Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

New Custom Telecaster

2021-06-11 14:44:42 | GUITARS

いつもお世話になっているrunt guitars RUNT GUITARS後藤氏から珍しい1Pのクラロウォルナットバール材が入荷したとの連絡があったのがかれこれ1年前。何かスペシャルなギターをお願いしたくなりました。ウォルナットとなるとエキゾチックウッドが流行った80年代を感じる2ハムバッカーのテレキャスターしかありません。1枚板からの削り出しでオーダーする究極のカスタムなのでいろいろとわがままな要求を今回も実現してくれました。

1Pからの削り出しなのでトップとバックをどうするか、木目の位置など楽しいですね。クラロウォルナットはクルミの木の根の部分で独特な木目がありますが密度の違う部分が混ざり合ってるので加工も難しい個体のようです。見た目と違い軽~中の重量で取り回しがしやすいギターになりました。ウォルナットボディーとなるとオイルフィニッシュですがそこはウレタンのグロスフィニッシュ。ボディ形状はスタンダードのフェンダーテリースタイルでトップエッジがテレキャスターのRでバックエッジとトップエルボー部分がストラトのR、軽くバックコンター入り。ネックジョイント裏カットはセットネックの質感のruntguitarsオリジナルカットでボルトオン。ネックは1988年製PGM  K.Nyuiブランドのストラトキャスターネックをリファインしネック裏のフィニッシュは80年代バレーアーツへのオマージュ。ペグはゴトーマグナムロック、ブリッジはヒップショット、ピックアップはEMG85のパッシブ版EMG H4Aの1ボリューム、1トグルスイッチ。ナットはGRAPHTECHのブラック、ジャックプレートはアルミ削り出しのruntguitarsオリジナル。ピックアップは本来別なものをセレクトしていましたが入荷待ちの為、H4Aを搭載しましたがこれでいい感じと馴染んできていたら9ヶ月かかって本命が入荷してしまいました。その件はまた別なときに。ゲージは最近お気に入りの0.08のアーニーエキストラスリンキー。

ミッドレンジ寄りかと思われていたクラロウォルナットですが意外とフラットでアッシュ的な味わい。クリーン、クランチOKですがEMGとのハイゲインなディストーションでも破綻しないところが力強い。リア、フロント、ミックスとどれもディープで噛みつくトーンはインストロックで延々弾きまくるのにマッチするソロ専用のギターになっています。今回は驚きのマグナムロックですね。なぜ今まで使わなかったのかが不思議な位の素晴らしいアイテム。ダブルボールエンドの弦が構造上最高なのですがその質感をレギュラーの弦で再現する世界のゴトーを言わしめるスーパーペグ。全部のギターをこれに変えたくなる程の銘品です。これとGRAPHTECHのナットやゴトーの俵型のストリングガイドでチューニングの狂いとはオサラバ状態になったのが感動。

ピックアップはダイレクトマウントですがそこはruntguitars後藤氏のこだわりのオリジナルマウント方法です。それに関しては新しいピックアップを搭載する巻きまで今しばらくお待ちください。

 


Red Stratocaster

2021-06-10 14:39:05 | GUITARS

Runt Guitars製のカスタムボディに新たなネックを装着してもらいようやく馴染んできたダコタレッドのストラトキャスター。オールドテイストの飴色にフィニッシュしてもらい赤いボディとのマッチングは良い感じになりました。ピックアップは安心のEMGのSAセット。クリーンのアンプセッティングでは独特のアクティブ感がありますが少しでもクランチ成分を投入するとビンテージストラトトーンに早変わりするのがEMGの凄いところ。ペダルとの相性やノイズが無いところはビンテージモディファイのパッシブピックアップではありえないレベルです。DAWでのオーディオインターフェースにダイレクトインの使いやすさはこれに勝るものは無いかもしれません。

ここ数年はストラトキャスターにはテンションの緩いセッティングがベストマッチというところにたどり着いていますがついに0.08~0.38のゲージの領域に入ってしまいました。特にフェンダースケールにはいいようです。若干ネックを緩めて低いアクションでフラットに設定が必要になりますが音量が下がることもなく滑らかです。太い弦、テンションを追い求めるレイボーンフリークの真逆を行くセッティングですが出音は全く同じ。鈴鳴り感が増えダイナミクスがつけやすくなりますね。減のゲージ変更だけでも表情が変わるのでストラトは奥深い。


1955 Fender Stratocaster Refine

2020-06-29 10:47:42 | GUITARS

70年代あたりに指板中央に亀裂が入ったところに接着剤を流し込んだだけのアメリカンなメンテナンスを施されていた1955年のフェンダーストラトキャスターのネックを思い切ってメンテナンスに出したのが数年前。亀裂を接着し直し、指板を補正してのリフレットで完璧な状態に戻りました。幾度となくされたリフレットで指板が削られた為、ハイフレットの高さが保てずブリッジのクリアランスが変化してしまいシムでも違うフィーリングに。

