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夏の高校野球100回 ~甲子園で100年も国民的行事が続いた

2018年08月07日 | 体験・イベント

夏の高校野球が100回目という偉大な節目を迎えました。全国レベルで行われる野球の競技大会としては大学・社会人・プロよりも早く、第1回が行われたのは1915(大正4)年です。大正時代から昭和初期にかけて、多くの種目で全国レベルの競技大会が始まっていますが、夏の高校野球は何といっても「国民的行事」として最大の人気です。

開会式の入場行進のスタート地点となるライト側のゲートには、大会の回数の数字が大きく掲げられます。今回は数字が3桁になったこともあり、ひときわ大きく輝いて見えました。2018年の夏の甲子園も、とびきりの青空の下で始まりました。



1915(大正4)年は、明治維新から半世紀ほどひたすら走り続けてきた日本という国家が、束の間の幸福を感じられた時代でした。日露戦争の勝利と不平等条約の改正で一等国への仲間入りを果たしたという国民の自負感に加え、第一次大戦特需による空前の好景気が生活に余裕をもたらし、新しい娯楽や文化が軒並み人気を博すようになりました。

スポーツ娯楽としての野球の人気は大学から火が付きました。1903(明治36)年には早慶戦が始まり、応援の過熱で対戦がしばらく中断するほどでした。東京六大学のリーグ戦は1925(大正14)年に始まり、1927(昭和2)年からはラジオの実況中継も行われました。1936(昭和11)年からはプロ野球のリーグ戦も始まり、野球は戦前にすでに大衆の娯楽としてすっかり定着します。



第1回の夏の高校野球は、東京での学生野球の人気の高まりに目を付けた大阪朝日新聞が企画しました。甲子園球場ではなく、現在の阪急電鉄が1913(大正2)年に建設していた大阪・豊中グラウンドで行われました。豊中グラウンドは開通したばかりの現在の阪急宝塚線の集客のために建設され、当時最新の設備を誇りましたが、あまりの人気に観客をさばききれないようになります。

1917(大正6)年の第3回大会からは阪神電鉄が1916(大正5)年建設した鳴尾球場に会場を移します。しかしこの鳴尾球場でも観客をさばききれなくなります。夏の高校野球の円滑な開催を目的に1924(大正13)年に観客5万人を収容できる現在の甲子園球場が建設されます。プロ野球が行われる前からこれだけの規模の球場建設に踏み切ったことからは、いかに当時の高校野球人気が物凄かったがうかがえます。



最寄りの阪神電車・甲子園駅を降り、国道43号線の高架をくぐると美しい緑のツタに囲まれた球場が目に飛び込んできます。日本ではドーム球場が多くなったこともあり、球場を訪れてもビルの中に入るような感覚しか持てなくなっています。甲子園の緑のツタの壁は、全国から応援に来て甲子園を始めてみる人に対し、「これぞ聖地」と思わせるような強烈な第一印象を与えることでしょう。

日本の野球場もデザイン面には配慮をお願いしたいところです。球場のデザインだけでワクワク感を高められるのは、現在は甲子園と広島のMazda Zoom-Zoom スタジアムくらいと思います。今後予定されている北海道日本ハムの北広島の新球場と、神宮球場の移転建替には大いに期待したいところです。



甲子園球場は、グラウンドは内野が土、外野は天然芝、観客席の屋根は内野席にしかありません。MLBの本拠地球場に多く見られる古典的な野球場のスタイルです。真夏の昼間に開催される高校野球では熱中症が心配されますが、そこは甲子園名物「かち割氷」がサポートしてくれます。

砕いた氷をビニール袋に入れただけのきわめてシンプルなものですが、これが実に味があります。購入して15分ほど放置すると氷が溶けて絶妙な温度の氷水になります。ナイターの球場ではやはりビールですが、カンカン照りの昼間の観戦にはかち割氷が最高のお伴です。このストイックなまでの感覚は、実際に甲子園で酷暑の昼間に観戦しないとわからないと思います。



第100回の記念大会ということで期間中毎日、ゆかりのある出場球児による始球式が行われます。初日は松井秀喜氏でした。くしくもくじ引きで開会式直後の第一試合に後攻で、母校の石川県・星稜高校が登場します。伝統の黄色のユニフォームの先発投手を横にして、大先輩としてとても緊張したようです。

日本のプロ野球とMLBで偉大な足跡をのこしたスーパースターが投じた一球は、ワンバウンドで明らかにストライクではありませんでした。「甲子園には魔物が棲んでいる」と始球式後のインタビューで語った氏のコメントが実に印象的でした。



甲子園球場の外野レフトスタンド外周の1Fには、高校野球と阪神タイガースの歴史を綴った博物館・甲子園歴史館があります。日本人の心をとらえた100年の野球の歴史が凝縮されています。

【公式サイト】甲子園歴史館

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



記憶に残る名勝負が一冊に凝縮


第100回 夏の甲子園(全国高等学校野球選手権記念大会)
【大会公式サイト】http://www.jhbf.or.jp/sensyuken/2018/
【主催メディアによる大会公式サイト】https://www.asahi.com/sports/koshien/

主催:日本高等学校野球連盟、朝日新聞社
会期:2018年8月5日~21日(準々決勝翌日休養日1日含む、雨天中止は翌日順延)
原則休催日:準々決勝翌日休養日(雨天中止翌日順延)

阪神甲子園球場
【公式サイト】http://www.hanshin.co.jp/koshien/



おすすめ交通機関:
阪神電車「甲子園」駅下車、徒歩2分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
JR大阪駅(梅田駅)→阪神電車→甲子園駅
【公式サイト】 アクセス案内

※JR甲子園口駅からは徒歩30分以上要します。
※この施設には駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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