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逸翁美術館・池田「応挙は雪松、呉春は白梅」展 ~二人の個性は素晴らしい

2018年01月20日 | 美術館・展覧会


2009年オープンの新館は現代的なデザイン

大阪・池田の逸翁美術館で「開館60周年記念展 第五幕 応挙は雪松、呉春は白梅。」が始まりました。逸翁美術館は、阪急東宝グループの創始者・小林一三のコレクションを所蔵・展示する美術館です。「逸翁」とは、一三の雅号(がごう、本名と別につける風雅な相性)です。

開館60周年の昨年から今年2018年5月にかけて、ジャンル毎に6回に分け、コレクションの全貌を公開する展覧会を行っています。5回目は江戸絵画の円山派・四条派で、展覧会のチラシにもなっているように応挙の「雪中松図」、呉春(ごしゅん)の「白梅図」に見応えがあります。

【公式サイトの画像】 展覧会チラシ

円山派は、円山応挙を祖とし、弟子には長沢蘆雪・呉春らがいます。応挙は、伊藤若冲・与謝蕪村・池大雅・曾我蕭白ら同時代の京都で活躍した絵師の中でも、京都の町衆に圧倒的な人気がありました。見た目に忠実で遠近法をも用いた表現はわかりやすく、斬新だったのでしょう。知名度の高さから、応挙の弟子は数百人もいたという説もあるくらいです。

応挙が活躍した江戸時代半ばの18世紀後半以降、京都画壇はほぼ応挙の弟子たちによる流派で占められるといっても過言ではありません。竹内栖鳳・上村松園ら近代の画家を経て、現在まで連綿と続いています。

四条派は、応挙の弟子たちの中でも特に大きな流派でした。祖である呉春のもとにこれまた多くの弟子が集まったからです。彼らは四条通近辺に居を構えたことから「四条派」と呼ばれます。

呉春は当初は文人画の巨匠である与謝蕪村の弟子でしたが、蕪村の死後に応挙と出会います。蕪村のユーモアのある表現に応挙の写実性をミックスした画風を確立していき、応挙の死後は京都一の人気絵師となります。目の肥えた京都の町衆は、一世風靡した応挙の写生画に遊びの要素を加えた呉春を、次世代のスターとして支持したのです。

展覧会では、順路前半に円山派、後半に四条派の作品が展示されており、一括して語られがちな両派を対比できるよう構成されています。まず応挙の「月雁図」が目に留まります。飛んでいた雁が、飛行機の着陸のように、首を水平にして尾と足から着水する瞬間を描いたものです。実際の雁もこのように着水するため、応挙は徹底して観察したと考えられます。とにかく写生にこだわった応挙の個性がとてもよく出ている作品です。

応挙の「雪中松図」を見ると、「どこかで見たことがある」とお感じの方が多いでしょう。三井記念美術館蔵の国宝「雪松図屏風」の習作(練習に描いた作品)です。習作も松の枝についた雪の質感の表現はとても見事です。

「雪中松図」の向かい側には、呉春の代表作の重文「白梅図」があります。藍色に染めた糸を平織した画面に描いており、縦方向の織り目が夜のとばりを感じさせます。白梅は小さいながらもつぼみ・開花が丁寧に描き分けられており、幻想的ですがどこか洒脱さも感じさせます。

呉春の弟子で、実弟でもある松村景文(まつむらけいぶん)の花鳥画もおすすめです。写生画に耽美的な要素が加わっていることがわかります。他にも、円山派の長沢蘆雪・渡辺南岳・山口素絢、四条派の岡本豊彦・横山清暉らが出品されており、絵師たちの個性の違いと逸翁コレクションの奥の深さがよくわかります。

応挙は亀岡の農家の次男坊出身で、生真面目で娯楽には無頓着でした。一方の呉春は京都で小判を鋳造ずる金座の家に生まれた裕福な都会の“ぼん”で、俳諧・謡曲などもたしなみ社交的でした。両社の個性の違いはとても面白いです。呉春は一時期池田に滞在しており、一三も何か縁を感じたのやもしれません。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



逸翁と福岡市美術館が所蔵するほぼ同世代の二人の名経営者のコレクション集


逸翁美術館 「開館60周年記念展 第五幕 応挙は雪松、呉春は白梅。」
http://www.hankyu-bunka.or.jp/itsuo-museum/exhibition/1792/


主催:阪急文化財団
会期:2018年1月20日(土)~3月11日(日)
原則休館日:月曜日

※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。


 


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