さて、いよいよ初めての皮剥ぎ処理開始です。これまで一部皮剥ぎはしてみました。毛抜き処理をしたあと枝肉にしてから身体の1/4だけ皮を剥いだことがあるのです。70キロをこえる大きな♂イノシシの前半分でした。
これがたいへんでした。ある程度年齢を重ねた♂イノシシは、肩甲骨の周り(肩の部分)が俗によろい(鎧)と呼ばれるようにとても硬くなります。皮膚の下の脂肪がとても硬くなるようなのです。これまでに見たものでは厚いものでは3セン以上あったと思います。この部位は毛抜きでも手こずります。よろいの部分の毛はテコでも抜けないというようにがんこに抵抗します。こうしたイノシシのよろいは、昔、ヒトの合戦の際の防具である鎧と同様のはたらきをするのでしょう。
繁殖期、我が子孫を残そうと、♂たちのメスをめぐる闘争はなかなか大変で、ものすごい闘いのようです。これまで捕まえたイノシシの♂には、こうした痕跡を残す身体の傷痕がよく見られます。知人の捕った大きな♂は体中傷だらけで、その上、長いキバが体の中に残っていたそうです(厳しい生活)。
ここ「よろい」は毛を抜くのも、皮を剥ぐのもたいへんでした。
さて、今回のイノシシはまだ青年になりたて。どうなのでしょう。
身体についた泥や汚れはタワシでごしごしとさらにゴシゴシときれいにしました。
シカはロープ等で吊るし上げてから、皮を剥ぐのですがイノシシは重すぎます。なにしろ初めてであり、手順も知りません。教えてくれる先輩もいません。
さて、どうする?
背中からいくか?腹からいくか?前足からやるか?後ろ足から始めるか?
放血処理を学ばせていただいた食肉センターでは、確か足から始めていたような気がします。皮剥ぎはあまり縁がないと思っていたのか、放血処理に集中していたので他の処理のときはぼ~っとしていたのか、よく覚えていないのです。ただ、ものすごい早さで足首の切断をしていたこと、皮の処理をやられていたことだけはよく覚えているのですが。
おぼろげな記憶では、最初に足首を切りはずし、それから足のほうからはじめて、腹部から身体半分ほどまでナイフで処理をして、最後に背中を機械にかけていたと思います。
習うより馴れろといいます。よし。
足からはじめて腹部は顎下から睾丸まで、真ん中から背中に向かってすすめました。脂肪のすくない足は簡単でした。むずかしいとおもったのは、脂肪がたくさんついている部位です。イノシシは脂がおいしいのです。できるだけ捨てる皮にはつけたくありません。

画像で白い脂肪のなかに所々赤身がでています。これが脂肪が身につかず、皮についてしまったところです。あまり急いで事をすすめるというのはどんなことでもうまくいかないようです。まして、初めての仕事、初体験その上職人技が求められるというような仕事です。 ま、いいか。
処理用ナイフ

左から、日本刀を切断して再利用したナイフです。このナイフが一番よく切れます。砂鉄から取り出した玉鋼、それを鍛える刀匠の技術のすばらしさが実感できる切れ味です。このナイフが研ぎへって使えなくなったらどうしようと不安になるのです。肉の切り分けに使っています。
左から2番目、金属切断用の丸鋸(ハイス鋼)から、レーザー光線で切り抜いてもらって作った骨抜き用です。このナイフが一番固くて研ぐのにも苦労します。
左から3番目、食肉センターで職人用として使われている皮剥ぎナイフです。片刃で薄く、とても使いよいナイフです。
最後が、ガーバーのナイフ「フレイヤー」です。1966年頃の製品でキャッツタンハンドル、ブレードはハイス鋼、皮剥ぎ専用です。

