心が満ちる山歩き

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ワーグナーの管弦楽曲集(1) ”タンホイザー”

2020年06月23日 | 名演奏を聴いて思ったこと


 普段からオペラをCDプレーヤーにかける回数は少ない方です。中でも聴くのは「カルメン」と「トゥーランドット」が多く、ワーグナーになるともっと少なくなります。しかし、ワーグナーの作曲したオペラの序曲や、オーケストラを抜き出したものはよく聴きます。ワーグナーの書いた無上の音楽は、歌手の出てこない、楽器だけの部分にこそあるような気がします。


 「~ ところで、シェーンベルクが楽劇を「歌う声による伴奏付きの、大オーケストラのための交響曲」と揶揄したことをご存じだろうか。楽劇においては、オペラの主役である「歌う声」は音楽の一部となり、「ライトモティーフ」が「劇」の現在を説明し、未来を予告し、過去を回想する。ワーグナーの劇作品をオーケストラだけで堪能しようという本日の演奏会。「歌う声」がなくとも、どれほど雄弁にオーケストラが「劇」を語り出すのか、じっくりと耳を傾けてみることにしよう。 ~」
(石川亮子著 Program Notes『新日本フィルハーモニー交響楽団 2019年5・6月演奏会プログラム』)

◆上岡敏之~新日本フィル(エクストン OVCL00703)

 2019年5月に東京と横浜で開催されたコンサートが収録されたものです。
 自分の聴きに行った演奏会が録音され、CD化されるというのはとても嬉しいことのひとつです。それが忘れられないほどの名演であれば、なおさらです。
 CDを聴いてみると、演奏会当日の雰囲気がそのまま伝わってくる部分が多く、いい録音だと思いました。
 何といっても1曲目の、”『タンホイザー』より序曲とバッカナール(パリ版)”が素晴らしいです。
 新日本フィルのコンサートでは、2017年の5月にもやはり『タンホイザー』序曲が取り上げられていました。得意曲であるのに違いありません。
 今回は「タンホイザー」序曲だけでなく、”序曲とバッカナール”が演奏されるところが違います。


 「~ 当時オペラ座では、上演に際してバレエを含むことが慣例となっており、ワーグナーは第1幕の冒頭に、ヴェーヌスベルクにおける愛欲のバレエを繰り広げるべく、「バッカナール(もともとはギリシア・ローマ神話の酒の神バッカスを讃える、放埓な祭りのこと)」を挿入した。 ~」
(石川亮子著 Program Notes『新日本フィルハーモニー交響楽団 2019年5・6月演奏会プログラム』) 

 (1:05)の深い弦の音色、(2:25)の盛り上がりが最初から印象に残ります。どちらも、深くしようとも、無理に盛り上げようともせず、楽譜に書かれている通りの演奏でした。自然に味の濃さがコンサートホールを埋め尽す様は、ワーグナーの楽譜が現代にそのまま甦ったと思うほど感動的でした。
 (5:10)~ テンポが速くなるところは、場面の転換が自然で、ここもワーグナーの思った通りの効果が出ていると思います。
 (5:46)~ ヴァイオリンの”タタタタタ”というリズムがくっきり聴こえる様子は、演奏会をそのまま思い出せるほどです。(6:46)の驚くほどふっくらした音も同じでした。
 この丁寧さが、湧き立つような高揚感を演奏のあちこちに生み出すのです。
 (7:22)~は、いつもわくわくする”タンホイザー”で一番好きなところですが、ここのメロディーを聴くたびに、子供の歌う”ドレミのうた”に似ている気がして仕方ありません。
 (8:35)は、ヴァイオリンとヴィオラのソロの掛け合いが素晴らしく、ゆっくり目のテンポも心地よいです。


 (つづく) 



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