)があるため、平らな普通の道路上の撮影にVFX、で代えることができなかった。
◎クラシックカーの写真(3枚程度)
日本橋の撮影と同じ場所、同日同時刻の光で撮影した写真が、後のVFX作業のため必要で、多数撮影した。ブルーバックからある程度距離があるほうがCGの映りが良い。
クラシックカー専門のコーディネーターがいる。旧車クラブには横の繫がりがあったり、前作からの関係・映画の評判もあり、いろいろな車に出演してもらった。無料でなく、ギャラも支払ったはず。
◎屋外の日本橋のセットの写真(1枚 川面側から 年季が入って汚れいてる)
デモレータ:「汚し」(経年による自然な汚れ)はいつ、どうやるのか
ミニチュアやセットに直接やるのが理想。CGで作るのは非常に難しく、自然にできない。
デモレータ:このような大きなセットも白組でつくっているのか。
これは造形のプロダクション、土台の製作、その他とかなり分業化されており、白組ではやっていない。橋の欄干などは発泡系の素材で製作された。これらの製作プロはかなり売れっ子で、映画、テレビ、CMと製作範囲は多岐に渡る。彼らがロケのスケジュールに合わせて先回りしてセットを作ってくれている。
◎クラシックカーの写真
晴海でとったのかも、との発言(渋谷氏)
晴れの日の撮影をCGで合成するのは難易度が高い。曇りはデータがたまってきたのでうまくいく。
◎日本橋のミニチュアの写真(数枚)
橋の部分のミニチュアは1.5x2mほどで、かなり大きい。土台はスタイロフォーム。3階の工房で製作し、1階のスタジオで撮影する。分解して階段をおろして持ってくる。
スタジオで撮影するので、凄腕のライトマンが屋外のセット撮影にも同行し、光について向き、色、雲、その他のデータを詳しく調べ、スタジオのミニチュア上で再現する。
汚しも入った精巧なミニチュアだが、原則としてリファレンス(CG作成の基礎・目安という意味か)であり、いつもそれがそのまま映像になるわけではない。なることもあるが、関係者の合議制でミニチュアでいくかCGにするかを決める。CGでいこうといった人が、それを担当させられる。誰かがかならずつい口を滑らせてしまう。
ミニチュア担当は3人。4~5ヶ月かかった。ミニチュアの看板は苦労した。特に古い写真では文字の判別がつきにくかった。ミニチュア製作のうち、古い広告や当時の街並みなどの資料集めが半分を占めた。
前作のミニチュア(大通りの建物と思われる)は、階層に別け少しづつ変化させて6回使用した。そのためもう今回には使用できる状態ではないので、全部新たに作り直した。
◎潮来のエキストラに出演した人のホームページの写真らしきもの(数台の車と大きなブルーバック)
デモレータ:どうして日本橋では車がないのに、ここでは車があるのか
山崎:これは銀座日劇の前の道路のシーンで、日本橋と違って路面にはR(湾曲)が無く石畳にもなっていないために車を入れて撮影できた。車の台数が少ないため、早く走ると途切れる。よって渋滞していることにして、ゆっくり走らせた。
◎監督提供の日本橋のアニマティクス(ソフトの名称と思われる)
ラフなグレーのCGで監督が製作した、動画イメージ。日本橋を北に望み、上方から左下に回りこむ 欄干脇の歩道にトモエ、一平、美香がいるが、トモエふと立ち止まり下から見上げアップになるシーン。これを見せられたスタッフからは、あまりの難しさに失笑がもれた。見上げるシーンは、構造物としての橋の下側も見せたかったからで、そのため日本橋のセットも、高さ1~1.5mくらい浮かせて作った。
日本橋でのリハーサルを行ったが、歩道と車道1車線を午前中一杯封鎖したが、過去にこんな日本橋閉鎖ということはなかった。日本橋保存会の協力を得て行ったが、実際にはリハーサルでしかなかった。
◎メイキングのDVD上映
実際にトモエ、一平、美香が映っているシーンが、セットからVFXが付加されいく経緯がわかる日本橋シーンのメイキング。
渋谷氏:この日本橋シーンでは約270レイヤー(画像の重ね合わせ)ものCGが重ねられており、作った本人にもレイヤー数がよくわからなくなっている。
そのほかにも飛行機の離陸シーン(これは以前の予告編の問題ありのシーンと差し替えられたようです)、羽田空港の駐車場のシーン、羽田の屋上の見送りデッキのシーン、こだま号が直線路を走っていくシーンなど(ほかにもあったかもしれませんが忘れました)などです。
◎初おかしいなあ 修行坊主様発見! ここでは秘密、皆さん見つけてください(笑)。
(⇒修行坊主としては上映用では修正されていることを期待します。)
◎観客からの質問1
三丁目その3を作るのか:次回作は三丁目ではないものとして決まっている。過去のものを再現するばかりでは面白くない。今作で昔みたいな(SFチックな)ことをオープニングでちょこっとやっているのでお楽しみに。
ただし褒められるとスタッフのモチベーションが違う。前作よりも今作では最初からスタッフのモチベーションがすごく高かった。
◎観客からの質問2
ガラスの質感がCGでは難しい。ガラスのうつりを通して、ブルーバックを抜くのは難しいが、どうやっているのか
ガラスをなるべく入れない。ガラスを抜いて撮影し、あとからCGでいれるほうが多い。そのほうが容易。
◎観客からの質問3
作ったミニチュアはどうするのか
同じスタジオで製作・撮影をするので、他社のようにトラックなどで運ぶ強度すら考慮しないで製作している。そのため長期の保存に耐えられず、前作のものもしばらくしたら素材が波打ってしまった。だんだん壊れていく。白組のミニチュアは繊細だが壊れやすい。当分倉庫で保存し、その後粗大ごみとなる。上野駅と展示した建物は残っている。博物館用は強度が強い。
このメイキングは、後にDVDで発売される。
予定を20分ほどオーバーして終了。監督は、この後NHKへ行くそうでした。監督と渋谷氏がよく話されましたが、次の機会にはぜひ高橋氏の技術的につっこんだお話を聞きたいです。CGのイベントなので役者さんの話などは皆無、またその他製作の話も余りありませんでしたが、私は楽しかったでした。
修行坊主は、監督のジャケットが前作のメイキング・インタヴュー撮影時の黒の皮ジャケットだったのが、なぜかうれしかったです。またデモレータが冒頭で0号試写を見て、年甲斐もなくボロボロ泣いたという発言を聞けて、今作も期待できると確信したのでした。さらに女性の進行係が冒頭に山崎監督を「高橋貴監督」と言い間違えたのもご愛嬌でした。
写真禁止でしたので、監督らの写真が撮れませんでしたが、後ほどブログの方に会場の写真などをちょっとだけアップします。以上レポートでした。修行坊主様、おかしいところがあったらご指摘をお願いいたします。
(⇒修行坊主が若干追加・修正を行ないました。2007/10/18)
No.1108 2007/10/14(Sun) 19:39:38