足立借地借家人組合

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賃貸人の修繕義務不履行によって賃借人が蒙った営業利益の損害の範囲

2014-01-04 20:25:52 | 日記
 店舗賃借人が賃貸人の修繕義務不履行によって蒙った営業利益相当の損害の範囲
(最高裁平21・1・19判決判例時報2023号)


(事案の概案) 
1 賃借人Xは平4・3、賃貸人Yからビルの地下一階をカラオケ営業のために月額二〇万円で賃借した。
2 平成4・9ころから本件店舗に浸水が頻繁に発生したが、平9・2には床上30~50㎝まで浸水した
 (本件事故)そのためにXはカラオケ店の営業ができなくなった。
3 Yは本件事故より、Xから営業再開できるよう修繕を求められでいたが、これに回応じず、逆に賃貸借契約の解除を主張してXに退去を要求し、電源を遮断するなどした。
4 Xは営業再開の目途も立だないため、平10・9、Yの修繕議務不履行により営業利益流失等による損害賠償を求める本訴を起こした。これに対し、Yは修繕義務の存在を否定し、
  さらに、賃料不払等を理由として賃貸借契約の解除を主張し本件店舗の明渡を求める。
5 名古屋高裁金沢支部は、「Yは本件事故後も引続き賃貸人として本件店舗部分を使用収益させるために必要な修繕義務を負担していかにもかかわらず、
  その義務を尽くさなかった。Xは本件事故の日からカラオケ店営業ができなかったから、Yに対し、本件事故の一か月後である平9・8・12から
  Xの求める損害賠償の終期である平B・8・11までの4年と5か月間の得べかりし営業利益約3104万円を喪失したことによる損害賠償を請求する権利がある」と判決した。
  これに対し、Yが上告した。

(判決要要旨)
①Yが修繕義務を履行したとしてもを朽化(築後約三〇年)して大規模な改修を必要としていた本件ビルにおいてXが賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
②営業再開はいつ実現できるか分からない実現可能性が乏しいものとなっていた。
③カラオケ店営業は本件店舗以外の場所で行うことができないものとは考えられない。
④Xはカラオケセッ卜等の損傷に対し約3700万円の保険金が支払われていたのであるから再びカフ才ブセットを整備するのに必要な資金を得ていた。
 そうすると、Xがカラケ営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく、本件店舗における営業利益相当の損害が
 発生するにまかせて、その損害のすべてについての賠償をYに請求することは、条理上認められない。よって、右損害の回避又は減少の措置を執ることができた
 時期以降の損害のすべてをYに請求することはできない、として原判決を破棄して損害の範頭について更に審理を尽くすよう原審に差し戻した。

(寸評)
家主の修繕義務不履行による賃借人の損害にはいろいろあるが、店舗の営業利益を失つたことによる損害の賠償を求める際には、この判決の趣旨を念頭におく必要がある重要な判決

      (弁護士 白石光征)

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