フランスの詩

宮之森享太 翻訳

ジャンヌ-マリーの両手

2010-11-25 | Weblog
      ジャンヌ-マリーの両手

ジャンヌ-マリーは強い両手をしている、
くすんだ手、夏の日焼けがある、
青白い手、死んだ手のようだ。
― それはジュアナの手か?

それらはつかんだのか、快楽の沼に
広がる褐色のクリームを?
それらは浸ったのか、
月に囲まれ静かな池で?

それらは野蛮な空を飲んだのか、
穏やかに魅惑の膝の上で?
それらは葉巻を巻いたのか、
それともダイヤを密売したのか?

マドンナたちの熱い足々の上で
それらは金の花をしおれさせたのか?
ベラドンナの黒い血だ
それらの手のひらで破裂し眠るのは。

双翅目らを狩る女の手か、
その虫々の夜明けの青い翅は
蜜腺に向って、ぶんぶん飛んでいるが?
毒の上澄みをすくい取る手か?

おお! どんな夢がそれらの手をとらえたのか、
伸びをする時々に?
アジアの驚くべき夢か、
ケンガヴァールの、あるいはシオンのか?

― それらの手は、オレンジを売らなかった、
神々の足の上で日焼けしなかった。
それらの手は、目の見えない重い赤ん坊らの
おむつを洗わなかった。

それはいとこの手ではなく
大きな額の女工らの手でもない、
タールに酔った太陽が、工場が臭う
薪で、その額を焼いているが。

それは背骨を曲げるもの、
手、それらは決して痛めつけない、
機械よりも必然的、
馬一頭よりも強い!

燃えさかる炎のように感動させ、
すべてのその震えに衝撃を与え、
それらの肉が歌うのはマルセイエーズであり
決して憐れみの歌ではない!

それはきみらの首を絞めるかもしれない、おお、
性悪な女どもよ、それはきみらの手を打ち砕く
かもしれない、高貴な女どもよ、おしろいと紅が
いっぱい塗られたきみらの嫌らしい手もだ。

恋するそれらの手の輝きは
雌羊らの頭を回す!
その面白味のある指骨に
偉大なる太陽はルビーをはめる!

下層民の染みは
きのうの乳房のように、それらを褐色にする。
それらの手の甲は、誇りを持った
すべての反逆者が接吻した場所だ!

それらは青ざめた、驚異的だ、
愛が満ちた偉大なる太陽の下で、
機関銃のブロンズの上で
反乱のパリを横切って!

ああ! ときおり、おお聖なる手よ、
きみらの多くの拳にとっての、手よ、そこでは決して
酔いのさめないぼくらの唇が震えているのだ、
明るい輪のなかの鎖が叫んでいるのだ!

そしてぼくらの存在のなかに
不思議な身震いがはしる、そのとき、ときおり
誰かがきみらの日焼けを消したがっている、天使の手よ、
きみらの指々を出血させて!


パリの乱痴気騒ぎ または パリは再び賑わう

2010-11-04 | Weblog

      パリの乱痴気騒ぎ または
        パリは再び賑わう

おお、意気地なしども、さあ着いた! 駅へ流れ出よ!
太陽がその燃える肺でふいたのは数々の大通りだ、
そこはある晩、野蛮人らが埋めつくした。
これが聖なる都市だ、西洋に位置している!

さあ!火事の退潮を防ぐんだ、
河岸通りがある!大通りがある!建物があり
四方に広がる淡い青空に向かっている、
ある晩、砲弾の赤色が星のように点々と光った!

死んだ宮殿を板の小屋に隠せ!
おびえた昔日はきみらの眼差しを一新させる。
これが赤毛女の群れだ、腰をくねらせている。
みんな浮かれろ、面白がれ、狂暴だ!