数年前にビンテージスタイルに定評のある某メーカーにボディに合うネックを製作してもらいましたが何か違和感をぬぐい取れずまた戻すことにします。薄くなったネック側のジョイントの底面にスペーサーのようなメープル板を張り合わせて高さを稼ぐという考えを思いつきました。高さを確保するシムならネックに角度が付きすぎてストラト特有のトーンが減少します。そんな荒技を実現できる職人に早速連絡すると一つ返事でOK。runtguitars.com/  代表の後藤氏は新進気鋭のルシアーで忙しいさなか実現してくれました。イメージ以上の仕上がりと正確なピッチには恐れ入ります。こちらのfacebookで制作工程が細かく紹介されています。ぜひご覧ください。

そんなネックとボディがめでたく再婚したので記念に伝送系、パーツ等をすべて新調。ピックガード、PUカバー、ボリューム&トーンノブをUSA fenderのストラトリリース60周年で出た54年モデルのリスパーツ。角の丸いPUカバーとショートスカートノブは54年の最初の数十本のみのバージョンで55年に使うのは間違いですがそのあたりはラフにみていただければ。配線材はストラトなどのシングルコイルPUの個性を最大限に出すと認識しているウエスタンエレクトリックのビンテージ単線。特に最高な40年代から50年代中盤までのコットン被覆のブラックエナメルの22AWGが入手出来たのですべてそれで取り回します。ポットはCTSの底面フラットなカスタムで配線しましたがトルクが重いのとシャフトが長くワッシャーを数枚PUガード裏に仕込まないとノブとPUガードに隙間が出てしまいます。このノブのスカート部分に隙間が出るとフェンダーではないという勝手な拘りがあることにご了承ください。CTSのヘソ付きビンテージタイプポットはトルクが軽くシャフトもストラトに合う長さでいい感じにフィットしました。PUセレクターはもちろんの3WAY、コンデンサーはお気に入りのデンマークのJENSENオイルペーパー0.022uf。

弦高はすべて1~1.1mmにセット、ブリッジは1mmのフローティングでテンションもジャストフィット。ピックアップはリア、センターともにオリジナルでフロントはリンディーフレーリンのリワウンド。すべて直流抵抗5.7kΩ前後で以前より倍音成分が複雑になっているような気配を感じます。いろいろと手を加えて同じ年月の経年変化を味わったボディとネックをセットアップしてみるとこのストラトを手にした20年前以上にストラトらしいトーンに変化しているのには驚きです。同じ直流抵抗値のリンディのリワウンドPUも当初は多少ファットでしたがいい具合にローミッドが抜けて他のオリジナルPUと同化していってます。低いアクションでナチュラルなコンプ感が心地良いですがダイナミクスが所有しているどのストラトより味わえるのが特徴です。軽くクランチしたチューブアンプにダイレクトでセンターピックアップというのがこのギターの魅力でしょうか。

厳密にいうと56年まであったアッシュボディ/メイプル指版定番の弦の分離感があるクリアな音より57年以降のミッドレンジに雑味が増したアルダーボディのトーンに近い風合いです。ボディが軽量なのがその要因でしょうがこの時代の不安定なピックアップがその年代別オカルトを呼ぶ根源。ローズ指板を導入した60年からよりミッドレンジが膨らんだラウドなトーン、70年代に入り周辺機器や音楽シーンの変化とともにブリリアントな質感になりアッシュボディに戻る73年あたりからまた変化と楽器というより工業製品のような変革をしていったのがストラトキャスター。同じフェンダーでもスタイルやトーンの統一性を崩さないテレキャスターはフェンダーギターのメイン商品として君臨していますがストラトキャスターは最初から玩具のようにアレンジ自由というのも目論んだスタイルをレオフェンダーは想定していたかもしれません。

昔は勝手なさじ加減で良い悪いを言っていましたが長くストラトを嗜むと様々な組み合わせで正解が無いというのがストラトなんですね。

以前にオーダーしたネックはruntguitars後藤氏が制作のレッドEMGストラトのボディに移植するとこれもまた最高になってしまいました。このギターに関してはまた別の機会に。


Titanium Telecaster BRIDGE PLATE

2018-09-17 20:09:14 | GUITARS

ビンテージモディファイ風のワーモスのテレキャスター。ローラー製ビンテージピックアップが太いトーンを醸し出しますが、ワーモスのサイドからネックアジャスト機構がある特殊なネックの為、モダンな鳴り方のギターです。ネック自体も太く細かく調整しなくてもビクともしないのがその機構があるためか、オーバースペックなのかは謎です。重心が下にあるモダンなトーンのテレキャスターでいいのですがもう少しトゥワングな感じに。

