🎥 必殺仕事人シリーズ
≪解説 あらすじ≫
朝日放送テレビ(ABCテレビ)[注 1] と松竹京都映画撮影所(現・松竹撮影所)の制作で、1972年9月から1975年3月まではTBSテレビ系、同年4月からはABCテレビ・テレビ朝日(1977年3月まではNETテレビ)系で放送している殺し屋たちを主人公とする時代劇である。池波正太郎の小説『仕掛人・藤枝梅安』『殺しの掟』などを原作とした『必殺仕掛人』に始まる一連のテレビシリーズおよびその派生作品の総称で、金銭を貰って弱者の晴らせぬ恨みを晴らすために裏の仕事を遂行していく者たちの活躍と生き様を描く。主人公たちの多くは表向きはまともな職業についているが、ひとたび依頼を受けると各々の商売道具を使った裏稼業を行う。多くは暗殺であるが、シリーズ当初は、暗殺よりも依頼人の復讐を代行することが多い。原作付きの『必殺仕掛人』、原案付きの『助け人走る』を除いては完全なオリジナル作品である。一般的な勧善懲悪を旨とする時代劇とは異なり、主人公は基本的に善行者ではなく、あくまで金のために殺しを行うアンチヒーローである。殺し屋という社会的に悪とされる稼業をあえてなす理由は、「どう理屈をつけようと殺人は悪であり、自分達が「正義の味方」にならないよう敢えて金をとっている」「合法的には裁くことができない悪人のみを殺める」「殺しにあたり、万に一つの間違いもないよう調査をする」といった倫理面のあとづけがされている。また、作品には日活ロマンポルノ女優の泉じゅんや風祭ゆきらがゲスト出演し、好評を博した。シリーズによって多少変わるものの、基本的には現実主義的なハードボイルドタッチの作風となっており、仕事の依頼者や仲間が殺されても黙殺する場面がある。その一方で、純粋な人助けや世直しを願う者もおり、しばしばグループ内の軋轢やジレンマに苛まれ、それが作品テーマとなることもある。15作目『必殺仕事人』を境として前期と後期に分けられ、2作目の『必殺仕置人』や10作目『新・必殺仕置人』を前期の代表、『仕事人』のタイトルを冠したものを後期の代表とされることがある。また、中村主水がレギュラー登場するシリーズと、それ以外に区分する場合もある。前期と後期の違いとして、1970年代に制作された前期作品は、非情・ハードボイルドで反権力的な世界観を持っていた。また、映画的で深みのある脚本と演出が特長であり、シリーズを愛好するマニア層から高く評価されている。一方で1980年代以降の後期作品は、お茶の間向けに徹した作風で、毎回の筋立てはワンパターンながらも、より娯楽性を増した殺陣が見られ、劇場用映画が作られるほどの人気となった。後期シリーズにおいても、内容面で一定の評価を受けている作品は存在する。一般的にテレビ映画やテレビアニメなどの外注制作テレビ番組のほとんどは数年後に製作した放送局が著作権を手放したと同時に映像保有権が映像制作会社か広告代理店に移行されるが、本シリーズは例外で、2022年現在も朝日放送テレビが知的財産権を保有し続けているため、同シリーズの映像に関しては、朝日放送テレビが管理者となっている。

◇必殺! THE HISSATSU
1984年製作
上映日:1984年06月16日
製作国:日本
上映時間:124分
ジャンル:ドラマ 時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
「必殺シリーズ」通算600回記念として製作された作品。『必殺仕事人IV』をベースに、シリーズの特色である殺しの様式美やバラエティ色などをバランスよく配分し、テレビシリーズの豪華拡大版といった趣きの強い作品である。 封切り当時の「テレビドラマの映画版は当たらない」というジンクスをはね除け、ヒットを記録。以後年一回のペースでシリーズ化されることになった。1985年4月12日にテレビ放送され、24.9%の視聴率(ビデオリサーチ調べ)を記録した。江戸の仕事人殱滅をたくらむ殺し屋軍団と戦う中村主水ほか仕事人の姿を描く。TV映画「必殺シリーズ」の映画化で、脚本は「白蛇抄」の野上龍雄と「恋の空中ぶらんこ」の吉田剛の共同執筆。監督は「海嶺」の貞永方久、撮影は「典子は、今」の石原興がそれぞれ担当。
中村主水は奉行所の同心だが裏では、“仕事人”という非情な稼業をしていた。主水のグループは三味線ひきのおりくを元締とし、おりくを母と慕う勇次、かんざし職人の秀、何でも屋の加代、医学生西順之肋がいる。江戸で身元不明の死体があちこちで見つかる。仕事人らしいと思われるその死体の口には三途の川の渡し賃、六文銭が……。それを聞いたおりくの顔色がかわった。ある日、愛しい人の仇をとってくれと十両そろえ、お君と名乗る女の子が現われた。調べてみるとお君は隠し売女。殺す相手はその売女宿の主・伝次で、その手下の仙太がお君の情婦で姿を消している。仕事にしようとした時、仙太は生きていることが判った。加代に詰問されたお君は、本当は可愛がっていた猫を伝次に惨殺されたという。お君は上方人形浄瑠璃の此竹朝之助と会い、彼に心情を話した夜、殺された。伝次と庄兵衛と名乗る男の江戸の仕事人殱滅計画を聞いてしまったのだ。朝之助は売女宿に出向き、伝次を殺した。彼もまた仕事人だった。それを秀が屋根の上から見ていた。山王の祭りの日、柳橋のお甲という芸者を元締とする仕事人グループが殺された。唯一人生き残った瓦職人の政は加代と順之助に救われる。旅から帰ってきたおりくは、連続する仕事人殺しの裏には関八州で取締に追われた殺し屋団・庄兵衛一味がいると告げた。おりくは庄兵衛と会った。かつておりくはこの男を仕込み、仲間としたが、その残虐さゆえに見捨てたのだった。政とその妻およねを加えた一同は助っ人を探し始めた。秀は朝之助を仲間に誘うが断わられる。庄兵衛一味である絵日傘のお葉が主水の身辺に現われた。庄兵衛が主水をスカウトしようとしたのだ。主水はお葉に庄兵衛と会う日取りを決めさせた。鎖筒の時次郎、胆臓潰しの石亀を雇ったものの一人は事件を起して死亡、一人は逃亡と結局、みんな散るしかないとおりくが言いだした。自分一人で闘おうと決意した主水は、嫁りつと最後の枕を交わし庄兵衛に会いに出かけた。その彼に、皆が追いつく。戦いは不利であったが、通りかかった朝之助に助けられ、彼の宿に庄兵衛らをおびきよせる。個々の殺しの技が光るなか、主水たちは庄兵衛を倒すのだった。