集まった発情期の雌犬どもめ、濃厚食を食べてるぞ。
金の館の叫びがきみらを求める。ぼれ!
食べろ! ここに歓喜の夜がある、深い痙攣だ、
街はとばりが降りている。おお、悲嘆の酒飲みらよ、

飲め! 強烈で狂った光がやって来て、
きみらのそばで輝く豪奢を探るとき、
きみらは身振りも言葉もなく、きみらのグラスの中に
涎を流すのではないぞ、白い遠方にうつろな目を向けて。

飲み下せ、放蕩尻の女王のために!
聞け、愚かで悲痛なしゃくりの
行為を! 聞け、熱い夜々に、文句だらけのばか者ら、
老いぼれら、滑稽人ら、下僕らが跳びはねるのを!

おお、汚れた心臓ども、ぞっとする口ども、
機能しろ、もっと強く、悪臭の口どもよ!
葡萄酒を汚いけだるさのために、それらのテーブルに. . .
きみらの腹は恥辱でとろけているぞ、おお、勝利者どもよ!

鼻の穴をひらけ、その素晴らしい吐き気で!
強い毒で浸せ、きみらの首の声帯を!
きみらの子どものような襟首に組んだ両手を下ろし、
詩人はきみらに言う、《おお、意気地なしども、狂え!

なぜならきみらは女の腹を掘り返すが、
まだ女の痙攣を恐れているからだ、
その女はわめく、きみらの忌まわしい一腹の息子らを
彼女の胸の恐ろしい締めつけで窒息させて。

梅毒病み、狂人、王、傀儡、腹話術師よ、
売女のパリに何をすることができるのか、
きみらの魂と体が、きみらの毒とぼろ着が?
きみらは振り落とされるんだ、邪険な腐敗物らよ!

そしてきみらがへたばり、きみらの臓物、死んだ脇腹に
泣き言を言い、取り乱して、きみらの金を返せと言うとき、
その赤い娼婦は、戦闘を帯びた乳房をして、きみらの顎然
を尻目に、彼女の険しい両手のこぶしを引きつらせるんだ!

きみらの足が怒りであんなに激しくダンスしたのに、
パリ! おまえは短刀の一撃をたくさん受けたのに、
おまえの明るい瞳にほんの少しの黄褐色した春の
優しさをとどめながら、おまえは横たわっているのに、

おお、悲痛の都市、おお、瀕死の都市、
その頭とふたつの乳房、未来へ押し出され、
おまえの蒼白の上でその無数の扉を開いている、
都市よ、暗い過去が祝福し得るぞ!

肉体、ひどい苦痛のために再び魅了されている、
だからおまえが再び飲むのは恐るべき命、おまえは
感じる、静脈に蒼白の蛆虫が多量に湧き出ているのを、
そしておまえの明るい愛に冷たい指が徘徊しているのを!

それも悪くない。蛆虫、蒼白の蛆虫は
おまえの進歩の息吹を妨げはしない、
吸血鬼どもが女性柱の目の明かりを消さないでいたように、
そこでは星金の涙が青い階段から落ちていた。》

そのようにおまえが覆われるのをまた見るのは辛いが、
ひとつの都市が緑の自然のなかで
これ程くさい潰瘍になったことは決してないが、
詩人はおまえに言う、《輝いているのはおまえの美だ!》

嵐はおまえを至上の詩と称えた。
莫大な勢力の動きはおまえを救っている。
おまえの行為は沸騰し、死は唸る、選ばれた都市だ!
鋭い叫びを寄せ集めよ、無声のラッパの中心に。

詩人は下劣者らのすすり泣き、
徒刑囚らの憎悪、のろわれた者らの叫びを選ぶ、
彼の愛の光は女らを鞭打つ。
彼の詩句は跳ねる、ほら!ほら! 悪党どもよ!

― 社会、すべては回復した、― 乱痴気騒ぎは
かつての喘ぎ声をして、かつての娼家で泣いている。
そして錯乱したガス灯らは、赤くなった壁々で、
どんよりした碧空に向かって不気味に燃えている!