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京都・岡崎で三館共同の「御大礼」展 ~時代の変遷がとてもよくわかる

2018年09月02日 | 美術館・展覧会

来年2019(平成31)年5月1日に決まっている新天皇即位と新元号使用が近づいており、京都では天皇の即位に関する儀礼にあらためて注目が集まっています。くしくも今年2018は明治150年にもあたります。

京都の文化施設の集積エリアにある3つの美術館と展示会場が合同で、江戸時代から昭和にかけて京都で行われていた新天皇の即位に伴う一連の祭祀・御大礼(ごたいれい)の様子を伝える展覧会が行われています。

ミニチュアによる行列の再現などを通じて、当時の様子を奥深く知ることができます。来年2019年に東京で行われる御大礼を見る前に、大いに勉強になります。


東山天皇即位の際の霊元上皇の行列

天皇・国王・皇帝といった国家元首が交代する際の儀式は古今東西、その権力者の威信をかけて行われます。日本の天皇は、少なくとも1,500年以上おおむね世襲が続いている世界史的に稀有な国家元首です。政治権力のない時代にあっても王朝文化を伝える大切な儀礼として、長い間に少しずつ変化しながら現在に継続されています。

御大礼は御大典(ごたいてん)とも呼ばれ、即位の礼と大嘗祭(だいじょうさい)の2つに大きく分かれます。即位の礼は新天皇の即位を内外に示す儀礼で、大嘗祭は天皇が毎年11月に収穫に感謝する新嘗祭(にいなめさい)として初めて行う祭祀です。

江戸時代の御大礼の様子はおおむね記録でたどれるようです。主に展示会場1の細見美術館に江戸時代の資料が展示されています。また儀式や行列の様子を再現したミニチュアと、主に明治以降の史料は、スペースが広い展示会場2の京都市美術館別館/みやこめっせで展示されています。



細見美術館に展示されている3つの屏風絵がまず目を引きます。安土桃山時代の後陽成天皇の聚楽第行幸の屏風は、戦国の世が終わってようやく平和が訪れ、天皇が武家に出向くという新しい時代に注目する市井の人々が明るく描かれています。後水尾天皇の二条城行幸では京都が経済と文化で繁栄していた時代でもあり、沿道を埋め尽くす見物人が様々な享楽にいそしむ様子に圧倒されます。数千人は描かれているでしょう。

東山天皇の即位式と霊元上皇譲位行列屛風は徳川政権の安定した世が確立したころでもあり、描写にも落ち着きが感じられます。儀礼の様子はかなり詳細に描かれており、一級の資料に値するのではと感じます。この屏風の霊元上皇譲位行列の再現ミニチュアを展示会場2で見ることができます。


大正天皇の即位の礼のミニチュア

展示会場2ではミニチュアに加え、牛車・五色の幡・儀礼装束などからリアルに御大典の様子を感じ取ることができます。装束のデザインは今見てもとても斬新です。王朝文化の蓄積は時代を経ても通用するようなデザインを生み出していることがわかります。

大正・昭和天皇の即位の礼の際に発行された記念の絵ハガキやポスターも実に興味深く見ることができます。当時の流行や世相がとてもよく伝わってきます。

ご紹介した作品の一部の画像は公式サイトに掲載されています。
【公式サイトの画像】 見どころ

大正・昭和天皇の即位の時代は、現在と異なり天皇は神格化されていました。そのため熱狂ぶりが現在とは比較にならないほど強かったと思われます。しかしそんな時代を経て、今の日本があります。御大礼の歴史は日本の国の歴史と比例していると感じました。


京都市美術館別館

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



昔は普通だった上皇になるとどうなる?


明治150年・平成30年記念
京都の御大礼-即位礼・大嘗祭と宮廷文化のみやび-展
展覧会場1:細見美術館    2018年9月1日(土)~10月8日(月)10:00~17:30
展覧会場2:京都市美術館別館 2018年9月1日(土)~9月15日(土)9:00~16:30
      みやこめっせ   2018年9月19日(水)~9月27日(木)9:00~16:30
【細見美術館による展覧会サイト】
【主催者による展覧会サイト】

主催:「京都の御大礼-即位礼・大嘗祭と宮廷文化のみやび-」展実行委員会
共催:京都市、細見美術館、日本経済新聞社、京都新聞、京都宮廷文化研究所、賀茂別雷神社、賀茂御祖神社
原則休館日:月曜日(みやこめっせ会場は無休)

※一部の展示作品が入れ替えされます。
※展覧会場2は会場によって一部展示作品が異なります。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。



※3会場とも相互に徒歩3分で移動できます。最寄り駅も同一です。

おすすめ交通機関:地下鉄東西線「東山」駅下車、2番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→東山駅

【細見美術館公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には駐車場はありません。無料の有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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