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幸楽苑と日高屋、なぜ明暗が分かれたのか

2015-06-26 16:18:06 | 地域外食関連ニュース
幸楽苑と日高屋、なぜ明暗が分かれたのか
「290円ラーメン中止」の本質 李 顕史 :公認会計士、税理士
2015年06月10日

幸楽苑の黄色い看板には、「昭和二十九年創業」と記されている。1954(昭和29)年、福島県会津若松市に開店した「味よし食堂」が起点だ。

その後、株式会社幸楽苑に改組し、看板商品の「中華そば」(ラーメン)とギョーザを核に店舗網を拡大。今では東日本を中心に約520店のネットワークを有するラーメンチェーン大手である。
一方、幸楽苑の創業から約20年後、1973(昭和48)年に埼玉・大宮で中華料理「来来軒」として発祥したのが、ハイデイ日高。

現在は主力業態「中華食堂 日高屋」を軸として、首都圏を中心に約360店を展開する。日高屋の看板には、幸楽苑と同じ「中華そば」の文言がある。

売上高の差は年々縮小、利益率は歴然

2社は似た業態の外食チェーンながら歴史の違いもあり、幸楽苑のほうが規模は大きい。ただし、ここへ来て明暗はくっきりと分かれている。

10年前に2倍以上あった売上高の差は年々詰まり、収益力の差は歴然。老舗の幸楽苑を追い落とす勢いで業績を伸ばすハイデイ日高と、停滞に苦しむ幸楽苑という構図だ


それを象徴するのは、幸楽苑による看板商品の販売中止。5月26日を最後にやめた290円(税抜き)の中華そばのことである。

中華そばは、その低価格を武器にピーク時には幸楽苑の売り上げの3割強を占めていた。日本経済が長いデフレに陥る中で、人気商品となった。

ところがアベノミクスに伴う景気回復や物価上昇などに伴って存在感は徐々に低下。

直近は売り上げに占める比率が同17%程度までに落ちており、食材費や人件費が上昇する中でコストを圧迫する要因になっていた。

幸楽苑の前年度2015年3月期は売上高376億円と前期比1%増のほぼ横ばいで、営業利益は8.1億円と同1割の減益だった。

これを受けて幸楽苑は中華そばの事実上の後継として、これまでと異なる細麺などを特徴に、税抜き520円の「醤油らーめん『司』」を新メニューとして投入。

客単価の向上につなげようとしており、すでに一定の成果も出始めているようだ。
ただし、これをハイデイ日高との比較で見ると風景は異なる。

ハイデイ日高は看板にも記している「390円 税込」という低価格のラーメン(中華そば)を看板商品としながらも、この局面で業績を伸ばしている。

直近決算の2015年2月期の売上高は344億円と、規模こそ幸楽苑を約30億円下回るものの前年からの増加率は7%。

営業利益は40億円と同8%の増益で、幸楽苑に約5倍の差をつけているのだ。営業利益率の差はいうまでもない。

2社の違いはどこにあるのか。

1店舗当たりの売り上げという観点でみると、幸楽苑はすでにハイデイ日高に抜かれている。前年度の年間平均を計算すれば幸楽苑は約7500万円。

対するハイデイ日高は約9700万円と約30%の開きがある。1店舗当たりの営業利益になるとさらに差は大きい。幸楽苑は161万円。

ハイデイ日高は1147万円と、7倍強にまで広がる。

コスト面でみるとどうか。売上高に占める「売上原価」「販売費及び一般管理費」を経費率と定義してみよう。

 店舗によらない本部コスト(人事・総務・経理・内部監査部門などのコスト)や研究開発費なども販売費及び一般管理費には含まれるが、ここでは無視した。

 そうすると幸楽苑の経費率は97.8%、ハイデイ日高は88.2%だ。ハイデイ日高のほうが1店舗当たりの売り上げが大きく、かつコストも低い。

 人件費の観点でみるとパート・アルバイト比率の違いが関係しているようだ。
日高屋はアルコール販売が得意

 幸楽苑、日高屋ともにラーメンやギョーザを中心に、からあげや枝豆などもある。

 似たようなメニュー構成ながら違うのは、日高屋が好採算であるアルコールの販売を得意としていること。

「ちょい飲み」の需要を獲得しているのだ。特にビール以外のアルコール飲料は原価率がかなり低い。最近ブームのハイボールは原価率が低く、飲食店の収益に大きく貢献している実態がある。
2社で大きく異なるのは店舗の立地戦略だ。幸楽苑は、北は北海道から西は岡山まで大都市から地方までをカバーする。

