日本での開催は東洋陶磁だけ
大阪・中之島の東洋陶磁美術館で「イセコレクション-世界を魅了した中国陶磁」が始まった。
イセコレクションは、日本やアメリカ合衆国で鶏卵製造のトップ企業「イセ食品」のオーナー経営者・伊勢彦信氏が、19世紀のフランス絵画、琳派、陶磁器など幅広く集めたもので、世界的にもよく知られている。
この展覧会は数ある氏のコレクションの中から中国陶磁にスポットをあて、フランスと日本を巡回して行われる。フランス会場はパリのギメ東洋美術館、日本人には知名度は高くないが、ルーブル美術館の東洋美術部門の分館の役割を持ち、日本を含めたアジア美術の美術館としては世界的に著名だ。
ギメ美術館では「日本人の美意識によって選び抜かれた中国陶磁」と紹介されており、イセコレクションが確かな目で愛情を注いで収集した「唐物」の逸品が勢ぞろいした。フランス展終了後の日本展は東京では行われず、大阪だけの開催だ。
会場となる大阪市立東洋陶磁美術館は安宅コレクションが母体となっており、世界トップクラスの中国・韓国陶磁器のコレクションを誇る。館による中国陶磁への愛情が日本展の会場として選ばれたのであろう。イセコレクション展と同時に平常展も見ることができるため、遠方からでもわざわざ足を運ぶ価値がある。
東洋陶磁美術館のある大阪・中之島は、水辺の都市空間が美しい
展覧会チラシに採用されている「粉彩花樹文瓶(ふんさいかじゅもんへい)」は、清朝最盛期の雍正帝の治世の景徳鎮窯の作品。細く引き締まった瓶の頭部が実にスタイリッシュで、かすかにグレーがかった地肌の白色が、描かれた紅白の花を引き立たせている。
他にも名品が多い。一時期安宅コレクションだった重文「飛青磁瓶(とびせいじへい)」は、静かで落ち着いた青磁の地肌に鉄分の斑点が散るデザイン。東洋陶磁美術館が誇る国宝「飛青磁花生(はないけ)」に引けを取らない気品のある存在感を示している。黄色が特徴的な「黄釉輪花盤(おうゆうりんかばん)」も実に上品だ。中国皇帝の象徴的な色である黄色を清楚で落ち着いた色合いに焼き上げている。
イセコレクション展期間中の平常展では、東洋陶磁美術館が誇る二つの至宝「油滴天目茶碗」「飛青磁花生」のどちらか片方だけが展示される。ほぼ開催時期が重なる京都国立博物館の「国宝展」に入れ替わり貸し出されるためである。
ハルカス美術館の「北斎展」も大阪だけの開催、2017年の秋は関西でしか見られない展覧会が目白押しだ。
日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。
中国の名品はなぜ日本で残され、中国には残っていないのか? 中国の研究者による日中比較文化論は奥深い(小学館)
大阪市立東洋陶磁美術館 国際巡回企画展「イセコレクション‐世界を魅了した中国陶磁」
http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=428
会期:2017年9月23日(土)~12月3日(日)
原則休館日:月曜