スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

魅せられた青年

2007-12-04 15:54:47 | 人生

2002年1月奥穂高で遭難した山岳写真家・岡田昇氏は未だ発見されないと聞く
1953年東京都福生市に生まれ行年48歳
私は、たまたま彼の青年期に知遇を得て良く承知している
どちらかと言えば、ひ弱で目立たない存在だった
天文学が好きで早くから天体観測を行っていた
成人してから写真に興味を持ち始め本格的な撮影活動に入る
多くの著書や写真集が発表されていて、知る人ぞ知る写真家だ
中でも1990年、カムチャッカに渡り4年間に亘ってヒグマの生態を研究して
完成させた写真集「BEAR」は圧巻だ
研ぎ澄まされた美的感性の持ち主であると如実に物語っている





今日、その福生市の隣町であの香しい男性に会った
彼もまた感性の鋭い男だ
彼が自らの師匠と呼ぶ無名の写真家の話をしてくれた
田中さんというその師匠は北海道に渡り、夏は農家でアルバイトをして暮らし
冬は雪原にテントを張り、雪に埋もれた生活を送った
来る日も来る日もタンチョウヅルの撮影に没頭したのだという
日々、カップラーメンだけで数ヶ月過ごしたのだそうだ
撮っても、撮っても飽きたらず、その生活は5年の長きに至ったという
ついに栄養失調で倒れ、帰京して息を引き取ったという
行年45歳





私も写真愛好家の一人として、上の二人の青年の歩みを
理解できるような気がする
その日、「やったぁ!」と叫びたくなるような作品を得ても
翌日になれば、それが無価値なもののように思えてくる
もっともっとより美しい写真を得たいとの欲求が生まれてくるのだ
つまり、高きを目指せば果てがないのだ

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人も鳥も飛翔している (あまもり)
2007-12-04 17:47:01
二人の偉大な写真家は期せずして50を前にして亡くなられているんですね。
感動させる写真を撮るにはそれだけ命を張っているということでしょうか。
常に上を目指すというpoloさん。でも危険を冒すことだけはしないでください。
poloさんにとってはまだまだと仰る写真は私にとって憧れの写真です。
香しきカメラマンを交えての3人の偉大な写真家の話の間に羽ばたくダイサギとアオサギ。
特に後ろ姿のアオサギが最高です。
このどこに満足しないというのでしょう。素人の私には全くわかりません。
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納得の行くこと (のんのん)
2007-12-04 20:59:37
こんばんは。
いつみても素晴らしい写真ですが
まだまだ向上心、探究心が続いているpoloさまの
精神には感心させられます。
書き込みのお二人のこと、凄い写真を撮られた方たちでしょう・・・若くしてあの世へ行ってしまったのは
写真世界でも残念な事と思われます。
そのお二人の話の間にダイサギとアオサギ・・写真はもとより編集も素晴らしい!
最後の写真が文章にピッタリの様な気がしてなりません。
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poloさん今晩は (じゃこしか)
2007-12-04 21:18:25
 poloさんの文章から、写真家にあこがれるpoloさんのお気持ちが良く窺え知ることが出来ます。
 わたしも野生の動物が大好きで、今は叶わぬ身の上、写真やテレビ番組の「ダーウィンが来た」を欠かさず録画して見ています。
 また直ぐ近くの鶴居村にもそうした写真家がいて、その作品が新聞などに載ります。
 
