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92の扉

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「神様のカルテ2」

2010-10-09 | 映画・音楽・書籍等
 巨大な目に見えぬ流れの中で、どうすることもできず、ただ立ち尽くし見守るしかないという感覚は、見つめるものこそ違えど、彼女もまた同じであったのだ。



 発売前日に購入することが出来た「神様のカルテ2」ですが、繁忙状態でなかなか読むことが出来ず、体調を崩したため予定を変更して静養することにした今日になって、ようやく読破できました。

 夏川草介さんの第2作、「神様のカルテ2」は、

プロローグ
第一話 紅梅記
第二話 桜の咲く町で
第三話 花桃の季節
第四話 花水木
エピローグ

という4話+αの構成となっており、信濃大学を卒業し本庄病院へ勤めて5年目を終え、6年目に突入した内科医の栗原一止(いちと)の、春から初夏にかけての経験が語られています。 

 基本的には前作に続き、所謂「夏川草介節」みたいな表現が随所に散りばめられた作品として、とても楽しく心に響く感じで読み進むことが出来ました。

 厳密に言うと、この小説のエピソードには幾つかの無理もしくは省略があります。例えば第四話の大きなエピソードであるヘリポートでの星空の描写ですが、それまで煌々と灯っていたネオンが突然消えたとしても、それに順応して人間の瞳孔が開き暗い星々まで認識できるようになるまで、5~10分ぐらいかかってしまうので、エピソードで語られる1分間で星空を堪能するためには、例えば予めアイマスクをしておく等の工夫が必要です。

 また、首都圏等の大都市と較べれば少ないとは言え、松本市街には病院以外にも光害の源となるネオンや街灯は多数あるワケで、病院の灯りが消えただけで、常念岳で見たような星空を見るのは難しいでしょう。

 でも、そのような描写の有無とか描写の誇張なんて、この小説の大きな流れからすれば些細なことに過ぎないと思います。むしろ、「24時間365日」のネオン(大義名分)のために、星空(という自然)やそれに感動できる人間らしさが見えなくなってしまう側面もある、ということを敢えて象徴的に描いているのではないか、と感じました。

 また、エピローグでの一止の「気付き」は、「神の領分はどうすることが出来なくとも、人の領分は何かしら些細なことかもしれないけど、出来ることがある。それを忘れず生きていこう」というような、夏川さんのメッセージが込められている気がしますよ。



[追 記]

 ちなみに聞いた話では、この「神様のカルテ2」のプロローグとエピローグは、本作の中でも特に夏川先生のイチオシなポイントなんだとか。確かに、デビュー前から夏川先生の文章を読んでいたウチとしても、こういう何気ない中に深い感情を感じさせる短めのお話こそが、夏川先生の魅力の源泉のひとつにも思えます。(2010-10-24:追記)




トラックバック先:
専務取締役杜氏の純米酒ブログ:「神様のカルテ」(2010-11-07)
日の出工房:「神様のカルテ2 / 夏川草介」(2010-11-03)

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「神様のカルテ」(2009-09-21)

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