近代建築撮影日記

日本全国の近代建築を
大判カメラ、一眼レフ、デジカメなどで
撮影した写真で紹介していきます

近代建築撮影講座(その6)『大判撮影の道具いろいろ』

2014-11-30 23:30:17 | その他

今回は、大判撮影の諸道具について。

※各道具に対する評価・評論は建築撮影に特化した私個人のものです。
一般的に通用する内容であるとは限りません。 
 



【水準器】
何処か1ヶ所ならレンズとフイルムに近いカメラ側に水準器を装着したほうが良い。
カメラと三脚の取り付け部分が歪んでいる場合もあり、雲台上では精度に不安がある。
2か所なら三脚側(雲台より下)にも装着し、三脚自体を水平に設置したうえでカメラ側の水準器で調整するようにする。
そうすれば、雲台の回転で水平が狂うことはない。
水準器付きのカメラがベストだが、付いていない機種も多い。
ホットシューがある機種なら、ホットシュー取り付けタイプの水準器を使う。
ホットシューが無ければ、ホームセンターなどで小さいサイズの水準器を購入して、両面テープなどでカメラに貼り付けるか都度カメラに置いて測定する。
気泡を円の中央に合わせるタイプより、円筒形で一方向のタイプを2個配置した方が使いやすい。

いろいろなタイプの水準器。水平垂直出しは建築撮影の基本となる。

【冠布・ピントフード】
ピントグラスの画像を確認するための遮光に必要
冠布は完全な暗所を作れるので見やすいが、かさばって邪魔になり夏は暑苦しい。
ピントフードは携帯に便利だが、完全な暗所を作れる訳ではない。一長一短がある
私は、携帯に便利なピントフードを利用している。
蛇腹に極小の穴がある場合、蛇腹に冠布を被せて撮影すれば応急処置になる。


【ピント調整用ルーペ】
私の場合、基本的なピント調整はピントグラスを目視して行っているが
微細なピントをチェックするためにルーペを併用している。
微細なピントを見るには、倍率が高め(8倍程度)の方が使い良い。
ピントフードを使っている場合はフードより長いルーペを選ぶと良い。
私は、両方の条件を満たしているWISTAのロングルーペを愛用している。


【レンズボード】
通常、レンズ取り付けホールは中央よりも6mm程度下にあるが、
ライズアオリを多用する建築撮影では、中央についているものを選ぶと有利だ。
フランジバックの短い広角レンズでは、カメラや蛇腹の形状によってアオリの動作幅が狭くなることがあるからだ。
ただし、カメラ側の目盛でアオリ無しの状態で6mm程度のライズアオリになってしまうため、アオリ無しのニュートラルな状態で撮影したい場合には使いにくい。

通常、レンズ取り付けホールは中央より6mm下にある。

【レンズ】
建築撮影に使いやすいレンズは?と聞かれると、私は58mm、90mm、120mmの3本をあげる。
この3本は4x5判で、35mmフイルム換算すればだいたい17mm、27mm、36mmとなり、
6x9判なら、だいたい24mm、38mm、51mmとなる。
2つのフイルムフォーマットを持てば17mm超広角~標準まで揃い、建築全景撮影に必要な画角はほぼ網羅できる。
4x5判で35mmフイルム換算約14mmの47mmレンズは広角過ぎて使いにくいが
引きのない所での全景撮影に必要な場合がある。
更に、遠景や細部拡大撮影のために300~500mm程度のテレレンズもあれば便利。

【シャッター】
予備用に持っておくと良い。
大判レンズは、コパルやSEIKO製のシャッターにねじ込んであるだけなので、
同規格のシャッターであれば自由に付け替えが可能である。
シャッターが故障した時の予備のほか
マミヤプレスなど、シャッターユニットから外すことが出来る中判カメラ用レンズを大判カメラで使用することもできる。

マミヤプレス用50mm F6.3レンズを凹ボードのコパル0番シャッターに取り付けた。ただし、イメージサークルは直径10cm程度なので、煽るなら6x7判程度でしか撮影できない。

【ケーブルレリーズ】
レリーズ固定解除がねじ込み式のものを選ぶと良い。
しっかりねじ込まれているので、不用意に固定モードになることがない。
撮影時に立ち位置の自由度が上がるので、長めのもの(50cm)が使いよい(100cmだと長すぎる)。


【袋蛇腹】
広角レンズを多用する建築撮影には強い味方となるが、
150mm程度までしか撮影できないので、望遠レンズを使う場合は長い蛇腹に交換しなければならない。

ご覧のように、袋蛇腹はあまり伸びない。

【三脚】
軽くて丈夫なカーボン製4段式が携帯に都合よい。
4段式は短く収納でき、高さを細かく調整しやすい。
超重量級のカメラや超望遠レンズを使用する場合は
3段式(4段式よりも足が太い)の大きくて重い三脚の方が有利だが、
私のように機動性を重視した軽いカメラと広角レンズを多用する建築撮影には
カーボン製4段式で充分である。
雲台は頑丈なスリーウエイタイプを選ぶと良い。