◇必殺!ブラウン館の怪物たち
1985年製作
製作国:日本
上映時間:122分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
徳川家康が建てたという黒谷屋敷の謎をかぎつけた倒幕派と外国人グループと戦う仕事人たちを描く。昨年公開された「必殺!」の第二弾。脚本は「哀しい気分でジョーク」の吉田剛、監督は「港町紳士録」の広瀬襄、撮影は「必殺!」の石原興がそれぞれ担当。
南町奉行所同心、中村主水は役所では昼行燈と馬鹿にされ、家でも姑のせん、女房のりつに頭の上らぬ婿どの。だが実は奥山神影流の使い手で、裏稼業として金を貰って恨みを晴らす仕事人をしていた。ある夜、品川宿で彼が警護にあたっていた御公儀御用早駕篭が襲われ、密書が奪われた。天下を狙うものは必ず京都の帝を利用するが、徳川家康はそれを防ぐため秘かに京都黒谷に屋敷を築き、いざという時、帝を京都御所もろとも爆破し得る恐しい仕掛けを設けていた。密書は代々将軍家に伝えられてきたその屋敷の権利書、絵図面である。老中稲葉正邦は急遽、筆頭同心、田中と主水に京都への出立を命じ、さらに伊賀忍者の末えいのお庭番、藤林辰之進、百地お千にも同じ命令を伝えた。旅を急ぐ田中と主水の前に、仕事人の仲間の加代が現われた。品川宿の事件の真相究明のため、元締のおりくをはじめ、順之肋、政、竜たち仲間が主水を追って京に向っていると言う。箱根芦の湯で、主水は上方いで湯めぐりを楽しむせんとりつに会う。黒谷屋敷には徳川家の秘密を守るため、代々お守番をしてきた服部佐一郎、お時、小太、お国等がいて、主水たちは仕掛けを調べるどころでない。品川宿の件は佐一郎たちが起こしたのであり、お守番の馬鹿馬鹿しさに気づいたのだった。彼らは屋敷を売って自分たちの理想郷を作ろうとする。買い手として倒幕に利用しようとする不動産屋の角助たち公卿一派、内乱を起すのが狙いの神戸の武器商ブラウン、大黒屋如安一派が現われた。仕事人は彼らを利用してお金を儲けようとする。二派の抗争のなか、佐一郎たらは全員死んでしまう。主水たちは、純粋に生きてきたお守番が悲惨な最期を遂げたので立ちあがる。そして、ブラウン一派を倒すのだった。

