なにたべた?

2014年12月14日 09時36分46秒 | NEW!
詩人の伊藤比呂美さんと、料理研究家の枝元なほみさんのFAXによる往復書簡集である。

内容をざっくり摘むと、伊藤さんは制度上は重婚に当たらない日米二つの家庭持ち、枝元さんは独身であるが複数の男性の間で迷子になりかけてって感じか。
その二人が、その日食べたもの(料理したものがほとんど)を中心にFAXでやりとりした記録である。食べもの関係が約8割、男について約2割、その他少々といった配合。

まず、二人のおかれた状況について。
それが特殊なことなのか、女性にとってあるべき姿なのかということ。
特殊な状況だと思うのは勝手だろう。でも、特殊=悪ではないし、だからといってステキなことでもないだろう、この場合は。
そんな単純な二元論では語れないことはよくわかっているし、何とも上手く言えないのだが、女性ではない自分は女性目線での捉え方がわからない。
そもそも当初は公開を目的として書かれたのではない、「素」の女性としての私信集である。
「女性目線」でなければわからないことが多いのではないか、女性じゃない自分は完全にわからないまでも「女性目線」を想像して読まなければこの本の真のおもしろさに気付けないのではないのかなどと考え読み始めた。
しかし、オンナゴコロのなんたるかを分からない駄目男が想定する「女性目線」なんぞ碌なモノではないことに思い至ったのは1/4ほど読み進めた辺り。
そんな余計なことをゴチャラゴチャラと考えたために始めは相当に読み辛かった。
半分を過ぎた辺りからようやく二人の文体というか思考にある程度シンクロできるようになってきて、後半はスルスルと読み進めることができた。

内容について。
食べるということ、ひいては生きるということへの熱意、それはもう執念と言っていいほどのこだわりに圧倒される。
枝元さんは料理を生業とされているから当然であるが、伊藤さんのこだわりは文筆を生業にしているだけに書き殴りに近いものにしたってかなり深いところを抉ってくる。
ごちゃごちゃと理屈をつけまくり、ディテールの構築から入る「男のこだわり」とは違う、いきなり本質なり核心をつく「女のいきざま」を感じる。

伊藤さんは、見た目(ビジュアルではなく人としての表面)も中身も見事なくらいの肉食獣だろう。ライオンとか虎とか豹とか。
枝元さんは鼬族。貂とかミンクとかオコジョとか、見た目(同上)は小動物だけど実態はけっこうな肉食獣。

女は、男に対して何枚もの踏み絵を踏ませる。
男はそれを分かっていて踏むこともあるが、大抵は気付かずに踏んでいる。
女はその結果を、この件に関してだけは「名前をつけて保存」して管理活用している。
男も女に対してたまに同様のことをするが、この件に関してだけは「上書き保存」で最新のデータのみ有効としたがる。

以上。