夜がまだ明けやらぬうちに
冬の初めの低く垂れ込めた雲から
雨が降り出していた
すでに、朝はどこか緞帳の奥へ押しやられてしまったのだ
こんな、寒々とした寂しい夜明は、
詩を読まなければならない
僕は、昨夜から布団にくるまり、すでに考え疲れていたのだ
ただ、朝が来れば、マルテみたいに安心して眠れると想像していた
ひとりぼっちな僕は、不思議な眠気の中で、夜行列車から初めての土地へ
降り立った旅行者の戸惑いを知っている
朝の光が、暈しすぎて、新鮮さの心持ちを、大事にしたいのだ
だけど、その土地の人にとってみれば、いたって普通の朝が
ただ、いつもの通りやって来ただけなのだ
そして、誰かに声を掛けようとする間もなく
白々とした日の光が、夢見心地から僕より先に小鳥たちを醒ましてしまう
旅人にとって、小鳥はもう友達ではない 不安を駆り立てる道化師
は、いつも一瞬に旅行の楽しい目的も見えなくしてしまう
こんな朝もまた、詩を読むしかないのだ
糸状の月の端を瑠璃から透明な青磁に変えてゆく
一時を僕は夜通し待ちくたびれていたのだから
すると、不思議と安心して眠れるのだ
ふとせつない夢の中へ
引き込まれるのを楽しみながら