「コスメプロ」が販売する化粧クリームからステロイド剤が検出されて、製造販売中止、自主回収が指示されたとのことです。
配合されていたのは、『プロピオン酸クロベタゾール』で、これは外用ステロイド剤の強弱分類で「ストロンゲスト」(最強)に分類される『デルモベート』の成分です。
ちなみに化粧クリームは中国製で、「ステロイド剤が入っていない」との証明書まで提出されていたそうです。
少し前(たしか昨年)にも、民間療法を装い「ステロイド不使用、副作用なし」を謳い文句とした化粧品クリームからステロイドが検出されて問題になったことがありました。
このときも検出されたのは今回と同じプロピオン酸クロベタゾールで、それもデルモベートと同じ濃度で配合されていました。
あまりの即効性(おそらくアトピー性皮膚炎に対して使用)に不安になった消費者がいたくらいです。
よく効いて、病気が治れば結構なことですが、作用が強い薬は、同時に副作用も強いもの。とくに顔はステロイドの副作用も出やすい場所なので、慎重に使わなければいけません。
顔に使用することを前提とした化粧クリームに強力なステロイドを配合して「ステロイド不使用」などと偽って販売するとは恐ろしいことです。
似たような事件が短期間に繰り返し起きてしまうのはとても残念です。
問題の化粧クリームはインターネットでも販売されていたとのことで、約3年の間に約7600個を出荷したそうです。
幸い健康被害は報告されていないようですが、中には何かあっても化粧クリームのせいと気づかないか、何も言わずに黙っている人もいるかもしれないですから、実態はどうだか分りません。
ちなみに、私は手袋(の粉)アレルギーで、一時期あまりにひどくなって『リンデロンVG』など一般的なステロイドでどうしようもなくなったことがあって、その際にデルモベートに頼りました。
本当にスパっとよく効いて、すぐに楽になったことを覚えています。
いい薬なんですけどね。
私は夜ぐっすりと眠ることが大好きです。
そのためか、このブログではたびたび『眠り』をテーマとした記事を書いています。
月明かりと星空-美肌を照らす薄暗い光
朝の光は青い-メラノプシンの働き
朝の青い光を浴びて体内時計に朝を知らせて、夜は薄暗い月明かりの下でしっかりと眠る-こうすることで体内時計を規則正しく保って、健康な生活を送ることができることを文献を挙げて紹介してきました。
この中で、体内時計(概日リズム)を狂わせることで死亡率が上昇するねずみの実験も紹介しました。
シフトワーク(夜勤など)や不規則な生活などで長生きができないことを示唆するデータですが、そのメカニズムについて「ヒト」で調べた論文が発表されました。
Adverse metabolic and cardiovascular consequences of circadian misalignment.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Mar 2.(出版前のウェブ上の発表)
男女5人ずつ、計10人の成人に、「28時間」サイクルの生活(睡眠・覚醒と食事)を10日間してもらい、血中のホルモンや生理機能などの変化を測定する実験です。
この結果、血中レプチンが減少、血糖値と血中インスリンが共に上昇、コルチゾールの分泌リズムの逆転、血圧の上昇、睡眠の質の低下などがみられました。
さらに、きちんと測定できた8人中の3人で、糖尿病の前段階でみられるようなパターンの食後血糖値の上昇反応が見られたということです。
ちなみに、レプチンの減少は肥満と高脂血症につながります。
また、血糖値とインスリンが共に上昇しているのは、糖尿病において重要な状態である『インスリン抵抗性』が示唆されます。
たったの10人・10日間で統計的にはっきりとした変化が捉えられるということは、よほどはっきりした現象なのでしょう。
たったの10日間28時間サイクルの生活をするだけで、肥満・高脂血症・糖尿病・高血圧という、心筋梗塞へと導く『死の四重奏』(death quartet)の音が聞こえ始めてしまう・・・すごい結果です。
体内時計の『夜』を司るメラトニンを冒頭であげた私のブログ記事でも紹介しましたが、今回紹介した論文で変化することが示されたレプチンやインスリンの分泌はこのメラトニンによる制御を受けます。
メラトニンはインスリンの分泌を抑制しレプチンの分泌を促進するので、不規則な生活でメラトニンの分泌が不十分になった可能性が考えられます(だからといってサプリメントとしてメラトニンを取れば良いというわけではないのですが)。
夜間の光が乳癌の発症リスクを高める因子になっているという研究(参考文献:Cancer causes control (2006) 17:515.)も以前に紹介しましたが、こう色々でてくると規則正しい生活の大切さをいっそう感じます。
医者は早死にが多いと言いますが、当直が多いのも関係あるのでしょうね-。
そういうわけで、みなさん、規則正しい生活を心がけるようにしましょう!
「目は口ほどにものを語る」と言いますが、目は人の顔の中でもその人を印象付ける重要なパーツです。
それゆえ、できるだけ『魅力的な』目を手に入れるよう、アイシャドウ、マスカラなどのアイメイクや二重の埋没法手術に代表される目のまわりのプチ整形など、目の周りの美容は女性の関心の的だと思います。
中でも長くてくっきりとしたまつ毛は、女性を一際美しく見せる要素の一つだと思います。
それを手軽に「塗り薬」で手に入れる・・・・・・女性にとって、とても魅力的な薬が今年、アメリカで発売になりました。
発売されたのはラティッセという薬です。
もともと緑内障の治療薬『ルミガン』として点眼薬として用いられていたのですが、まつ毛が伸びてしまう副作用が見られたため、その副作用を『薬効』として新たにラティッセとして発売したわけです。
私が働いている美容医療科の顧問医がアメリカのビバリーヒルズで開業しているので、そのツテでラティッセのサンプル(実際にアメリカで処方されているもの)をいくつか手に入れました。
この薬を美容医療科(つまり国内)で処方することを考えていたのですが、残念ながらいろいろと制約があって実現しにくい状況です。
さて、ルミガン(一般名:ビマトプロスト)と同様に緑内障に用いられる点眼薬として、ラタノプロスト(商品名:キサラタン)という薬があって、これは国内でも緑内障治療薬として認可されて販売されています。
ラタノプロストも、ビマトプロストと同様にまつ毛が伸びてしまう副作用があり、眼科の医師に聞いているみると苦情も寄せられているそうです(男性の場合、あまりパッチリまつ毛になっても困るんですね)。
こちらであれば、国内でも医師の判断で「睫毛(まつげ)育毛剤」として「保険外処方」をすることはできそうです。
ただ、ラタノプロストでまつ毛が伸びること自体は副作用として論文などでも報告されていてはっきりしていますが、ビマトプロストと比較して効果がどうなのかとか、副作用(ラティッセは「安全」と強調されて販売されていますが、色素沈着や眼のトラブルなどの副作用はあります)が出やすいのか出にくいのかなど、不明な点も多く、今のままで処方するのは無責任だと思います。
そこで、院内で希望者を募って、ラタノプロストとビマトプロストのまつ毛育毛剤としての比較試験を始めました。
まつ毛が伸びる効果が出てくるまで1か月程度、結果が楽しみです♪