◇幻想詩人YO=YO◇    □Visionary Poet Yo=Yo□

【死刑囚】エリク君が覚醒するような詩・死刑への依存と甘え なお著作権は放棄しておりません、無断転載はお断りいたします

 ◇ 手 ◇

2010-03-27 00:22:03 | 
手よ、私のおまえにしてやったことのいかに少なかったことか、
そうさ、私はお前に目もくれてやらぬ日の多かったこと。
私の時間が、私の前にうつろに横たわり、嘆かわしく、私をみつめる。
手よ、私は書物の活字の中から、お前を何時か見つけだすだろう。
そうさ、ふとお前を見やった時、私は気付くのだろう。
永い永い間、本を読みながら、お前は私の為に頁をめくり、
ペンを取り、美味しい食べ物を
口に運んでくれたことか。
私はその時、お前が語るのを見た。
時の濁るのを見た。
私がここにいるのは、お前とともにいるからだ。

 ◇ 春の闇 ◇

2010-03-25 22:38:38 | 
4月になると、新しい畳の部屋に暮らすだろう
その畳の匂いや
黴が一度生えて擦って落とした
壁紙や
荷物も何もない部屋に暮らすだろう
天井や柱に染みついた
煙草の匂いや、誰かの脂の匂いや
神経質な隣人の掃除機の音に悩まされて
暮らすだろう
 
機械の身体が欲しい
油を差して
油を差して下さい
もう1と2と3の間に
関数は存在しない
 
4月になると、申し訳ないと春の闇が
誰も知らない世界が、僕を押し続けるだろう
咳をするから
身体から、血が流れてゆく
 
僕は、再生しないテープなんだ
誰か僕を巻き戻して
傷が付いてさっきから
キュルルルって音を立て続けてる

◇ 夕日の漸化式 ◇

2010-03-02 01:36:47 | 
夕日の差す人ごみの中で
偶然君を見つけた時

僕は予備校の暗いビルから一歩踏み出したばかりだった
ほとんど足取りも不自然なくらいに
地面と離れて宙を浮く気がして

君の髪の毛一本一本が
透明なこげ茶に反射して見分けでき

あのさびしそうな目の輝きのうしろには
巨大な夕日が
冬の日の完全な円い明るい橙色を発していた