オーバードライブをペダルのメインストリームに押し上げたのはやはりメイドインジャパンといわれています。細かく調べるといろいろ説はありますが、そんな70年代に登場したオーバードライブの基本回路は数種類ありますが王道を行くスタンダードは日本で生まれた数機種。現在入手可能なオーバードライブペダルのほとんどがその数種類のクローンのようなものです。90年代にはその回路が海外のクラフトメーカーでアレンジされたクローンが伝説化してそのクローンがまた生まれるという繰り返しが今日に受け継がれています。その中ではプレミアの付くものから、隠れた名機、名ばかりのモノまで多数。数年に一度は素晴らしいモノや有名ギタリストが使用して話題になるものまでいつもチェックしていないとあっという間に何倍にも価格が高騰するものまであります。
最近では大手メーカーが自社でリリースしていたモノを再度復刻したり、チューンナップ版を出したり、それをクラフトメーカーがまた味付けをしたりと際限がありません。そんな中、90年代に元は日本のオーバードライブの構造をチューンナップして伝説化したケンタウルスが登場します。裏蓋を開けた瞬間、黒い樹脂で覆われた基板を見て驚いた記憶が懐かしいですがその後、ハンドクラフトをうたうメーカーのお約束になりました。ブースターとしても使えるドライブペダルの走りで話題になりましたが2000年代後半に製造中止して以来プレミア価格に。そうなるとそのクローンが数限りなく増殖してオーバードライブペダルの一つのジャンルになっていきます。
そんな熱いケンタウルスクローンを見て見ぬふりはできません。それなりのメーカーモノもいいですがコストより中身で勝負する個人製作家のモノをチェック。メーカーモノにはそのままのクローンだと付加価値が付かないので何がしか基板や本体にミニsw等をつけているものが多く見れます。それも多様なトーンを演出できて楽しいのですがクローンというのにオリジナルと音が違った時の言い訳のように感じるのは多少シビア過ぎますが。
そこでオリジナルに近いスタイルのモノがこの個体。一回り小型のキャビネットで丁寧なPTP配線、特殊な渋い塗装。同時期にホットケーキ3ノブのクローンも入手です。全く同じパーツを使ってもパーツの配置やキャビネット、配線材が違えば必ずトーンの違いが出るので仕方ないのですがこのホットケーキクローンは素晴らしい。ノブの歪み始める位置などは違いますがホットケーキのクランチの可変幅が大きくとられてグラッシーでゲインが高く高品質なパーツで組まれている雰囲気がよく味わえます。さて、このケンタウルスクローンはどうかというとかなりクォリティの高いオーバードライブに仕上げられています。これもきれいなPTP配線で配線の取り回しも美しい。中身は製作者の著作物ということでお見せしませんが個人製作の細やかな仕事がうかがわれます。歪の質感もオリジナルとの違いは無くこちらの方がミッドレンジが若干太くクリーンブーストでもストラトの1弦ハイフレットの音が細くならない。PTPのペダルの場合、ミッドレンジやゲインが多少高く出る傾向にあります。それはより音が太めに出力され意図的に抜けを想定したトレブリーなトーンとは別物です。オリジナルのケンタウルスのトレブルノブがミッドブースト的な動きをするのもよくカバーされています。ギター側のボリュームにも反応が早く歪量のコントロールを手元でやるには最高。ここまでくると価格やメーカーや個人製作という枠ではなくどんなアタリに出会うかということです。逆に趣味で製作している個人製作モノは採算度外視的な内容で作ってくるので中にはハズレもありますが当たると大きく、これは大変アタリです。
メーカーモノもここ最近は海外のハイエンドペダルが落ち着き、メイドインジャパンのハイエンドペダルの復興が多いように感じます。オーバードライブは日本製という時代がまた来そうな予感。特にチューブアンプをザラつかせるような渋いハイエンドの多くは日本製が目立ちます。それも意外と渋い海外モノのクローンだったりと。しかし、個人製作のハイエンドチューブアンプが少ないのが残念ですが。