江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

「憲法と自衛隊」について考えてみませんか

2017-09-01 | 随想
このテーマで話をすると延々と続いたり、賛否両論が飛び交うようなことになるかもしれません。
「多事争論」となるような創造的発展を志向したものなら良いのですが、得てしてSNS上での論争はそうはならないものです。

と、中身を語る前に予防線を張る私は、実は自分自身でも確信を持てないままにいるからです。


安倍自民党は「憲法改正」を第一に訴えて政権を樹立したわけではありませんが、今では、それを主な政治課題として掲げています。
アベノミクスなる詐欺的経済政策が上手くいかなくなると、相対的に改憲問題が浮き彫りになってきた感もありますが、いよいよ安倍政権の本質が明確になりました。
憲法改悪を許すのか、安倍政権での改憲を阻止するのか、国民的な大きな課題がつきつけられています。




安倍自民党はこれまでにも「(国民の理解の得やすい→国民を騙しやすい)変えやすいところ」から手を付けようとか外堀を埋める作戦を構想したりしてきましたが、今年になって安倍晋三が「9条はそのまま残し、新たに項を起こして自衛隊の存在を明記する」という考えを示しました。
これは自民党改憲案にもなかった案で云わば首相のスタンドプレーですが、これが案外と国民心理をくすぐるものであることは彼も気付いてのことかもしれません。

つまり、こういうことです。

国民の皆さん、平和は最も大事なことです。
自ら戦争はしないという憲法9条はそのまま大切にして、私たちの安全を守るために自衛隊の存在を明記します。
皆さんもご存じのように自衛隊は常日頃から非常災害の時などに緊急出動して国民の救助や復旧活動に従事していますが、不当に外国から攻撃された際にも自衛隊が皆さんの命と国土を守ります。
北朝鮮のミサイル攻撃や中国による不当な侵害があった際に、それらから守るべき組織がなければ私たちは安心して暮らすことができません。
しかし、残念ながら今の憲法にはその極めて重要な役割を担う自衛隊の位置づけがありません。
これでは自衛隊の皆さんも堂々と活動できないし、国民の皆さんも不安なことでしょう。
そこで、憲法9条に新たに1項を加えて自衛隊を明記する改正案を私たち自民党は提起します。
これは、同じく政権を担う公明党の加憲案とも一致します。
皆さん、私たちはこの案を基軸に来年度の通常国会で多くの国会議員の賛成を得て発議します。
その後に国民投票で皆さんの自由な意思に基づいて賛否を明らかにしていただくことになります。
皆さんの安全と国の平和を守るため、私たちは更なる精進をしていく所存ですのでご理解賜ります。



これは、けっこういけるかもしれません。
特に昨今の「北朝鮮ミサイル」による危機状況の設定は、アベ式改憲策動の一環として大いに活用できるものです。
早くもミサイル対策として、来期防衛予算にイージス艦の購入費等の巨額な予算要求が準備されています。
憲法は変えなくても、既に防衛費は年々肥大化しています。

要するに、実態づくりをしながら改憲をもうかがうという二面作戦で進めているわけですから、まさに用意周到な改憲策動とも言えます。


はたして、このアベ式改憲策動に抗する「我が陣営」の憲法観はどうなっているのでしょうか?
この場で「多事争論」を紹介することはできませんが、私の疑問というか考えをごく簡単に述べたいと思います。
皆さんのお考えを整理するための一助になれば幸いです。

分かりやすくするため、箇条書きします。
尚、主題とは離れた方向への逸脱もあるかもしれませんがご容赦ください。

・自衛隊が戦力でないとする論理は、9条1項の「国権の発動たる戦争」と「武力による威嚇又は行使」に使われる存在ではない「戦力」=自衛力として認識するからなのか?
・憲法13条の絡みで、個人として尊重され、生命・自由・幸福追求権は国政上で最大の尊重→国によって守られるべきものだから、自衛隊の存在は認められているのか?
・自衛隊を戦力ではないとする論理も理解したいが、付随説明が必要となるような条文は妥当ではない。
・自衛隊の現状は、過大な戦力を有する等によって憲法違反と考える。→憲法違反だから違反の現状を変更する。
・自衛隊を殊更に憲法に盛り込む必要はない。
・自衛隊を解体して名称及び内実を大きく再編する。
・災害救助等、現に今の自衛隊が直接的に国民生活に貢献している事柄を基本に新たな組織を構築する。
・新組織は、警察や海上保安庁及び消防庁等の関係周辺機関との関連性や整合性の観点から検討して相互に再編成する。
・憲法そのものとは関係ないが、アメリカとの関係を再考して主権国家として確立する。
・憲法9条の理念を大胆に掲げて国連第一主義を新たに構築する。
・仮想敵国を想定した外交安全政策から(積極的平和主義→軍事力を背景とした)対話と交流を基軸とする安全外交政策へ切り替える。
・戦争状況をやその危機を誘発する原因を根本から絶つために、国家の犯罪事実を公に認めて謝罪し、新たな関係を構築する。