テレキャスターのチューンナップでPUの交換の次に一般的なのがブリッジ回りです。元々はビンテージスタイルの83gと少々重めなプレススチールのニッケルメッキ・ブリッジプレートが搭載されていました。エッジがレリック風で手にやさしくない仕上げなため交換。昔のブームだったシェクターのブラス6wayブリッジプレートも引っ張り出したら驚きの172g。余計な倍音を止めハイパワーでピュアなピックアップのトーンを出す仕様なのですがサドルを装着すると軽く200gオーバーの重量級。時代を感じますね。サイドエッジが無いプレートだと変形を防止するために厚くしていかなくてはなりません。両サイドエッジのほとんどをカットした厚めのスチールプレートも国産であるのですが、今回は初めての素材のチタンをセレクト。重量はこれまた驚きの39g。スチールでこの重量だと変形してしまうスペックです。新素材でのトーンの違いをよく耳にしますがそのほとんどは気持ちの問題です。素材が生み出す音質ではなく重量や形成技術が問題なのです。チタンは医療にも使用される材質なのでフィジカル的にもいいイメージですが、ポイントは重量と強度です。ブリッジプレートを薄くして軽量にするとローエンドは削られトーンはハイミッドにシフトしサスティーンも程よく複雑な倍音がまさにトゥワンギーになっていきます。これはPUを交換したかのようなイメージになるくらい変貌しました。ストラトのフローティングブリッジからハードテイルにしたよりインパクトがあります。今まではパーツ重量を上げてドンシャリなハイゲインにさせるチューンでしたが今回はその真逆。

古くからのサイドのあるプレスブリッジプレートはブリッジカバーを受ける部分とプレートの変形を防止する効果もあるレオフェンダーの傑作デザインですがもう一つの秘密が隠されています。リアPUが吊り下げられた部分がボディにキッチリとビス止めするとブラスのような厚いブリッジプレートと同じ倍音が少ないトーンになってしまいます。サドルの後方のみのビス止めでプレートを支えリアPU部分がボディの上に載っている感覚がトゥワングのポイントです。そこに隙間があると余計な共鳴を生みハウリングを引き起こすので薄くフラットなプレート形状を維持するチタンがテレキャスターにベストマッチしたことに。

ギターパーツとしては新参者のチタンがビンテージサウンドの再現に役立つとは。この先何が起こるかわかりません。


ストラトパーツ

2018-04-10 14:08:20 | GUITARS

パーツの集合体でもあるストラトキャスターには実に様々な交換用・ドレスアップパーツが存在します。80年代からの本家フェンダーカスタムショップのスタート等、古き良きヴィンテージの復刻がスタートしましたが当時はまだプリCBSとの差が歴然で何か違う雰囲気。現在ではレリックやピックアップまで現存しているオールドフェンダーと同じトーン再生まで可能なものがリリースされています。

ビンテージモディファイという経年変化を再現することは全く基準が無くピンキリなクォリティーがたくさんありますがこれがまた付加価値を生みます。ただ現行品を汚くしただけで数倍の値段に跳ね上がり、全くの言いなり価格がまかり通るのがこの分野です。ほとんどがハンドメイドなので全て人件費なのでしょうがこれは無いだろうというものも数知れず。これらのモディファイパーツのほとんどはフェンダー純正品か一部のパーツメーカーモノを加工するのですが、フェンダー自身からもレリックではないリアルな当時のパーツを再現したアイテムも数年前に出しています。「Pure Vintage Strat Accessory Kit」という50年代、60年代のPUカバーやノブのセットなのですが54年製の一時期しか作られていなかった形状を復刻させた「Pure Vintage 54 Strat Accessory Kit」なるアクセサリーキットを今回入手。

全体に角の丸いピックアップカバー、独特のショートスカートノブ、丸穴のバックプレート等マニアにしか興味のない内容。音には一切影響はなくノブの操作性は微妙な感じですがストラトのデビュー仕様を味わうにはいい雰囲気です。写真にある角が丸いクリームに変色したPUカバーは80年代フェンダーパーツのDIYなのですが雑にやると角が割れているレリック仕様のビンテージ風パーツのようになってしまいます。こんな適当な加工でも既製品の数倍の価格で販売していますからタマリマセン。オリジナルにそこそこ忠実で雰囲気を味わえるには本家フェンダーのパーツが安心できます。素晴らしいレリック仕上げでも基になっているパーツがB級品で形状に違和感を感じるパーツもあるのでたいへん奥が深い。

初期のスペックが重要視されるギター業界ですが明らかに後半の仕様のほうが改良されて完成度は高いです。そこにメーカーのコストダウンのエッセンスが入った瞬間にビンテージ信仰が生まれてしまい工業製品のエレクトリックギターには避けては通れない宿命が始まるわけです。1950年代から70年代前半に開発・改良されたエレクトリックギターの普遍的なデザインはその時点でより革新的なモノを否定する側に回ってしまった感があります。しかし、あまりにも完成されたレオフェンダーやテッドマッカーティーのデザインから逃れるにはハイエンドとはいえスタインバーガーのような突飛なギターじゃないとそれ以外はみなコピー商品的な見方をされます。しかし、トラッドな匂いがないと満足しないギタリストがほとんどですからPRSのようなある意味トラッドの風合いそのまんまでPRS製というくらいのほうが潔いという感じもしますね。