日本製とアメリカ製の皮剥ぎナイフを並べてみました。長さに違いはあれ、とてもよく似ているでしょう。「肥後守」のように竹を切ったり、鉛筆を削ったりには向いていませんが、動物の皮剥ぎ作業にはこの形状がとても有効です。ナイフの先が丸くなっているのは、皮と肉の間に差し込んでいくという使い方ができるようにしているのです。
なんとか、すべての皮の処理ができました。慣れたら毛抜きとそれほどかわらない時間で処理ができるようになるかもしれません。何事も修行が必要。これからも若いイノシシを捕まえたら、積極的に皮剥ぎに挑戦してしてみようと思います。
これがたいへんでした。ある程度年齢を重ねた♂イノシシは、肩甲骨の周り(肩の部分)が俗によろい(鎧)と呼ばれるようにとても硬くなります。皮膚の下の脂肪がとても硬くなるようなのです。これまでに見たものでは厚いものでは3セン以上あったと思います。この部位は毛抜きでも手こずります。よろいの部分の毛はテコでも抜けないというようにがんこに抵抗します。こうしたイノシシのよろいは、昔、ヒトの合戦の際の防具である鎧と同様のはたらきをするのでしょう。
繁殖期、我が子孫を残そうと、♂たちのメスをめぐる闘争はなかなか大変で、ものすごい闘いのようです。これまで捕まえたイノシシの♂には、こうした痕跡を残す身体の傷痕がよく見られます。知人の捕った大きな♂は体中傷だらけで、その上、長いキバが体の中に残っていたそうです(厳しい生活)。
ここ「よろい」は毛を抜くのも、皮を剥ぐのもたいへんでした。
さて、今回のイノシシはまだ青年になりたて。どうなのでしょう。
身体についた泥や汚れはタワシでごしごしとさらにゴシゴシときれいにしました。
シカはロープ等で吊るし上げてから、皮を剥ぐのですがイノシシは重すぎます。なにしろ初めてであり、手順も知りません。教えてくれる先輩もいません。
さて、どうする?
背中からいくか?腹からいくか?前足からやるか?後ろ足から始めるか?
放血処理を学ばせていただいた食肉センターでは、確か足から始めていたような気がします。皮剥ぎはあまり縁がないと思っていたのか、放血処理に集中していたので他の処理のときはぼ~っとしていたのか、よく覚えていないのです。ただ、ものすごい早さで足首の切断をしていたこと、皮の処理をやられていたことだけはよく覚えているのですが。
おぼろげな記憶では、最初に足首を切りはずし、それから足のほうからはじめて、腹部から身体半分ほどまでナイフで処理をして、最後に背中を機械にかけていたと思います。
習うより馴れろといいます。よし。
足からはじめて腹部は顎下から睾丸まで、真ん中から背中に向かってすすめました。脂肪のすくない足は簡単でした。むずかしいとおもったのは、脂肪がたくさんついている部位です。イノシシは脂がおいしいのです。できるだけ捨てる皮にはつけたくありません。

画像で白い脂肪のなかに所々赤身がでています。これが脂肪が身につかず、皮についてしまったところです。あまり急いで事をすすめるというのはどんなことでもうまくいかないようです。まして、初めての仕事、初体験その上職人技が求められるというような仕事です。 ま、いいか。
処理用ナイフ

左から、日本刀を切断して再利用したナイフです。このナイフが一番よく切れます。砂鉄から取り出した玉鋼、それを鍛える刀匠の技術のすばらしさが実感できる切れ味です。このナイフが研ぎへって使えなくなったらどうしようと不安になるのです。肉の切り分けに使っています。
左から2番目、金属切断用の丸鋸(ハイス鋼)から、レーザー光線で切り抜いてもらって作った骨抜き用です。このナイフが一番固くて研ぐのにも苦労します。
左から3番目、食肉センターで職人用として使われている皮剥ぎナイフです。片刃で薄く、とても使いよいナイフです。
最後が、ガーバーのナイフ「フレイヤー」です。1966年頃の製品でキャッツタンハンドル、ブレードはハイス鋼、皮剥ぎ専用です。

日本製とアメリカ製の皮剥ぎナイフを並べてみました。長さに違いはあれ、とてもよく似ているでしょう。「肥後守」のように竹を切ったり、鉛筆を削ったりには向いていませんが、動物の皮剥ぎ作業にはこの形状がとても有効です。ナイフの先が丸くなっているのは、皮と肉の間に差し込んでいくという使い方ができるようにしているのです。
なんとか、すべての皮の処理ができました。慣れたら毛抜きとそれほどかわらない時間で処理ができるようになるかもしれません。何事も修行が必要。これからも若いイノシシを捕まえたら、積極的に皮剥ぎに挑戦してしてみようと思います。