むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㉖

2019-07-22 09:46:52 | 小説
 記念金貨を使って、他人の回線接続を切断するという行為はインターネット世界におけるテロ行為だ。タイトルは納屋。

 昭和九年一月未明。武漢にある農場の、三階建て納屋の三階で小作人が、撲殺されている事件が起きた。公安(中国の警察)は農場の責任者に事情を聞く。責任者はガラスをはめ込んだコインケースのなかにある金貨をながめながら「納屋は一階が選果場で、二階は干し草の置き場で、三階は綿花の置き場になってる」と言う。その場に居合わせた老人が横からしゃしゃり出てきてなにかしゃべったけど、訛りがひどくてよく聞きとれない。公安は読み書きがままならない中高年者から若者を、守る正義の味方を考えていた。必殺わざが国語辞典ビームで、文字列が乱反射した光線のように、怪獣に命中する。怪獣がさっきの老人だ。他に状況描写銃や思考描写砲を考えたが、相手に利用されるだけなのでやめた。そもそもわざわざ正義の味方をつくると、読み書きがままならない悪者の存在理由になる。そういうことならコインの手変わりで宮廷文学魔神をつくった方が退治しやすい。死んだ男は全身にあざがあった。農場に小作人が、二〇人ほどいたが小学生の、息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)のかわりに責任者が「犯人じゃない」と声にならない声でいっている。この周波数でうそがつける人間は存在しないから本当だろう。公安が村の武道場で事情を聞くと、「その農場から二人きてるよ」と言う。ひとりはベテランで、もうひとりは最近入門してきた男で死んだ小作人だった。死んだ男のあざは、武道の稽古が原因だ。村の武道場は飛びはねながら平手で、突く武道スタイルで死体のあざは強く突いてできた物だ。公安がベテランを疑うと、「事件と関係ない」と責任者がいっている。検死の結果を確認したら、あごに小さな切り傷があって、首の骨が折れているという。公安が小学生の息子に聞くと、「納屋で武道の練習をしてて壁づたいに、天井に登って、着地に失敗した。毎日がきらきら輝いてるよ」と言う。小学生の息子じゃなくて、幽霊の方だったがそうらしい。公安は手帳に「浮き民(中華民国の民)」と書いて、きらきら輝いていたのは、誰の金貨か考えた。恐らく華僑のだろう。外国で活躍する中国人には強さが求められる。華僑が外国で最初にやることは、読み書きがままならない、おかしな人がどこでなにをやっているかに着目することだ。そしておかしな人に、まつわる商売に着手する。やがておかしな人を雇って猛獣のように飼い慣らす。華僑の明文化された商売はたいてい成功する。どうやら読み書きがままならない中高年者は外国のおかしな人と一体化しているようだ。



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