泣けた…(´;ω;`) ポアロで泣けた…
「オリエント急行殺人事件」はミステリの傑作品の一つ。日本でも2年ほど前に三谷脚本でドラマ化されたが、本家イギリスのポアロ制作は、やはり正統派といった出来栄えで素晴らしい…。
私は映画版も何度か見たが、それよりも優れているように思えた。映画版を見ていないと、人物関係や動機の複雑さで、1時間半では難解と感じるかもしれないが、それは、「名作」なので。「まぁ分かっているよね?」みたいな感じで進んでいくのがいい(笑) 無駄なシーンや台詞、一切ない。全てシンプルでかつラストの謎解きに繋がる部分、ミステリドラマの見本みたいなもの。また昨年放送された「そして誰も」もそうだけれど、イギリスのミステリドラマは、ミステリそのものより、人の内面・苦悩といったものにスポットライトをあてて終わらせるのが、いいなぁと思う。
このオリエント急行では、ポアロの人間的苦悩を冒頭シーンで取り上げる、それを最後まで見せていく。ミステリの謎解き部分だけが面白いのではなく、特にポアロという人間のキャラクター故の苦悩、そこを丁寧に描いている部分、何といっていいのか分からないが、結末をハッピーエンドではなく、ほろ苦さをもって見せたのは現代的だと思う。
罪は死をもって償うべきか否か…という問題、ドラマでは宗教に絡ませて語らせているが、難しい問題、日本でもよく死刑廃止にすべきかどうかで議論が二分する。
ポアロは神の意に任せるという立場をとっている人で、どんな理由があろうとも殺人は、正当化されないという主義。が、そのスタンスを崩さぜルを得ないような、あまりにも悲しみの深い事件に出会ったときは、どうしたのか?
殺人者はポアロに告白する。「正義が否定された時、人は弱くなる。神に見捨てられ不毛の地にいると感じるんです。神に問いました。みんなもそうでしょう。どうすべきかと。その答えは、正しいことを成せと。それでまた強くなれると思いました」
ポアロは殺人者に問う
「(強く)なれましたか?」
「…でも、正しいことをしたんです」
ポアロが重い十字架を背負う覚悟をするきっかけとなる台詞。ポアロ自身の言葉ではなく、殺人者としてのセリフがここまで印象に残るのは、やはり傑作だからかな。デビッド・スーシェの名演が光るラストの表情といい、ドラマシリーズ最高作品だと思う。