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おぎどんの世界~ブログ版

平成18年民事訴訟法第2問・再現答案

2007-01-08 | H18年度現行論文本試験再現答案
平成18年民事訴訟法第2問・再現答案

第1 小問1
1. Yの(1)の主張の訴訟上の意味について
(1)ア  YがXとの間で本件売買契約を締結したことは認めると主張している点について、裁判上の自白が成立しないか。
イ   裁判上の自白とは、期日における相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述をいう(179条)。そして、自己に不利益な事実とは、基準の明確性から相手方が証明責任を負う事実をいうと解する。
    この証明責任とは、ある事実が審議不明の場合に、この事実を法律要件とする法律効果の発生が認められないという一方当事者が被る不利益を言う。そして、この証明責任の分配は、基準の明確性と実体法との調和の観点から自己に誘致な法律効果を主張するものがその法律効果を定める法規の法律要件にあたる事実の証明責任を負うと解する。
ウ   本問では、本件売買契約の締結はXのYに対する売買代金請求の根拠となる事実である。これはXに有利な法律効果を定める法規の法律要件にあたる事実であり(権利根拠規定)、Xに証明責任がある。したがって、Yの主張は期日における相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述にあたり、裁判上の自白が成立する。
エ   よって、上記Yの主張は、裁判上の自白として訴訟上の意味を有する。
(2)ア  Yが本件売買契約は錯誤により無効であると主張している点について、抗弁にあたらないか。
イ   抗弁とは、相手方の主張を認めた上で自らが証明責任を負う事実を主張することをいう。
ウ   本問では、Yの錯誤無効の事実はXの代金請求を否定する事実であり、Yに有利な法律効果を定める法規の法律要件にあたる事実であるから(権利滅失規定)、Yが証明責任を負う。
    したがって、上記Yの主張は、Xの主張を認めた上で自らが証明責任を負う事実の主張であり、抗弁にあたる。
エ   よって、上記Yの主張は、抗弁として訴訟上の意味を有する。
2. Yの(2)の主張の訴訟上の意味について
(1)   YがXと本件売買契約を締結したのはYではなくZであると主張している点について、これは被告適格がYではなくZにあると主張していると考えられるから、被告適格の欠缺の主張である。
(2)   したがって、上記Yの主張は、被告適格即ち訴訟要件の欠缺の主張として訴訟上意味を有する。
3. (2)の主張の訴訟法上の問題点について
(1)   本問Yの(1)の主張は、Yに被告適格があることを前提に主張しているのに対し、Yの(2)の主張はこれに矛盾してYに被告適格がないと主張している。そこで、Yの主張は裁判上の自白に反し許されないといえないか。
    思うに、裁判上の自白が成立すれば、裁判所はこれに拘束され(179条)、これをなした当事者も訴訟上の信義則(2条)における禁反言の原則からこれに拘束される。
    もっとも、本問では、Yに被告適格がある点について裁判上の自白が成立しておらず、Yの(2)の主張は裁判上の自白には反しない。
(2)   しかし、Yの(1)の主張と矛盾するYの(2)の主張を認めるとXの信頼が損なわれる。
    思うに、先行する主張と矛盾する主張については、訴訟上の信義則(2条)における禁反言の原則に反するから、訴訟上の信義則(2条)により許されないと解する。
    本問でも、Yの(2)の主張は、先行するYの(1)の主張と矛盾する主張であるから、訴訟上の信義則により許されない。
第2 小問2
1.  本問Zの主張は、弁論主義、即ち訴訟資料の収集・提出を当事者の権限ないし責任と建前からは、自由に許されるのが原則である。
2(1)  しかし、相手方の訴訟追行上の信頼を損なう場合には、これを制限する必要がある。
(2)   思うに、①相手方が先行する訴訟行為を信頼して訴訟行為をなしている場合において、②先行する訴訟行為と矛盾する事実の主張をなすことは、訴訟上の信義則(2条)における禁反言の原則に反することから訴訟上の信義則により許されないと解する。
(3)   本問では、たしかにYとZは別個の人格であり、Zの主張には矛盾がないようにも思える。
    しかし、XはYの本件売買契約を締結したのはYではなくZであるとの主張を信頼して、先行する訴えを取り下げZに対して新たに訴えを提起したのであるから、①相手方が先行する訴訟行為を信頼して訴訟行為をなしている場合にあたる。
    また、YはZの代表取締役であり、ZはYの個人企業と考えられるから、YとZとは実質的に同一視すべきである。とすれば、先行するYの主張は実質的にはZの主張であると同視できるから、②先行する訴訟行為と矛盾する事実の主張にあたる。
(4)   したがって、Zの主張は訴訟上の信義則に反し、許されない。
3.  よって、裁判所はZの主張を排斥すべきである。
以上(4頁78行目まで)


評価:C

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