今年の夏にBS放映されたウルトラマン特集。ウルトラファンが歴代の作品の中でベスト1を投票しランクインしたものを、順次放送された。私は「ウルトラマンタロウ」が好きだった。お人形も買ってもらった(ソフビ製)記憶がある。タロウだけなく、「帰ってきたウルトラマン」・「ウルトラセブン」も見ていた。でも子供のころは、「タロウ」の色んな兄弟やパパやママが出てくるところ、明るくて面白くて大好きだった、セブンは暗くてつまらないなぁ…と思っていた。セブンにがっかりしていた子供の私。
この特集を見て、その理由が分かった。「セブン」と「帰ウルトラマン」特にセブンは、内容が難しいのだ。大人になって見ないとその脚本の深さが味わえないと思われる。特撮というジャンルだけでなく、SF設定で人間を描いた名作、戦闘シーンにクラシックを流すという斬新さは、そのあとアニメや多方面の演出に影響を与えたのかも。
その中でも、見終わった後、あまりの後味の悪さに見たことを後悔し、悲しさが次の日まで続いてしまった…作品。
ファン選抜で堂々第二位にランクイン「帰ってきたウルトラマン」第33話「怪獣使いと少年」
この話はとても有名だと見終わった後に知った。
生きている人間ほど怖いものはない とよくいうが、怪獣よりも人間の行いの怖さを描いている。
人間が集団となった時の残酷さ・恐怖からくる差別意識・そしてそれに繋がる暴力また環境破壊 などそういった負のテーマを真正面から 取り上げている。虐めのシーンは、今のテレビなら放送禁止レベル。私も見ていて胸が悪くなるほど陰湿で、これが子供番組なのかと衝撃を受けた。それを今放送したBSは、すごい。教育上この番組をみせられないという声があっても、おかしくないから。
差別された少年が、唯一パンを買うシーンのみが人の優しさを見せたが、そのあとこれだけ人は残酷なものという物語が展開されるし、それはエンディングまで続く。
ではなぜウルトラマンは戦ったのか?ウルトラマンは、同じ宇宙人でもある怪獣と戦うことそのものが使命だからだ。人間の善悪はウルトラマンにとって意味をなさない。それはとても悲しいことで、ウルトラマンと怪獣の戦闘シーンにも、いつもにはないやりきれないような悲しみが演出されていると思う。ウルトラマンの戦闘シーンまで、やめてといいたくなるような…感じ、とても残酷に見えてしまう。怪獣を倒してたたずむウルトラマンが何を思ったのか…悲しかったのか…もしかすると何も思わなかったのかもしれない。その何も思わない姿を、見せたかったのではないかなぁ
ウルトラマンは地球を救っているだけれど、地球人とは線を引いている、客観的な立場から怪獣と戦うヒーロー。
人間は地球を汚してしまったので、いつか地球に住めなくなる、優しい宇宙人を殺してしまう残酷な身勝手な人間より、宇宙人になったほうがいいと思う少年。その少年に夢も希望も与える事のできないウルトラマン。
全く悲しくて、見終わった後翌日までどんより(笑)してしまった。ただ教育的に見せられないというのは、逆差別のような気もする。1年に1度くらい、第33話「怪獣使いの少年」を放送したほうがいいかもしれない。誰にもある自分の差別意識を思う意味でも。