れいこがお出迎え。
京都文化博物館で、近代日本画家のコレクションでは定評のある広島県のウッドワン美術館コレクションによる「絵画の愉しみ、画家のたくらみ」展が始まった。
ウッドワン美術館は、建材メーカーのウッドワンが所蔵する美術品を公開しており、幕末明治の薩摩焼・マイセン磁器・アールヌーヴォーのガラス作品のコレクションでも名高い。今回の展覧会は、幅広い近代日本画家のコレクションを活かし、同じ主題やモチーフの絵を見比べることによって、画家の個性や作品に込めた思いを愉しめるよう構成されている。「見比べる」という提案がとても面白い。
ウッドワン美術館の目玉作品である岸田劉生の「(毛糸肩掛せる)麗子」も来ている。重要文化財の東京国立博物館蔵「麗子(微笑)」よりも1年早い作品で、笑ってはいないが無垢のない幼子の眼が一点を見つめている構図がすがすがしい。東博「麗子」の、幼子というよりも仏像に見えるような悟りを開いた微笑の表情とは対照的で、我が子の成長への思いを絵に込めた岸田劉生が偲ばれる。
おかっぱの「れいこ」は会場のところどころでキャラクターとなって様々な案内を行っている。なお名前が「れいこ」の方は、チケット売り場で身分証明書を見せれば子供料金に割引になる。粋な計らいだ。
プルダウンメニューから画家と作品名を選択し所蔵作品を閲覧できます。
28歳で早世した伝説の洋画家、青木繁の「漁夫晩帰」は秀作だ。一日の仕事を終えて帰る漁師たちの一瞬の疲れた表情が大画面いっぱいに描かれている。ロマン主義画家と言われるように、タッチにはとても迫力がある。彼の代表作、ブリヂストン美術館蔵「海の幸」と見比べるよう展示されている。
会場の最後には、ウッドワン美術館が持つ古典作品の逸品である重要文化財・伝周文「四季山水図」が六曲一双(六つ折の屏風が左右ペア)サイズで強烈な存在感を示している。周文(しゅうぶん)は相国寺の画僧で室町時代を代表する画家、雪舟の師としても知られる。彼の作品は真筆として一点も認定されていないにもかかわらず、伝(でん)周文=周文の作品と昔から言われている作品が、国宝にも2点指定されている。中国で仙人がいる霊峰の四季の移ろいを表現した圧巻の作品、空間の使い方がとても見事なので少し離れて見ることもおすすめする。
※四季山水図の展示は10/3~11/5まで、11/7以降は横山大観「霊峰不二」に入替予定
森に囲まれたリゾート地にウッドワン美術館はある
ウッドワン美術館には、近代の日本画家のコレクションはもとより、きらりと光る逸品も多い。2017/11/17~12/24には国宝の彦根屏風とそっくりな逸品が公開される。江戸時代初期の風俗画ファンには見逃せないだろう。日本でもトップクラスの「行きにくいがすごい美術館」だ。
日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。
ウッドワン美術館所蔵の近代日本人画家のコレクション図録
京都文化博物館「ウッドワン美術館コレクション 絵画の愉しみ、画家のたくらみ -日本近代絵画との出会い-」
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/woodone/
会期:2017年10月3日(火)~12月3日(日)
原則休館日:月曜
※会期中に一点展示品の入れ替えがあります。
ウッドワン美術館
http://www.woodone-museum.jp/index.html