【クイックシュー】
頑丈なスライド式着脱のものが使い良い。
私はEBONY SW45に対応したマミヤ旧型クイックシューを愛用している。

本来、マミヤ中判カメラ用のクイックシューなので、重量級カメラ用には少し不安がある。

【シートフィルムホルダー】
FIDELITY Elite」が遮光板の抜き差しがスムーズで、安価な中古も多く出回っているのでお奨めだ。
国産某メーカー製は遮光板の抜き差しが硬かったので使用を止めてしまった。

ホルダーに番記して、その順番に撮影する。

【ロールフイルムホルダー】
機能的に充実したジナー製・トヨ製が使いやすい。
6x12~6x4.5まで5種類のフォーマットを撮影の途中で切り替えられるジナーズームホルダーが便利。

※ジナーズームホルダーでフイルムを無駄なく送る使い方
1.サイズ切り替えダイアルを6x4.5にセットしてフイルムを装填する。
2.Load/ExpダイアルをLoadにして止まるまで巻き上げると、6x4.5サイズに最適な撮影開始位置でフイルムがセットされる。
3.サイズ切り替えダイアルを撮影したいサイズににセットして1枚目を撮影する。(フイルムはそれぞれのサイズに応じた撮影開始位置まで自動的に送られる)
※1枚目の撮影サイズが決定している場合は、サイズ切り替えダイアルを該当サイズにセットしてからフイルムを装填して巻き上げると、自動的にそれぞれのサイズに応じた撮影開始位置でフイルムがセットされる。

4.撮影時、Load/ExpダイアルをExpに切り替える。これを忘れると、巻き止めが機能しないので注意する。
5.次の撮影サイズが決定するまで、巻き上げないようにする。
6.サイズアップする場合は、サイズ切り替えダイアルはそのままにしてフイルムを巻き上げた後、サイズ切り替えダイアルをアップしたいサイズにセットすると、自動でフイルムが送られコマ間が調整される。
7.サイズダウンする場合は、サイズ切り替えダイアルをダウンしたいサイズにセットしてからフイルムを巻き上げる。次に、サイズ切り替えダイアルを前回撮影したサイズに戻してからもう一度ダウンするサイズにセットすることによってコマ間を調整してから撮影する。
8.インジケーターにフイルム残量がcm単位で表示されるので、最後2~3枚の撮影サイズを残量に応じて選択すれば、フイルムを無駄にすることなく撮影できる。このとき、それぞれのコマ間は1cmとして計算する。

9.全コマ撮影完了後、Load/ExpダイアルをLoadにしてフイルムを巻き取る。

【ダークバック】
シートフイルムをホルダーに詰める時に必要。
大き目のLサイズが作業がやりやすくて良い。
撮影時にも念のため携帯したほうが無難。

携帯用のMサイズ、これとは別に自宅用のLサイズを持っている。

【露出計】
入射光・スポット兼用が便利。
入射光で大まかな測定をした後、スポットで各部分を測定して細やかな露出値を割り出す。

新品には手が届かないので、中古の旧製品セコニック L-508 を愛用している。

【メモ用紙(手帳)】
せっかくの大判撮影なので、撮影データも記録しておこう。

【カメラバッグ】
大小2個に分けて左右の肩にかける。
小さいバッグの側に三脚を持つとバランスが釣り合う。
私の場合は、電車に乗ったり徒歩で移動することが多いので
肩にかけやすく、人ごみを歩いても邪魔にならないスリムタイプを愛用している。
あと、A4の資料本やパンフレットが入るポケット500mlのペットボトルが入るサイドポケットがあれば申し分ない。
この条件を満たした現行バッグは皆無なので、エツミ製旧製品を大切に使っている。

【フイルム】
日本製は赤みが強いので青空や建築撮影には向かない。
愛用していたコダックのリバーサルフイルムが絶版になったので、
フジフイルムで最も赤みの弱い「プロビア100F(RDPⅢ)」を使用せざるを得ない。
一定以上の品質でカラー撮影するには、おのずとポジフイルムを選ぶことになる。
私の場合、ネガや白黒で建築を写すことはない。

絶版になったコダックE100G。本当に残念だった。



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大判カメラビギナーです。 (こんにちは)
2014-12-03 01:03:43
どうぞ教えて下さい!

このレリーズはどこの製品ですか?
オススメのレリーズを教えて下さい。
レリーズのうんちく記事の更新をお願いしたいと思います。

とあるサイトにコパル・プレスシャッター#0の新品在庫がありました。これは買っておいてもいいものでしょうか?このままで#0シャッター仕様のレンズにポン付け出来るのでしょうか?

