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札幌・円山生活日記

生誕100年 藤川叢三展~本郷新記念札幌彫刻美術館~

「生誕100年 藤川叢三展」。「北海道教育大学札幌分校」において彫塑の教官として多くの彫刻家や教諭を世に送り出した藤川叢三氏の生誕100年を記念した展覧会が「本郷新記念札幌彫刻美術館」で開催中です。氏の初期から晩年までの彫刻、版画、素描約50点を作品の変遷を追いながら紹介しています。

今日は「本郷新記念札幌彫刻美術館」で「生誕100年 藤川叢三展」です。戦前の旭川に生まれ終戦後の1951年から35年間にわたり北海道教育大学札幌分校(現・札幌校)で35年にわたり教官を勤めたという藤川叢三氏の作品展です。期間は2022年6月11日(土)~2022年8月31日(水)。不勉強でこれまで知らなかったアーティストではありますが札幌市文化芸術鑑賞促進事業により観覧料が通常の半額ということも魅力で本日鑑賞に出かけてきました。
  
「本郷新記念札幌彫刻美術館本館」入口付近。


「生誕100年 藤川叢三展」のチラシ。
“藤川叢三(本名:基、1922-1998)の生誕100年を記念し、その活動を振り返る展覧会を札幌で初めて開催します。
藤川は、旭川に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科塑造部卒業後、1951年から35年間にわたり北海道教育大学札幌分校(現・札幌校)において彫塑の教官として、多くの彫刻家や教諭を世に送り出しました。
自らの制作においては、当初、日展(日本美術展覧会)に出品しながら堅実な写実的人体像を制作していましたが、1962-64年にイタリアへ留学し、マリノ・マリーニから直接指導を受けたことで、大胆にデフォルメした素朴な表現へと作風を大きく変化させました。
帰国後は、服を脱ぐポーズなど日常の何気ないしぐさのなかに豊かな造形性を湛えた作品を、東京と札幌での個展や道展(北海道美術協会展)に発表しています。また、彫刻のほかにリトグラフ制作にも力を入れており、1975年頃からはその鮮やかな色彩をテラコッタの彩色に取り入れる試みを行っています。
本展では、藤川の初期から晩年までの彫刻、版画、素描約50点を、作品の変遷を追いながら紹介するとともに、優れた指導者としての側面も紹介します。”


「生誕100年 藤川叢三展」会場入口。
正面に立つ《裸婦立像》1950年代後半石膏。
幸いにも“救出”された等身大全身像の唯一の現存作品。現存作品が少ない理由はおいおい明らかになります。


藤川叢三氏は学徒出陣により出征した地より帰国し東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科塑造部に復学、1947年に卒業。1951年から北海道教育大学札幌分校(現・札幌校)において彫塑の教官として学生に教えながら道展や日展(日本美術展覧会)に出品します。
日展出品作品の写真。当初は堅実な写実的人体像を制作していたそうです。

《青年像》1955年石膏着色。
《少女像》1950年代テラコッタ。


氏は1962-64年にイタリアへ留学。敬愛するマリノ・マリーニ氏から直接指導を受けたことで大胆にデフォルメした素朴な表現へと作風を大きく変化させたそうです。
《横たわる裸婦像2》1963年頃ブロンズ。
《立像2》1963年頃ブロンズ。


帰国後の展開。氏は服を脱ぐポーズなど日常の何気ないしぐさのなかに豊かな造形性を湛えた作品を東京と札幌での個展や道展(北海道美術協会展)に発表していきます。
《裸婦1》1970年ブロンズ。



《裸婦1》1970年ブロンズ。別角度から。
《立像15》1968年ブロンズ。
第3章の会場。


氏は1960年代後半には彫刻のほかにリトグラフ制作にも力を入れます。1970年代に入ると当初の具象的な表現から離れ色彩溢れる新たな世界を広げていったようです。
第4章の会場とリトグラフ作品。
《リトグラフ25》1975年リトグラフ。

《座像17》1973年ブロンズほか。
同時期にはブロンズ像の表現にも変化が見られたようです。


氏は1975年頃からはリトグラフの鮮やかな色彩をテラコッタの彩色に取り入れる試みを行っています。これらの彩色テラコッタ作品は1978年の銀座・資生堂ギャラリーで開催された氏の最後の個展に展示されたものだとか。

《テラコッタ6》1975年テラコッタ。
《テラコッタ8》1976年テラコッタ。


《リトグラフ35》1982年リトグラフ。


1985年に長年勤めた北海道教育大学を定年退官。その際に大学に置かれていた作品を自ら破壊したとか。これが現存する作品が限られている理由の一つになっているそうです。
晩年の作品《対話19亡き兄に捧ぐ「レクイエム」》1994年油彩、キャンバス。


第7章では教育者としの藤川叢三氏にもスポットを当てます。
藤川氏との思い出を各氏が語っています。教え子に慕われた優れた指導者でもあったようです。以上で鑑賞終了です。

藤川叢三氏の生誕100年を記念した札幌で初めての展覧会です。氏の初期から晩年までの作品が表現の変遷を追いながら展示され見ていても興味深いものでした。最大の関心事は藤川叢三氏は退官時に何故自らの作品を壊してしまったのかです。色々と推察は出来ますが芸術家の真意は判りません。本展覧会にはその結果もあり現存する作品数が限られる藤川叢三氏の再評価を試みる狙いもあるのでしょう。少し思考回路を刺激する展覧会でした。ありがとうございました。

「生誕100年 藤川叢三展」
会期 2022年6月11日(土)~2022年8月31日(水)
会場 本郷新記念札幌彫刻美術館 本館
開館時間 午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜休館(7/18(月・祝)は開館し、7/19(火)は休館)
観覧料 札幌市文化芸術鑑賞促進事業により、展覧会の観覧料が通常の半額となります。
※居住地にかかわらず、来館されるすべての方が対象となります。
一般 600円(500円)→300円(250円)
65歳以上 500円(400円)→250円(200円)
高校・大学生 400円(300円)→200円(150円)
中学生以下無料
※( )内は10名以上の団体料金
主催 本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市芸術文化財団)
後援 北海道、札幌市、札幌市教育委員会助成公益財団法人花王芸術・科学財団、芸術文化振興基金助成事業
(2022.7.19)

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