Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

1955 Fender Stratocaster Refine

2020-06-29 10:47:42 | GUITARS

70年代あたりに指板中央に亀裂が入ったところに接着剤を流し込んだだけのアメリカンなメンテナンスを施されていた1955年のフェンダーストラトキャスターのネックを思い切ってメンテナンスに出したのが数年前。亀裂を接着し直し、指板を補正してのリフレットで完璧な状態に戻りました。幾度となくされたリフレットで指板が削られた為、ハイフレットの高さが保てずブリッジのクリアランスが変化してしまいシムでも違うフィーリングに。

数年前にビンテージスタイルに定評のある某メーカーにボディに合うネックを製作してもらいましたが何か違和感をぬぐい取れずまた戻すことにします。薄くなったネック側のジョイントの底面にスペーサーのようなメープル板を張り合わせて高さを稼ぐという考えを思いつきました。高さを確保するシムならネックに角度が付きすぎてストラト特有のトーンが減少します。そんな荒技を実現できる職人に早速連絡すると一つ返事でOK。runtguitars.com/  代表の後藤氏は新進気鋭のルシアーで忙しいさなか実現してくれました。イメージ以上の仕上がりと正確なピッチには恐れ入ります。こちらのfacebookで制作工程が細かく紹介されています。ぜひご覧ください。

そんなネックとボディがめでたく再婚したので記念に伝送系、パーツ等をすべて新調。ピックガード、PUカバー、ボリューム&トーンノブをUSA fenderのストラトリリース60周年で出た54年モデルのリスパーツ。角の丸いPUカバーとショートスカートノブは54年の最初の数十本のみのバージョンで55年に使うのは間違いですがそのあたりはラフにみていただければ。配線材はストラトなどのシングルコイルPUの個性を最大限に出すと認識しているウエスタンエレクトリックのビンテージ単線。特に最高な40年代から50年代中盤までのコットン被覆のブラックエナメルの22AWGが入手出来たのですべてそれで取り回します。ポットはCTSの底面フラットなカスタムで配線しましたがトルクが重いのとシャフトが長くワッシャーを数枚PUガード裏に仕込まないとノブとPUガードに隙間が出てしまいます。このノブのスカート部分に隙間が出るとフェンダーではないという勝手な拘りがあることにご了承ください。CTSのヘソ付きビンテージタイプポットはトルクが軽くシャフトもストラトに合う長さでいい感じにフィットしました。PUセレクターはもちろんの3WAY、コンデンサーはお気に入りのデンマークのJENSENオイルペーパー0.022uf。

弦高はすべて1~1.1mmにセット、ブリッジは1mmのフローティングでテンションもジャストフィット。ピックアップはリア、センターともにオリジナルでフロントはリンディーフレーリンのリワウンド。すべて直流抵抗5.7kΩ前後で以前より倍音成分が複雑になっているような気配を感じます。いろいろと手を加えて同じ年月の経年変化を味わったボディとネックをセットアップしてみるとこのストラトを手にした20年前以上にストラトらしいトーンに変化しているのには驚きです。同じ直流抵抗値のリンディのリワウンドPUも当初は多少ファットでしたがいい具合にローミッドが抜けて他のオリジナルPUと同化していってます。低いアクションでナチュラルなコンプ感が心地良いですがダイナミクスが所有しているどのストラトより味わえるのが特徴です。軽くクランチしたチューブアンプにダイレクトでセンターピックアップというのがこのギターの魅力でしょうか。

厳密にいうと56年まであったアッシュボディ/メイプル指版定番の弦の分離感があるクリアな音より57年以降のミッドレンジに雑味が増したアルダーボディのトーンに近い風合いです。ボディが軽量なのがその要因でしょうがこの時代の不安定なピックアップがその年代別オカルトを呼ぶ根源。ローズ指板を導入した60年からよりミッドレンジが膨らんだラウドなトーン、70年代に入り周辺機器や音楽シーンの変化とともにブリリアントな質感になりアッシュボディに戻る73年あたりからまた変化と楽器というより工業製品のような変革をしていったのがストラトキャスター。同じフェンダーでもスタイルやトーンの統一性を崩さないテレキャスターはフェンダーギターのメイン商品として君臨していますがストラトキャスターは最初から玩具のようにアレンジ自由というのも目論んだスタイルをレオフェンダーは想定していたかもしれません。

昔は勝手なさじ加減で良い悪いを言っていましたが長くストラトを嗜むと様々な組み合わせで正解が無いというのがストラトなんですね。

以前にオーダーしたネックはruntguitars後藤氏が制作のレッドEMGストラトのボディに移植するとこれもまた最高になってしまいました。このギターに関してはまた別の機会に。



コメントを投稿