結論
・9条は現状のまま堅持する。


いずれにしても安倍晋三の憲法を蔑にし自らの野望を実現しようとする魂胆を徹底的に打ち砕き、私たちが望むべき人権が保障され豊かで自由な民主主義社会を形成するためにも日本国憲法を活かさなければなりません。
そのためにも、まずは9条と自衛隊の関係をどうとらえて考えればよいのか、専門家に委ねるのではなく私たち市井に生きる人間が日常生活の中から考えていけたらと思います。
因みに、私が関わった子どもたちの多くは、「自衛隊って、憲法に違反してませんか?」と考えていましたが、それが素朴な感覚というものではないでしょうか・・・。

もしかしたら、前掲の私の考えも多事争論の中で変容するかもしれません。
しかし、間違っても軍備拡張に向かう積極的平和主義には与することはありません。
また、偏狭なナショナリズムや形式的な愛国主義とは相容れない立場であることは言うまでもありません。


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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-09-01 17:28:36
一つの戦争が終って70年も経ったのに、字面の上だけでも再軍備が許されていないなんて、憲法9条が如何に異常なものか理解する事がスタート地点だろうな。 信頼できない諸国民もいるという事を忘れてはいけない。日本国憲法は、そういう意味では間違いを含んでいるのであって、もっと早くから改正されるべきだった。
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軍拡はやめよう! (「力」ではなく「対話」を!)
2017-09-02 13:07:34
これまでの自衛隊の活動が「平和と安全のため」と本当に言えるのか、そこを考えないといけないのではないでしょうか。戦争で犠牲になる、殺される側の人たちのことをぬきに、戦争のことを議論するのはおかしいと思います。これまでアメリカがおこなった戦争に、日本はお金を出したり燃料補給をして支援したりしてきましたが、その向こう側で、普通に生活していた人たちの日常が破壊されていったことを知るべきです。財政支援や後方支援を許す行為は戦争を許す行為と等しく、無関心や当事者意識のなさが、多くの犠牲者を生み出す戦争を許してしまっているのです。多くの民衆が殺され、子どもたちもたくさん殺されたり学校にいけなくなったりしたこと。イラク戦争で米軍が使った劣化ウラン弾によってガンや白血病で子どもたちが死んでいっていること。そして、日本もそこに加担したことの問題の検証はほとんどされていません。

日本の自衛隊は、すでに軍事力をかなり保有しています。憲法9条の理念が無視されて日本は軍事力を増大させてきているのです。日本の軍事のことに詳しい人に今年聞いた話によると、日本は陸軍力でイギリスやフランスよりも、空軍力でイギリスよりも上位にあるそうです。海上戦力は137隻、46.7万トンを保持して世界で6位の戦力を保持しているそうです。日本の軍事費がどれだけか、「脅威」とする朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の軍事費がどれだけか、世界の軍事費ランキングはインターネットですぐに調べられるので、検索してみてください。

また、東日本大震災等への災害派遣での自衛隊の活躍が色々なところで報道され、それが自衛隊のイメージアップにつながっているようですが、災害派遣は自衛隊の「主たる任務」ではありません。東日本大震災等の災害における救援活動は、被災者自身、民間のボランティア、個人など、様々な形で行われましたが、なぜ自衛隊の活動ばかりがマスコミで取り上げられるのか疑問です。

軍拡による抑止力で平和と安全を構築するとうい方針には断固反対です。現実に、安倍首相がいう「平和」「安全」という言葉は空虚です。真に平和を願うなら、被爆者の話を聞くべきです。戦争の真実を語り始めている戦争体験者の声を聞くべきです。自分は安全なところにいた人ではない人たちの声を聞くべきです。声を聞かない為政者のいう言葉は信用できません。

力で押さえつけるやり方ではなく、話し合いによって「脅威」を作らないような政策をとるべきだと思います。今の政府は、自ら「脅威」をつくっており、近隣の国の人たちと仲良くするにはどうすればいいかまったく考えていません。

私は歴史の授業でこう教わりました。「朝鮮特需は朝鮮軍需。ベトナム特需はベトナム軍需。軍需産業によって日本は経済成長していった」と。
そしてまた、同じ道を進もうとしているのです。きっぱりと「No!」と言いたいです。
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Unknown (Unknown)
2017-09-27 16:55:08
憲法9条の精神を世界中が持つようになっても、邪悪なやつがゼロにはならない。反撃することを悪と決め付ける9条の精神によって、善人は死滅するから、地球上には悪人だらけになる。
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