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石川県九谷焼美術館 ~九谷焼の色使いに陶酔

2018年09月03日 | 美術館・展覧会

九谷焼(くたにやき)は有田焼(ありたやき)と並んで日本を代表する磁器の産地ブランドとして知られています。江戸時代に現在の石川県加賀市で始められた生産は、一旦途絶えるなどの紆余曲折もありました。幕末になると多くの名工が現れ、明治には欧米への輸出産業としても隆盛します。現代では美術品としての評価も高くなっています。

発祥の地・大聖寺(だいしょうじ)に石川県九谷焼美術館が2001年に開館しています。九谷焼の銘品が常設展示され、時代を追いながら様式の変化を鑑賞することができます。有田焼とは異なる個性を持つ九谷焼の美しさを体験してみてください。


正面

九谷焼は江戸時代の初め、加賀藩の支藩で現在の加賀市を領地とした大聖寺藩で磁器の原料となる良質の陶石が発見されたことに始まります。藩士を有田に派遣して焼成技術を習得させ、1665(明暦元)年頃から生産を始めたと考えられています。

最初の窯が現在の山中温泉付近の九谷村にあったことが名前の由来です。この最初期に生産された作品が古九谷(こくたに)として知られる銘品です。

約50年後、藩は突然窯を閉じます。原因は今もよくわかっておらず、大きなミステリーです。古九谷にはもう一つミステリーがあります。古九谷の中には有田で焼かれたものが含まれているというのです。

有田の窯跡や大聖寺藩の江戸屋敷など関連する箇所から発掘された古九谷と思われる磁器の科学的分析から、古九谷の産地は有田と九谷で混在しているとする説が現在では有力です。デザインや染付の傾向だけでは産地の認定が難しいのが現状なようです。

九谷焼は突然の中止から100年後、大聖寺藩の本家・加賀藩が京都の著名な陶工・青木木米(あおきもくべい)を金沢に招き、再興します。この再興をきっかけに発祥の地・大聖寺藩内でも再興の機運が高まり、「吉田屋」「飯田屋」「永楽」といった名窯が続々登場します。この再興されて以降の作品を「再興九谷」と呼びます。

青色(緑色)をふんだんに使った濃厚な趣で陶器と見違えられる青手(あおて)、緑・黄・紫・青・赤をすべて使う五彩手(ごさい)といった、古九谷時代からみられた技法も見事に再興されています。

幕末には赤に金彩を組み合わせた金襴手(きんらんて)を九谷庄三(くたにしょうぞう)が確立し、明治に輸出品として隆盛する礎を築きます。


館内のカフェ

館に入ると最初に、九谷焼の歴史の解説パネルがある回廊を通ります。ピンポイントに九谷焼の歴史と様式の変化を把握することができます。

【公式サイトの画像】 青手梅笹に樹木葉文平鉢

次に青手の展示室に入ります。青手は白い部分がほとんどなくシンプルなデザインがとても大胆で斬新です。京焼の尾形乾山の作品のように、今見ても”かっこいい”と感じます。

【公式サイトの画像】 色絵唐草梅花文輪花中皿

次は色絵(いろえ)とも呼ばれる五彩手の展示室です。青手よりは背景としての白い部分が少し多くなります。5つの色をとてもきめ細かく使用し、メインモチーフの花鳥や人物を引き立たせています。優雅さの中に可憐さも感じさせるデザインが目を引きます。

【公式サイトの画像】 赤絵許由耳洗之図鉦鉢

最後3つ目の部屋は赤絵(あかえ)と金襴手の展示室です。赤絵はほとんどの装飾を赤で表現した技法です。金襴手は赤絵がベースです。深みのある赤で描かれた下地に繊細に金彩が施されているデザインは、どこか西洋の貴族文化の香りを感じさせます。


よく見かける「どこから来ましたか?」

九谷焼は下地の空白よりも色使いそのもので勝負することに魅力があります。陶磁器に関心があまりない方でも、その美しさには目を見張ります。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



奥深い”うつわ”の魅力を今一度整理してみる


石川県九谷焼美術館
【公式サイト】http://www.kutani-mus.jp/ja/

原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30



おすすめ交通機関:
JR北陸線「大聖寺」駅下車、徒歩8分
JR北陸線「加賀温泉」駅から車で10分
北陸道「加賀」ICから車で10分

※鉄道は本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。


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