第二章
私は朝子の本能だ。私は朝子が母親の胎内に生まれた瞬間から、朝子の精神の中で
ぬくぬくと暖められて生活していた。
朝子は私が言うのも変だが、とても秀逸だった。本能の私が秀逸だから、朝子が秀逸だったのか、
朝子が秀逸だったから、本能の私が秀逸だったのか、今ではもうわからない。
と言うのも、朝子には悪霊が取り憑いてしまったからだ。
私はもうすでに、朝子のものではなく、悪霊の手の中にある。悪霊に命ずるままに
朝子を動かしている。
子供の頃の朝子はよく泣き、私をはらはらさせた。
母親がレズだったので、霊界の朝子の守護神は私に霊感を授けた。
運命はすべてバランスによって成り立っている。
この世のすべてのバランスは、現実社会と霊社会のバランスで収支がゼロになる。
朝子の周りで、小さな亀裂が霊界に起きると、私が朝子に教えていた。
朝子は私の発したテレパシーを受け取り、上手に立ち振る舞いをして、少女から大人の女に成長していた。