 poloさんのこれまでの写真からは、きっと良い写真集が出来ると思います。
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あまもりさん、こんばんは (polo181)
2007-12-04 21:22:55
コメントを有難う。二人とも美に魅せられたのでしょう、40代で命を落としています。岡田君の写真は図書館でも見られます。どれもこれも圧倒されるほどの迫力があります。それでも、本人には好かれなかった作品だったのでしょう。
私は体力的に限界がありますから、たいした作品は撮れません。気遣ってくれてありがとう。
でも、向上心だけは失わないようにと考えています。
あの香しい男性は見るも哀れな格好をし、使用しているカメラは年代物です。それでも、そこから生まれる写真は見事です。時々アルバムを見せてくれています。今年最大の出来事はこの男性に出会ったことだと思います。
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のんのんさん、こんばんは (polo181)
2007-12-04 21:34:35
コメントを有難う。のんのんさんのブログも日々進化しているとおもいます。今日の太田黒公園の紅葉などは、見事です。お互いに、切磋琢磨して少しずつ良いものを作りだしてゆきましょう。
二番目に登場した田中さんのご両親は、息子が残した膨大な作品を業者に売って生活をしているとのことです。親孝行になったわけです。
今日の写真は今朝とてとれのものです。でも、どれもありきたりで、満足はとうてい出来ません。明日は多少は良いものが出来るかも知れません。笑
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じゃこしかさん、こんばんは (polo181)
2007-12-04 21:41:48
コメントを有難う。プロの写真家は命をかけて価値あるものを残そうとしますね。私などはお遊び程度で、その作品もとるに足りないものばかり。
そうそう、あのNHKの「ターウィンが来た」は私も欠かさず見ております。物凄く洗練されたカメラワークだといつも感心しております。
鶴居村のことは良く知っております。近い将来必ず行きたいと思っている場所です。実行できるかどうか。。年末に今年の作品の中から一枚だけ選ぼうと思っています。
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本望? (Luna)
2007-12-04 23:46:32
凄い人生があるものですね。自分の望むことをして一応の生計をたて、短くてもいつも前を向いてのその一生はご本人にとっては本望だったと思いたいですね。
poloさんのように素晴らしい写真を撮られて、見るほうは充分にいい写真と思っていてもまだまだなんですね。いつも向上心をもって臨まれるpoloさんを見習いたいと思います。
今日はダイサギとアオサギの画像を見て、すぐに名前がでました。いつも綺麗な画像UPで見せていただいて、大分頭にはいってきたようです(まだそんな段階なのですよ(-_-;) 
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Lunaさん、こんにちは (polo181)
2007-12-05 11:36:35
コメントを有難う。二人の青年は共に自らの人生に悔いは無かっただろうと思います。三島由紀夫も同じ運命を辿ったのだと私は考えています。美を追究すると果てがない。その結果、自らの過去を全否定するのだと思います。
私なんかは、全くの俗人で、すぐに妥協をしてしまいます。けれど、こと水鳥の写真に関してはこだわりがあります。上へ上へと目指しています。(進歩しているのかどうかは自分では分からない)
ダイサギとアオサギを覚えてくれましたか。同じサギでも、性格は全然違っています。前者は女性的で、後者は男性的です。
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山好き ()
2007-12-05 20:26:26
ならば、岡田昇さんの名前を知らない人はいないですよね。
奥穂で遭難した時は、記事を見てビックリしました。
アウトドア仲間の多くの皆さんが後から続々と救出に向ったようですね。
いまだに穂高連峰のどこかで自然に同化して写真を撮っているかも知れませんね。

確かに上を見ればキリが無いですね。
魅せられたpoloさんになりそうですね。
鳥の飛行姿も芸術ですね。
全ての人に感動を与えるというのはなかなか難しそうですね。
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燦さん、こんばんは (polo181)
2007-12-05 21:22:15
コメントを有難う。そうですね、貴方なら岡田昇くんを知っていて当然でしょう。聞くところによれば、当初、数人で登り、予定通りに下山に向かったのだけれど、岡田くんだけが一人でどうしても残ると言って、山深く入っていったらしい。これは想像ですが、もっともっと高い美的価値を求めて(これまでの写真では満足できなかった)単身でシャッターチャンスを掴もうとしたのだと思います。美に魅せられた男だったと言えましょう。<自然に同化して写真を撮っている>とはとても良い表現だと思います。
その日その日を精一杯生きればそれで良いのであって、欲望を引きずるのは避けた方が良いと私は思います。好意的な感想をとても嬉しく思います。
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