宜しくご指導願います。


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レリーズ (a-ly)
2014-12-03 02:04:19
はじめまして、
写真のレリーズは、銘が無いのでどこの製品か不明です。

個人的に使いやすいと思うレリーズの条件は、
1.長さ50~60cm程度
2.ケーブルが布巻き(ビニール巻きだと経年で硬貨する)
3.固定解除がねじ込み式
以上3点です。
この条件を満たし、製造会社がわかっているものは「ペンタックス ケーブルレリーズ50cm」(生産終了品)です。
あと、上等な製品は大振りで携帯に邪魔なのでお薦め出来ませんね。
中古がたくさん出まわっていますので、店頭で実物を確認して購入すれば良いと思います。
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プレスシャッター (a-ly)
2014-12-03 02:14:38
コパル・プレスシャッターは生産中止なので、必要なら今のうちに購入しておくほうが良いでしょう。
#0シャッター仕様のレンズなら基本的に何でも取り付け可能ですが、例外があるかもしれませんので購入時に確認してください。
※ウイスタ用のコパル・プレスシャッターはレリーズのストロークが深いので専用のレリーズが必要です。
返信する
ありがとうございます。 (匿名)
2014-12-17 16:37:11
回答ありがとうございました。

シャッターは売り切れてました。皆さん見つけるのお上手です。

記事の更新楽しみにしております。
返信する
sinar zoomについてお尋ねいたします。 (木製シノゴ チャレンジ中)
2017-12-01 17:03:56
はじめまして。

建築や風景を35ミリより大きなフォーマットで撮りたいと思い、今年より木製フィールドカメラを使い始めた者です。
当方のフィールドカメラはエボニーではありませんが、その他の道具はこちらのサイトを多いに参考にさせて頂いております。ありがとうございます。

そこで重ねてご教授願いたいのは、sinar zoomについてです。
こちらのロールフィルムフォルダーは引き蓋(蓋というより幕状のものでしょうか?)が左右に開くことによって、フォーマットに合わせた露光が行えるようになっていると、ネット上の画像などから理解しているのですが、その引き蓋の合わせ目から、露光時以外の時に光が入るような危険性はないのでしょうか?
そのようなことが起こらないように、左右に分かれる引き蓋は、閉じた時に充分重ね合わされているのでしょうか。
あるいはネット上の写真に無いだけで、6×12の開口をカバーする引き蓋が別に用意されているのでしょうか。

このあたり、把握できておらず、購入検討滞っております。
ご返答いただけたら幸いです。
宜しくお願いします。
返信する
sinar zoom (a-ly)
2017-12-01 18:06:19
はじめまして。

sinar zoomの蓋ですが、閉じた時に中央部が重なり合うようになっています。重なり合わせの構造もピッタリ密着しています(一眼レフの横走りシャッター後幕・先幕の重なり合わせ部分のようになっています)ので、破損や故障以外では光線漏れの心配は有りません。むしろ、フイルム装填側のモルト劣化や、手動ゆえの閉じ忘れによる露光に気を配るべきでしょう。

購入される場合は、

1.カメラバックの構造がユニバーサル(国際規格)であること。
※ユニバーサル(国際規格)とは・・・焦点版を外してフイルムホルダーを取り付けることができる形状で、上下にホルダーを固定する金具がついている

2.新型の「sinar zoom 2」はユニバーサル(国際規格)に取り付けができませんので、旧型の「sinar zoom」を選ぶこと。
※「sinar zoom 2」はユニバーサル(国際規格)の固定金具を受ける溝が有りません。シートフイルム用ホルダーと同じく焦点版とカメラの間に挟んで使用するようになっていますが、Sinar製以外のカメラでは厚過ぎて挟むことが出来ません。

この2点に注意して下さい。

【参考】
ちょうど旧型の「sinar zoom」がヤフオクに出品されています
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/e253388792
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sinar zoom (木製シノゴ チャレンジ中)
2017-12-01 21:09:48
早速のご返答、誠にありがとうございました。
的確なご説明で不明だったことが理解でき、また今後注意点なども頂いて,
とても感謝しております。

教えていただいたヤフオク出品中の商品、実は当方も気になっていたところで、、、いろいろクリアになって安心して落札致しました。
こちらも心より御礼申し上げます。

では引き続き、こちらのサイトでの近代建築写真、楽しみにしております。益々のご活躍を!

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sinar zoom (a-ly)
2017-12-01 21:48:37
木製シノゴ チャレンジ中 様
お役に立てたようで、嬉しく思います。

sinar zoomがあれば、4x5in.のほかに6x4.5から6x12のパノラマまで撮影できるので、一気に撮影の幅が広がりますね。

今後益々、大中判フイルムの高解像度とアオリ撮影の醍醐味を愉しんでいただければと思います。
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