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「史上最大」に納得、今しかない ~東京国立博物館「運慶」展

2017年11月10日 | 美術館・展覧会

秋の上野は大物展覧会がまさに目白押し

 

東博で「史上最大」と名付けられた「運慶」展が行われている。興福寺中金堂再建記念と副題がつけられているように、興福寺にとって悲願だった300年ぶりの中金堂の再建が来年完成するタイミングに合わせて企画された。興福寺をはじめ運慶作品を所蔵する寺や美術館の協力で、31体と考えられる運慶作品のうち22体が一堂に会しており、「史上最大」というネーミングにも納得できる。

 

興福寺からは、日本美術の最高傑作と言ってもよい「無著・世親菩薩立像」(むじゃく・せしんぼさつりゅうぞう)が東京にお目見えする。等身大より少し大きい存在感のある彫刻だが、何といってもその表情が秀逸だ。一点をじっと見つめている兄の無著の目はとても穏やか、積み重ねた齢を通じてかけがえのない智恵を得ていることをうかがわせる。一方弟の世親はまだ壮年の面立ち、いかなる迷いにも打ち勝つような力強い目線で、こちらも一点を見つめている。二体ペアで人間の一生のあるべき姿を絶妙に表現しているようで、ミロのビーナスにも引けを取らないワールドクラスの彫刻の傑作だろう。

 

無著・世親は普段は北円堂におられ、毎年春と秋に2週間ほどずつ公開されているが、運慶展でお会いできる魅力は何といっても「360度」拝観。仏像は寺に安置されている場合、ほとんどは背後から拝観できない。最近の美術展では、仏像や工芸品などの立体作品は360度拝観できるよう展示している場合が多く、加えてLED照明により作品の劣化を抑えて上で見やすいようきれいに光をあててくれている。きれいに見やすく仏像を拝観できるのは、美術展ならではと言える。

 

 

無著・世親菩薩立像(興福寺蔵)

 

 

 

伊豆韮山にある願成就院(がんじょうじゅいん)の「毘沙門天立像」も素晴らしい。北条氏の氏寺として創建された際に運慶に発注されたもので、東国武士に愛された力強い作風を今に伝える名品だ。像の表面の艶は美しく、保存状態が良いことをうかがわせる。顔立ちは無敵の横綱のように隙がなく、大きめの玉眼も守護神らしい威厳を感じさせる。加えてとてもイケメンだ、東国の若武者をイメージしたのだろうか。

 

毘沙門天立像(願成就院蔵)

 

 

 

奈良の円成寺「大日如来」、興福寺の「天燈鬼・龍燈鬼」、東大寺の「重源上人」、高野山の金剛峰寺の「八代童子」など、他にも運慶と慶派の秀逸な作品が、とてもご紹介しきれないくらいに、多く見事にラインナップされている。

 

今年2017年の春には「快慶」展が奈良国立博物館で行われていた。こちらも素晴らしい展覧会であったが、運慶展を見ることで、快慶の静寂・運慶の躍動という鎌倉リアリズムの両巨匠の魅力をあらためてかみしめることができた。

 

会期はあと少し、11/26(日)まで、まだの方ももう一度見たい方もお急ぎを。

 

 

 

 

運慶ファンクラブ「運慶学園」

運慶展を見終えるとQRコードから卒業証書をもらえる

 

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

運慶の生涯がさいとう・たかお劇画に、ゴルゴ13のように迫力充分

 

 

東京国立博物館 興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」

http://unkei2017.jp/

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1861

主催:東京国立博物館、法相宗大本山興福寺、朝日新聞社、テレビ朝日

会期:2017年9月26日(火)~11月26日(日)

原則休館日:月曜日

※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。

 

 

 


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