こんにちは、テツせんです。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか？
まったく九月もこう暑いと、夏休みを一月のばさないといけませんね。
小学生だって勉強どころじゃないやね！
さて前回は、
戦後以来のアメリカ信仰にもとずいた日本固有の消費行動の病理性についてお話しました。
そのつづきのパート２を書こうとおもったのですが、
雑事で足元をすくわれ、時間が無くなってしまい、次回におあずけとなりました。
まあ、この暑さで、みんな頭がボーっとしているときに、
シビアな話がつづくのもなんですから。・・
そこで、
今回はいきなりですが、すぐれた「戦後詩」を紹介しようと思いたったしだいです。
「言葉でいい表わせないからいわないですませる。これは日常生活者の論理である。」
「言葉でいい表わせるものだけを書くこと、それは中間小説家の論理にすぎない。」
「言葉でいい表わせないから、いわなければならない。これが文学者（詩人）の論理である。」
これは戦後のすぐれた批評家、江藤淳の言葉です。（「作家は行動する」より）
（蛇足ながら、
「言葉は口先だけの記号にすぎないとばかりに、
ああ言えばこう言う式にいい表わせられるのが、
ただ権力にしがみつく無能の政治家である。」
かれの頭には国民への不義や不実という悔悟さえ、はなから抜けおちているのである。）
- さて、「戦争」を体験した人間が、
それゆえに、しいられるようにして詩を書くとき、
詩の言葉の一語一語は、表現することを拒むように、
なにものよりも重くおさえこまれているが、
それにもかかわらず、はげしい怒りと哀しみにみちています。
鮎川信夫の「兵士の歌 」 より、---
「サイゴンにて」
埠頭に人かげはなく
ぼくらの船を迎えるものはなかった
夢にみたフランスの街が
東洋の名もない植民地の海にうかび
カミソリ自殺をとげた若い軍属の
白布につつまれた屍体が
ゆらゆらとハッチから担ぎ出されてゆく
これがぼくらのサイゴンだった
フランスの悩みは
かれら民衆の悩みだったが
ぼくら兵士の苦しみは
ぼくら祖国の苦しみだったろうか
三色旗をつけた巨船のうえにあるものは
戦いにやぶれた国の
かぎりなく澄んだ青空であった
多くの友が死に
さらに多くの友が死んでゆくとき
生あるものの皮膚の下を
いかにして黒い蛆虫が這いずってゆくかを
病める兵士たちは
声なくして新しい死者と語りあった
あかるい微風のなかに
若い魂を解放したカミソリの刃を
ぼくらの細い咽喉にあてたまま
担架をのせた小舟は
みどりの波をわけてゆっくり遠ざかっていった --
田村隆一の「四千の日と夜 」 より ---
「 幻を見る人」の抜粋 --
*
空は
われわれの時代の漂流物でいっぱいだ
一羽の小鳥でさえ
暗黒の巣にかえってゆくためには
われわれのにがい心を通らねばならない
*
「立棺 」の抜粋 --
Ⅱ
わたしの屍体を地に寝かすな
おまえたちの死は
地に休むことができない
わたしの屍体は
立棺のなかにおさめて
直立させよ
地上にはわれわれの墓がない
地上にはわれわれの屍体をいれる墓がない
わたしは地上の死を知っている
わたしは地上の死の意味を知っている
どこの国へ行ってみても
おまえたちの死が墓にいれられたためしがない
河を流れて行く小娘の死骸
射殺された小鳥の血 そして虐殺された多くの声が
おまえたちの地上から追い出されて
おまえたちのように亡命者になるのだ
地上にはわれわれの国がない
地上にはわれわれの死に値いする国がない
わたしは地上の価値を知っている
わたしは地上の失われた価値を知っている
どこの国へ行ってみても
おまえたちの生が大いなるものに満たされたためしがない
未来の時まで刈りとられた麦
罠にかけられた獣たち またちいさな姉妹が
おまえたちの生から追い出されて
おまえたちのように亡命者になるのだ
地上にはわれわれの国がない
地上にはわれわれの生に値いする国がない --
- このようにわたしたちの前には、戦争の時代から現代の世界を貫き通す、
すぐれた詩人たちがいたことを、あらためておもいだしてほしいものです。
もちろん、詩人にとっては、このような詩の抜粋・紹介はそれこそ無礼なことで、
そのことについてはお詫び申しあげます。
ただ、
これを機に、かれらの詩集を手にとってみられることをひそかに願うものです。
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