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京都国立近代美術館「東山魁夷展」 ~東山ワールドの奥の深さに納得

2018年09月01日 | 美術館・展覧会

昭和日本の国民的画家といえる東山魁夷(ひがしやまかい)の大規模回顧展が、京都国立近代美術館で始まっています。長野県信濃美術館や東京国立近代美術館を中心に、東山魁夷の代表作が全国から集まっています。代表作の中の代表作としても名高い「唐招提寺御影堂障壁画」も出展されます。

東山魁夷は青の色使いでよく知られますが、緑や白、赤など、色は違っても東山魁夷独特の生き生きとした大自然を描くタッチは共通です。幾多の画家が動物の毛皮を愛くるしく描いたような「モフモフ感」で、木々や大自然による生命力のある営みを絶妙に表現しています。

そんな東山魁夷ワールドを存分にまずは京都でお楽しみください。東京には京都展の後、巡回します。



東山魁夷は1908(明治41)年に横浜に生を受け、東京美術学校の特待生としてドイツ留学するなど、青年期から注目を集めていました。第二次大戦前後に相次いだ肉親の死への悲しみを乗り越えるかのように、自然の美しさを表現する手法に没頭し、彼独自のスタイルを確立していきます。

出世作は1947(昭和22)年の日展で特選になった「残照」です。幾層にも重なった山の尾根の奥だけが夕日に照らされていますが、朝陽のようにも見えます。夕日に象徴される負の感情を感じさせません。この絵を描いたことで、悲しみを乗り越えるきっかけをつかんだのでしょうか。そんな前向きな心の持ち方を感じさせる作品です。

北欧の極寒の世界を描いた「映象」「白夜行」は黒と白のコントラストだけで悠久の銀世界を描いています。本当に風の音だけが絵から聞こえてくるようです。北欧旅行で見た日本にはない風景により、大自然の持つ奥の深さとその表現にさらにのめりこんでいったのでしょう。

京都やドイツ・オーストリアの古都の町並を素朴なタッチで描いた作品も見応えがあります。東山魁夷は風景画のイメージが強いだけに、おもちゃのように愛くるしく描かれた町の風景を、とても興味深く鑑賞することができます。

唐招提寺・御影堂は現在長期に渡る修理中のため、障壁画を見ることができる貴重な機会になります。実物大の部屋空間を再現して襖絵が展示されており、バーチャルながらも部屋の中にいる目線で鑑賞できるようになっています。近年の障壁画の展覧会ではよく行われている演出です。

東山ブルーで描かれた山と海の部屋、東山魁夷が初めて挑戦したという水墨画で描いた中国の山河の部屋、2つの対比に何とも言えない味わいがあります。鑑真の故郷を表現するために国交正常化前の中国を見て回ったと言い、”無の境地”に達したような深い精神性を感じ取ることができます。

ご紹介した作品の一部の画像は公式サイトでご覧いただけます
【公式サイトの画像】 展覧会の構成




私は今まで東山魁夷作品と触れ合う機会があまりありませんでした。今回の展覧会で新しい発見もあり、とても有意義な時間を過ごせました。

驚いたのは東山魁夷の名前を冠した美術館が日本に4つもあることです。一番多いだろうと思って調べてみると、まだ上がいることにさらに驚きました。竹久夢二で6つもありました。両氏とも現代の日本では最も有名な画家であることだけは間違いありません。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



東山魁夷の教科書


京都国立近代美術館
「生誕110年 東山魁夷展」
【美術館による展覧会サイト】
【主催メディアによる展覧会サイト】

主催:京都国立近代美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪
会期:2018年8月29日(水)~10月8日(月)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~20:30)

※展示期間が限られている作品があります。
※9/17までの前期展示、9/19以降の後期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※この会場で展示されない作品があります。
※この展覧会は、2018年10月から東京・国立新美術館、に巡回します。



おすすめ交通機関:地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→東山駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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