歪を知り尽くしたマーシャルのオーバードライブペダル「Bluesbreaker II」。そんな本家本元から出た歪エフェクターなのに世界最高の過小評価品。数年前に出たオーバードライブ専門のムック本にも掲載されることなく、専門マガジンの歪エフェクター比べの企画にも採用されない希少価値の高い存在の一品。
マーシャルとしては20年前に初の歪エフェクター「ガバナー」をリリースし、JCもこれさえあればマーシャルに変貌すると即購入したが、そうならないことに気づいてすぐに手放してしまった過去がある。もちろん当時のモノは現在プレミアが付いている英国製。その後、モデルチェンジを重ねこのスタイルになったのは約10年前。メイドインチャイナで実売価格が定価の半額で売られていて、ビギナーギタリストがマーシャルブランドに魅かれ購入後すぐ売却するものだから中古相場だと定価の3割と驚きのディスカウントペダルになってしまっている。
ディストーションの歴史を作ってきた天下のブランド、マーシャルが送り出すオーバードライブペダルがそんな寂しい存在価値でいいのかを検証してみよう。
10年前までの黒い鉄板を曲げた軍用なデザインから一新。シルバーメタリックの人間工学に基づいたようなオリジナルデザイン。2mm厚の重量級ダイキャストで電池込みで588g。ボスのコンパクトエフェクターでも394gなのでその違いも歴然。内部基盤もコントロール部、SW・ジャック部、メイン基盤と3分割され全てがオリジナルなレイアウト。クリッパーはLEDを使用。電池BOX部分も基盤と隔離され内部で動くことは無い。
音はマニアックな「ブルースブレーカー」や「ハンドワイヤード1974X」などの後面開放型コンボアンプをシュミレートしていてマイルドでシルキーなオーバードライブを奏でる。そのためトーンコントロールも滑らかでマイルドだ。素人は抜けが悪いと言ってしまうがそこがポイント。ブルースモードでのゲインとヴォリュームはクリーンブーストも出来てクランチ設定のチューブアンプのドライブにも対応。その瞬間トーンコントロールは倍の効きに変貌する。さすが本家のマーシャルだからそのあたりも想定済みで使いやすい。ブーストモードはコンプレッションしないで単純に音量を上げるのでアンプをブーストするというよりセカンドドライブとしてソロにオンする使い方のほうがお勧め。あくまでメインはブルースモードでの使用がメイン。ソフトな歪とはいえゲインフルだとかなりのディストーションだ。アンプクリーン設定でゲインが9時から1時方向内がおいしいところだろう。
こう考えてみるとナチュラルにパワー管をドライブさせるような滑らかな歪のペダルは意外と無いのに気づく。ハイエンド物はドライブ単体で主張があり素晴らしいがトーンが抜けすぎて隠し味的には難しい。トレブルがザラつかない滑らかなコンプレッションはまさにブルースブレーカーだ。TS系のようにも見えるがあのミッドレンジをフラットにした感じでトーンのコンセプトと完成度は流石マーシャル。値段は格安だが音とBOXの頑丈さは業務用。
ケースの完成度がこんなに高いのにド真ん中の商品ラベルがなぜこんなにダサいのか。ラベルバッチのデザインも理解出来ないしプラスチックの貧弱な作りも最悪。これなら名前だけプリントするだけでいいのに。アンプのデザインはみんなカッコいいのになぜでしょう?