創作童話続きです。
第五話
少女は石を綺麗に洗い清め、その石のきれいに濯がれた穴に、ふぅっと息を吹きかけました。
少しだけ空気の揺れる振動を感じました。
そうして、綺麗になった石を両手で抱えて祠の中に返し、元通りに鎖を締めその場をあとにしました。
しかし、その夜から寝ても覚めても、少女の身体から鎖で縛られた感覚がどうしても取れないのです。
少女は、耳の神が苦しんでいる。行って上げないといけないと感じるのでした。
それ以来、海女の仕事に向かう前には、祠に行って、耳の神様の石に、毎日心で語りかけ続けたのでした。
たまに、湧水に石を持って行くと、水の精霊が
「今日は寒い日ですから温めておきましたよ」
「今日は暑い日ですから、冷たくしておきましたよ」
と話しかけてくれるのがわかりました。
穴の開いた石である耳の神は、水の精霊と話ができ、その会話を少女は感じるようになりました。
耳の神様に話しかけました。
「この源流の水の精霊と、貴女は私の大切な友達。いつも私が孤独な心を満たしてくれて、ありがとう。
私にある時海の中で、海の神様がこう教えてくれたの。
『視えない所、聴こえない所にこそ、神様は居る』とね。
聴こえない私には、その意味がわかる気がするわ。」
そう心で少女は話しかけました。
つづく
【画像は全てお借りしました】