 ハイデイ日高は、関東それも首都圏に集中している。違いは、それだけではない。
幸楽苑はほとんどの店舗に駐車場がある。

 幸楽苑のホームページを調べると、駐車場なしの店舗は東京7、北海道、福島、茨城、千葉、埼玉、新潟の各1、直営501のうち計13のみだ。

 神奈川や大阪、兵庫など人口の多い府県の全店舗に駐車場があるのは、調べてみて驚いた。それだけ郊外への店舗展開が徹底してるといえる。

 一方のハイデイ日高は353店のうち、駐車場があるのは19店。それもすべて埼玉県の郊外だ。
2社の直近決算における貸借対照表を比較してみた。

 建物及び構築物(純額)は幸楽苑68億円、ハイデイ日高64億円と大差ないものの、土地は幸楽苑39億円、ハイデイ日高16億円と2倍以上の開きがある。

 つまり、ハイデイ日高のほうが「持たざる」効率経営を推進しているという側面も指摘できる。ちなみに直近決算期末の自己資本比率は幸楽苑38.2%、ハイデイ日高72.7%。財務の健全性でも差がある。
ハイデイ日高は都心部の店舗展開の強みを活かし、ちょい飲みを上手く取り込むことに成功したのだろう。

 都心部では電車やタクシーなどで移動する人が大半で、自家用車で移動する人が少ないから飲酒運転の心配もない。

そもそもメニュー表の打ち出し方にも2社の違いがある。

ちょい飲みを誘うメニュー表示

 筆者は6月上旬の平日夕方、都心部のとある幸楽苑と日高屋をそれぞれ訪れてみた。

 日高屋ではちょい飲みを提案するように、おつまみのから揚げや枝豆などのメニューが目立つように記載されていた。

 一方、幸楽苑はおつまみメニューの表示が小さく、それもまとめて表示されていた。


 幸楽苑がメニュー表でちょい飲みのおつまみについて意図的に表示を小さくしているかどうかは定かではないものの、

 筆者が2店を比べるかぎり、同じような時間帯でアルコールを注文しているのは、日高屋の来店客のほうが多かった。

 幸楽苑が営業利益を上げるためには、売り上げを拡大するか、経費を削減するしかない。そのうち経費削減には限界がある。

 飲食業界には「FLコスト」と呼ばれる比率が存在する。材料費と人件費の合計を売上高で割って算出する比率だ。FはFoodの略で材料費、Lはlaborで人件費を示す。

 このFL比率が60%を上回ると、経営が厳しいといわれる。飲食業では人件費と材料費が原価の大半となる。

 FL比率= 「(材料費+人件費)÷売上高」
人件費の削減を考えてみよう。幸楽苑の場合、地方立地店舗がハイデイ日高と比較して多いことから、比較的低賃金で従業員を雇用できるはずだ。

 ただ、今の日本の雇用環境は過去20年の最高水準に改善してきており、各産業で人手不足が叫ばれている。

 この局面では人件費を大きく下げるのは難しい。1店舗当たりのオペレーション(各種業務)を今よりも少人数で回せるような仕組みがあればいいが、メ

 ニューが豊富な幸楽苑で現場の人員を今よりも極端に減らすのも現実的ではない。
材料の質は落とせない

 材料費はどうか。そもそも食材費の高騰が290円の中華そばで利益を出せなくなった要因にあるうえ、材料の質を落とすようなコストカットにも踏み切れない。

 首都圏で複数店舗を経営するラーメン屋の経営者は、「材料の品質を落とせば確かに利益が上がるものの、

 その分、味も落ちていずれお客の信頼もなくなってしまう」と話す。材料費を劇的に削るのも、難題といえる。

となれば、幸楽苑が業績改善で取るべき道は売上高の拡大しかない。

 既存店でみれば客単価向上を狙うことだ。とはいえ、幸楽苑が収益性の高い「ちょい飲み層」を取り込めるかというと、それも容易ではない。

 地方に展開し、車での来店を前提とする幸楽苑の店舗は運転者にアルコールを提供できないからだ。ファミリー層を狙うなど、ハイデイ日高とは別の戦略が必要となる。

これにもハードルが待ち受ける。

今のところ、幸楽苑にとって目立って客単価を上げられる策は、520円の「醤油らーめん『司』」の投入ぐらい。

 極旨醤油らーめん、味噌らーめん、塩らーめんなどは税抜き390円で据え置かれている。
 チャーハンやギョーザのセット販売の比率を高めたいという方針はあるようだが、確実な成果が狙えるかというと微妙だ。

つまり、看板商品の290円ラーメンを中止しても、幸楽苑とハイデイ日高の収益力の差は容易には詰まらない。

 「店舗の立地」と「メニュー構成」という外食チェーンの「基本」ともいえる戦略の違いが、時間とともに大きな差となって現われてきている。



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