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京都国立近代美術館「ゴッホ展」 ~展示作品はともかく構成が素晴らしい

2018年01月21日 | 美術館・展覧会


京都・岡崎にゴッホのシンボルカラー黄色が映える

京都国立近代美術館で「ゴッホ展」が始まりました。「巡りゆく日本の夢」とサブタイトルがつけられているように、ゴッホが憧れた日本、日本人が憧れたゴッホ、それぞれの関連性を丁寧に展示しているのが特徴です。

ゴッホ作品はともかく、ゴッホが影響を受けたと推測される浮世絵やゴッホに憧れた日本人画家の作品、また様々な手紙や書籍など、展示品はとても多岐にわたっています。

これら展示品は、ゴッホのコレクションで世界的に名高いオランダのファン・ゴッホ美術館とクレラー・ミュラー美術館、浮世絵コレクションで世界有数のパリのギメ東洋美術館など、世界中の美術館やコレクターから集められており、とても充実した展示内容になっています。

この展覧会は、ファン・ゴッホ美術館との「国際共同プロジェクト」です。最近の展覧会ではよく見られるようになった外国の美術館・博物館との共同企画の例です。昨年2017年では、あべのハルカス美術館の「北斎展」が大英博物館との共同プロジェクトでした。美術ファンが世界中で増えており、目も肥えてきていることから、より質の高い展覧会を目指す流れがグローバルに起こっていると言えます。

展示は物語のように時間の経過に沿って構成されています。物語はパリでの浮世絵との本格的な出会いから始まります。1886年に弟テオを頼ってパリにやって来たゴッホは、日本美術商として著名だったサミュエル(本名:ジークフリート)・ビングの店で大量の浮世絵を見る機会を得ます。

パリ時代の展示作品では、日本特集の雑誌の表紙をモチーフにした「花魁」で、着物の図柄をとても器用に描いていることが目を引きます。「カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ」は、筆のタッチが繊細で、“ゴッホはこんな絵も描いたのか”と感じさせる作品です。

またサミュエル・ビングが発行した雑誌「芸術の日本」は、19世紀末の欧州人にとっての理想の日本像がとても美しく表現されています。100年以上前の雑誌ですが、とても保存状態がよく残されています。

【公式サイト】 紹介ゴッホ作品の画像

1888年にアルルに向かうのは、そこに日本のような理想郷があると考えたためでした。ゴッホの代表作「寝室」は、アルルでゴーギャンと共同生活していた「黄色い家」の中のゴッホの寝室です。鮮やかな色彩を平坦に色づけする浮世絵の手法で表現されています。「タラスコンの乗合馬車」も同様に平坦に描かれていますが、主題である馬車がプラモデルのように愛らしく見えてとても印象的です。

ゴッホの絵は1890年に亡くなるまでほとんど売れませんでしたが、20世紀になると売れ始めます。日本国内でも武者小路実篤らの白樺派が熱心に紹介したことでブームが起こりました。1920年代以降、ゴッホの終焉の地・オーヴェールで、ゴッホの主治医だったガシェの家に残されたゴッホ作品を見るために日本人画家が次々と訪れます。

展覧会では、このガシェ家訪問者の芳名録が展示されています。佐伯祐三ら洋画家だけでなく、土田麦僊・橋本関雪ら日本画家の名前も見えます。歌人の斎藤茂吉も訪れています。現代に続く日本人のゴッホ人気が始まった100年前の熱気がひしひしと伝わってきます。


「森村泰昌、ゴッホの部屋を訪れる」
http://www.momak.go.jp/Japanese/news/2017/gogh-morimura.html

展覧会場の1つ上の階では、実物大のゴッホの寝室のレプリカが展示されています。自らの顔写真を西洋名画の自画像あてはめる作品で知られる森村泰昌の、映画の撮影用に造られたセットです。実によくできています。この作品は写真撮影OKですので、様々なスナップを楽しんでください。京都展限定です。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



扱いに便利な貼ってはがせるシール式ポスター


京都国立近代美術館 「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2017/423.html
http://gogh-japan.jp/

主催:京都国立近代美術館、NHK京都放送局、NHKプラネット近畿、京都新聞
会期:2018年1月20日(土)~3月4日(日)
原則休館日:月曜日
※一部の展示作品は、前期(~2/12)と後期(2/14~)で入れ替えがあります。
※この展覧会は、北海道立近代美術館と東京都美術館(いずれも終了)から巡回してきたものです。
※京都展終了後は、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館に巡回します。



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