創作童話を作ってみました。
それでは、はじまり〜
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海の奥深く、ひっそりとツノヒガシ竜宮城がありました。そこは、海を総括する龍大宮から離れた場所にある小さな竜宮の支社です。
龍大宮は、太古に山の神の血筋を引く山幸彦という名前の人間が一度だけ訪れたことから、龍大宮の王である、天龍と山幸彦の和を祝福して入口の石碑には「天龍山幸彦」の文字が刻まれていました。
海の中は果てしなく、龍大宮の支社も点在し、支社の竜宮城の石碑にも、大小様々な石碑に天龍山幸彦の文字を刻んでいました。
数千年も昔は、どの竜宮城も息をのむ美しさで、この世のどんなに美しい絵の具を探して描こうとしても、それは叶わないほどでした。
しかし、それは太古の昔話。
今では美しかった海の竜宮城は、どこも、藻やワカメで絡まり、酷いところはヘドロが覆って、天龍山幸彦の石碑の隣にあるかつては朱塗りの竜宮城の門にあたる一番目立つ鳥居さえも、その美しさの面影すらない無残な有様となってしまいました。
地上にも、龍大宮や支社の竜宮城のような美しい国をたてようと青海龍王なる亀を地上に使わし、山の神の子孫である山幸彦を龍大宮に招き、龍宮乙姫トヨとの結婚させようと試みたのは、全ての竜宮城を統べる龍大宮の神、天龍でした。
しかし、山幸彦が乙姫トヨを連れて龍大宮を鰐の背に乗って後にした後、龍大宮天龍の思いも虚しく、人間は、海や陸をどんどんと汚してしまいました。
「人と龍宮界が交わることは不可能だったのか。。」
と天龍は深く悲しみ、龍大宮の門を鎖で縛り、海の奥深い深海へ隠れて誰とも接触を絶ってしまいました。
そこは、太陽の光さえ届かない暗黒の世界でした。
海を総括する龍大宮の天龍が隠れてしまった状態なので、支社の竜宮にもエネルギーが徐々に届かなくなり、龍大宮から遠く離れた片田舎にあるツノヒガシ竜宮城も見る影も無い寂しい状態に次第になっていきました。
海を浄化する働きの神々や、眷属の龍も、自らの力だけでは、人間により汚された海の働きを浄化し続けることがだんだんと難しくなっていきました。
龍神からは、角や髭が取れ、爪が剥がれ、鱗もポロポロ落ち、中には元にいた竜宮を捨てて地上の洞窟やら、山の風穴などに姿を潜め、人間の欲望に迎合し本来の働きをしなくなるものもでていきました。
山幸彦が龍大宮から地上へ帰った後、力と金を持ったものが弱いものを支配する世へと地上は次第に変わり、民と民には差が広がり、人間同士で戦いが行われるようになっていました。
人と人に差が生まれると同時に、人と自然はどんどん分離されていきました。
海に棲めなくなり仕方なく沼の片隅や山や洞窟に住む龍神の棲家さえ壊し、人は自然をどんどん破壊していきました。
つづく
【画像は竜宮城検索画像よりお借りしました】