国宝展スタート時から1ヶ月でこんなに色が変わる
2017年秋の美術展の横綱、京都国立博物館「国宝展」もラストスパートのIV期目に入った。10月上旬に展覧会が始まってから1か月強ほど過ぎたが、京博の周辺はすっかり秋モード。夕方には暗くなり、会場の平成知新館のライトアップが幻想的だ。
近年は桜や紅葉を中心に季節の花が美しい時期には、全国的に夜間ライトアップをするところが多くなった。京博から近い東山の紅葉が美しい寺院も例外ではない。歴史を重ねた古建築と、紅葉の赤と黄色の色づきが、夜空のキャンバスに見事に投影される。国宝展は16:00以降には混雑が避けられることが多いようなので、京博には遅めに訪れた後、ぜひ紅葉ライトアップを。11月の京都は見どころが目白押しだ。
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京都国立博物館 @kyohaku_gallery
最終IV期も絶品が勢ぞろいしている。曼殊院蔵「不動明王像」は、身体の立体感と躍動感の表現が同時代の平安時代の仏画の中でもとても個性的だ。三井寺に現存する国宝仏画を模写したものだが、模写も国宝になっているという驚きの作品である。真っ直ぐ正面を向いて立っている姿で、他には何も描かれていない。周辺に設けられた余白が主役の不動明王を引き立たせており、構図も面白い。腕や足はサイボーグのように力強く、すぐに動き出しそうに見える。金色のお姿を描いたことから、肌にはほのかに黄金色が残っており、「黄不動」と呼ばれる所以でもある。どこか人なつっこい明王だ。
「近世絵画」展示室では、1914(大正元)年に西本願寺から根津嘉一郎が取得して以来、一度も京都で展示されたことはなかった尾形光琳「燕子花(かきつばた)図」が「里帰り」している。毎年春に根津美術館で公開されてはいるが、京博で見ると、どこかより輝きを増しているように見える。
燕子花図の左隣には与謝蕪村の「夜色楼台図」。掛軸では非常に珍しい横長に冬の夜の街が描かれている。墨だけで雪と冷たい空気感を表現しているが、家々から漏れる灯火が実にこの絵に温かみを添えている。冬の床の間に飾られているととても心が落ち着くのではないかと感じる。
ちなみに燕子花図の右隣には円山応挙「雪松図屏風」が、まばゆいばかりの存在感を示している。まったくオーラが異なる江戸時代の3つの逸品を見比べることができるこの部屋は、本当にかけがえのない空間だ。
1Fの仏像展示室では、大阪・天野山金剛寺の大日如来像と不動明王座像が、京博ではこの国宝展で見納めになる。平成知新館の平常展でもながらく続けて展示されており、密教ですべての仏の原点とされる大日如来の巨体が私は好きだった。金剛寺の金堂の修理が終了するため、本来の居所にお戻りになる。
お別れを言っていただければありがたい。
京都人の心をくすぐる「里帰り」のコピー
国宝展はあと10日ほど、まだの方もリピートの方もお早めに。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。
日本の文化行政を考えさせられる一冊、国宝もメンテナンスしないと朽ちていく
京都国立博物館 開館120周年記念 特別展覧会 国宝
http://www.kyohaku.go.jp/jp/special/index.html
会期:最終IV期2017年11月14日(火)~11月26日(日)
原則休館日:月曜
※展示作品には展示期間により異なります。事前にご確認ください。