Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

佐竹本三十六歌仙

2019年10月22日 13時56分56秒 | 美術館・博物館etc.

★京都国立博物館 サイト
 『流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』 ※11月24日(日)まで 後期は11月6日(水)~

この展覧会が開催されることは昨年から知っていた。
チラシをゲットした時は狂喜乱舞(!?) 「絶対に行くぞ~!」と1年以上前から旅を計画するほど楽しみにしてきた展覧会。

佐竹本三十六歌仙絵について初めて知ったのは、かれこれ11年前のこと→こちら
近代茶人たちの茶会 数奇風流を楽しんだ巨人たち』を読んで「へぇ~」と思っていたその翌月に実物の1枚を鑑賞した。
そう、森川如春庵の展覧会で。→こちら

以来、博物館や美術館で“兄弟姉妹”たちに遭遇するたびにblogにメモってきた。
(なので、当ブログで「佐竹本」と入力して検索すると、何を見てきたがわかる仕組み)

「一度、同窓会みたくかき集めて一堂に展示くれたらいいのに~」という記述もある。
切断(←実際には「切った」のではなく、継紙の糊を剥がして分けた)から丁度100年を迎える今年、それが実現された。

本当に何から書いていいものやら。

事前に特設サイトから出品一覧(展示替え予定表)を印刷し、行くの電車の中でチェック。
なるほど。三十六歌仙絵だけが展示してあるワケじゃないんだぁ。

はやる気持ちを抑えて、まずは3階へ。

第1章は国宝《三十六人歌集》と平安の名筆
今まで見た物も、そうでないものも「ほーっ」と思いつつ、さっさと次へ。(そもそも、美しい仮名文字だということしか、わからない)

第2章は“歌聖”柿本人麻呂
ちらっと見ただけで、ほぼ素通り。だって後世に描かれたものだもの。興味なし。

階段を降りて2階へ。

第3章は“大歌仙”佐竹本三十六歌仙絵
やっと近づいてきた。最初は分断された背景から。
会場となった応挙館の襖絵、籤引きの籤入れ。(以前、どこかの美術館で籤を見たことある)

“分断”前に田中親美に描かされた模本。(巻物だった本来の「姿」がよく感じられて、よかった~)

そして、誰がどの絵を引き当てたかのリストを示したパネル~。思わず、しげしげと見てしまった。
籤引きの中心となった益田鈍翁がいきなりお坊さんを引いて、めっちゃ不機嫌になったエピソードになった話は有名。
見かねた某氏が自分の引いたお姫様の籤と交換した。
初めてみた佐竹本三十六歌仙絵は斎宮女御(森川如春庵の世界展)なぁ。

もっとも、36名と住吉大明神の計37枚全てが同じ値段ではなく、ネームバリューや絵の状態で価格に開きもあったことから
籤引きの会場で籤の交換も行われたらしく、その場を取材した記者たちも把握しきれなくて
翌日に籤引きを報じた新聞との間で歌絵と引取り手の名簿との間で齟齬もあったとのこと。

ややこし~

そもそも、佐竹家から出る際に切断事件(分割して共同購入)があったのではなく、一度は一人の実業家が購入して、
第一次世界大戦後の不景気で一気に没落して、手放さざるを得なくなって、やむを得ず「切断」になった経緯も初めて知った。

そんな中で、それぞれの持ち主に引き取られた歌仙絵たち。

それぞれに表装が施され、モノによっては更に転売されて、中には点々と持ち主が代わった歌仙もあったようで。

その中で100年間、ずっと持ち続けた野村家(野村美術館所蔵)と住友家(泉屋博古館)はえらい。

紀友則「夕されば佐保の川原の川露に友迷はする千鳥なくなり」は先月初めに鑑賞したばかり。→こちら
野村徳七が最初に所蔵してから、野村家に変わらず引き継がれ、野村美術館所蔵に至った。
豊臣秀吉作の茶杓と紅葉呉器茶碗を伴っての登場だ。

源信明「恋しさは同じ心にあらずとも今宵の月を君見ざらめや」は住友家第15代吉左衛門友純(住友春翠)が入手してから
住友家に受け継がれ、泉屋博古館所蔵に至った。
ただ、春翠はせっかく入手したのに茶席に掛けることはなかったらしい。
一緒に展示されていた文琳茶入「若草」も。でも、春翠はどちらも深く愛していたと解説文に書いてあったのが印象に残った。
(益田鈍翁と対照的だったから)

現在は北村美術館所蔵の藤原仲文「有明の月の光を待つほどに我が夜のいたく更けにけるかな」は
重要文化財指定の青花高砂花入と一緒に。
北村謹次郎は最初の所有者ではないけれど、還暦茶事の道具組とのこと。

以前、北村美術館の展覧会でもこの組み合わせを鑑賞したっけ。→こちら

やったら豪華な表装ものもあった。
「紀貫之」(広島の耕三寺博物館所蔵)。初めて拝見する。「桜散る木の下風は寒からで空にしれぬ雪ぞ降りける
大きな扇を散らした天地は能装束を転用したものだそうで、とにかく目立っていた。

派手といえば、湯木美術館所蔵の「在原業平」もそう。
何度か拝見しているけど単独で拝見する限りでは「派手!」という印象はなかったけれど。
(「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」 業平らしい歌)

ひときわ目立つ言えば、「坂上是則」も。
現在は文化庁所蔵になっていて、たぶんトーハクで佐竹本歌仙図絵の特集展示をした折に鑑賞したハズ。→こちら
み吉野の山の白雪積るらしふるさと寒くなりまさりゆく」の世界そのままに一文字も中廻しもなく、風帯すらない
雪が積もった山を描いた台紙(天地すら分かれてない)の上に貼られた作りが超異彩で、かなり目立っていた。

過去ブログによれば、3年前にトーハクで観た折りは小野小町(個人蔵)とを観たらしい。
ネームバリューに感動したので書いたわけだけど、どういう和歌だったかなんて覚えてない(てか、読めてない)
色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける
百人一首の歌ではない。だけど、「花の色は移りにけりないたずらに我が身世にふるながめせしまに」
意味合いとしては、かなり似通っている。
そして、肝心の小町自身は顔を見せない。自らの美しさを嘆きっぷり、すごい。(そして名歌として後世に遺ることもすごい)

まずは本体を楽しみつつ一巡して、また戻って和歌の世界と表装を楽しんで再度一巡して、
最初に籤を引いた人物のパネルを見直して、それを念頭に入れつつ、また一巡。

と、計3度見直した。

※ほんとは他の歌絵ももっと書きたいんだけど、キリがない。
 とにかく目の前の実物をじっくり見た。(図録買うからと、目録にメモを書き込むことすらしなかった)

集中しすぎて、佐竹本三十六歌仙絵の後も展示は続いたけれど、もう脱力してまって
後鳥羽上皇の肖像画に「おっ」と思ったのと鈴木其一筆の「三十六歌仙図屏風」が面白~いと思ったぐらししか
印象が残ってない。

会場内は余裕があったので、体力消耗が激しくても、それでも負担に感じず思い切り集中して鑑賞できてよかった。

私はあれほど楽しみにしていた展覧会なのに、なぜか空いていた。
今週、関連番組のテレビ放送もあるから、混むのこれからかなぁ。

ゆっくり鑑賞できる時期に行ってよかった。

展示室を出てきたら、トラりんに遭遇。

 烏帽子をかぶって、御機嫌。(思わずハイタッチしてしまった)

図録とグッズも買って、満足。

後期も行くぞ~


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