◇必殺!III 裏か表か
1986年製作
製作国:日本
上映時間:126分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
闇の金融集団と闘う仕事人たちの姿を描く“必殺!”シリーズ第三弾。脚本は「必殺!」の野上龍雄、保利吉紀、中村勝行の共同執筆。監督は「逃がれの街」の工藤栄一。撮影は「必殺! ブラウン館の怪物たち」の石原興がそれぞれ担当。
ある日、南町奉行所同心・中村主水の同僚で隣家の主である同心・清原が殺された。清原は舛屋なる両替商をゆすっていた。清原の妻、おこうは、舛屋の代理人、真砂屋を訪ね、彼が殺ったことを白状させる。真砂屋は先代の娘おこうに自分たちの世界に戻って来て欲しいと告げた。数日後、そんなことも知らず主水は、知り合いの後家、おしのに頼まれ、貯金の利息の取り立てに舛屋に出向いた。そこで彼は、舛屋の言葉から清原殺しが舛屋の手によるものらしいと気付くが、退散せざるを得ない。後日、舛屋の勘定人、彦松が自殺する事件が起き、主水は再度舛屋と対決するが軽く追い返されてしまう。そして主水に刺客が迫るが、仕事人仲間に助けられる。主水は真砂屋が仕向けた小娘、おゆみと親しくなり、妻の座を迫られた。その挙句、おゆみは「中村主水は人でなしだ」と捨てぜりふを残して、五重の塔から投身自殺をしてしまう。窮地に落ち、家でも役所でも身の置場がなくたってしまう主水。さらに真砂屋に戻ったおこうに、彼らの絶対的な力を見せられる。そんな時、秀が帰って来た。秀からおゆみの自殺は真砂屋が仕組んだ殺しであると聞かされ、主水の怒りが爆発した。ある夜、主水は加納平馬に誘われ小舟に乗り、刺客に襲われるが、集まって来た秀ほか、仕事人仲間の竜、政、壱、参に助けられた。袋のねずみとなった彼らは、それぞれ身を隠すが翌朝、参の首があがった。主水たちは舛屋一味と闘う決意をする。竜が殺られ、政が倒れと真砂屋のもとにたどりついたのは、主水と秀だけだった。だが、真砂屋はおこうの手によって殺されていた。

◇必殺4 恨みはらします
1987年製作
製作国:日本
上映時間:131分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
貧乏長屋で起きた殺人事件を陰で仕掛ける美男の奉行と、仕事人たちの戦いを描いた「必殺」シリーズ4作目。脚本は「必殺!III 裏か表か」の野上龍雄、「火宅の人」の深作欣二、中原朗の共同執筆。監督は深作欣二、撮影は「必殺!III 裏か表か」の石原興がそれぞれ担当。
ある日、町奉行所・内部で、見習い与力・安田小兵衛が町奉行・長尾監物に切りかかった。与力・同心たらは薄情にも我さきに逃げてしまい、監物は逃げ遅れた主水を盾にするが、主水がよけてしまったため小兵衛に刺し貫かれてしまう。この事件の不手際により、主水は向う半年の御扶持半額をお取り上げにされた。後任の奉行には、若い女かと見まちがう美男、奥田右京亮が着任した。おけら長屋の居酒屋「おふく」でヤケ酒を飲む主水が、店の外の騒ぎに表へ出ると、京劇の仮面のように顔をくま取った旗本愚連隊が暴れまわっていた。キラッと光る物が主水の視界をかすめた途端、愚連隊のひとりが乗っていた馬が暴走し、あとに首の骨が折れた狼人、弥兵衛の死体が転っていた。この暴走に疑問を持った主水は、馬の後脚に十字手裏剣が突きささっているのを発見する。ある夜、仕事人たちの会合が開かれた。元締の弁天から“旗本愚連隊の首領格三人の仕事料、六両”が提示される。安すぎる仕事料に帰ってゆく仕事人たち。依頼主は弥兵衛の娘、お弓だった。結局、主水と独楽売り、わらべや文七がそれを受け、早いもの勝ちの勝負となった。ひとり目の的を文七に先取りされ、秀たちにからかわれた主水は、右京亮の素性を調べてほしいと彼らに依頼した。数日が過ぎ、右京亮があの若さで町奉行になれたのは、老中酒井雅楽頭のヒキで、寺小姓から六番組、御旗奉行、町奉行とトントン拍子に出世双六を登りつめたことがわかった。そんな折、主水は円光院で大奥年寄・松尾、老中酒井、右京亮が密会する現場を目撃した。そこでお上が、昔ここで慰みものにした菊という女の怨霊に悩まされていると知る。また、旗本がおけら長屋に乗り込んだ。主水が駆けつけると、おふく、杉江など多数の死体が横たわっていた。これを理由に、奉行所はおけら長屋の住人を強制立ち退きさせ、旗本の首領、神保主悦らを切腹させた。お弓も自ら命を絶ち、文七は本当の下手人を殺ると宣言、十字手裏剣の使い手九蔵と対決するが、相打ちとなって息をひきとった。その頃、円光院では酒井と右京亮が酒を飲みながら密談していた。「おけら長屋に寺を建てれば菊の怨霊も鎮まるから上様も大喜び」と語る酒井に、右京亮は菊の弟だと告げる。驚いた酒井は血を吐いて倒れた。お上に仕えることになり、酒井が邪魔になった右京亮が毒を盛ったのだ。そこに、主水、秀、政、お玉、順之肋が右京亮の命を狙いに現われた。そして、主水の怒りの刃が右京亮を貫いた。

◇必殺!5 黄金の血
1991年製作
製作国:日本
上映時間:104分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
問答無用で悪を斬る仕事人の活躍を描く時代劇シリーズ第五弾。脚本は「必殺! ブラウン館の怪物たち」の吉田剛が執筆。監督は「動天」の舛田利雄。撮影は「必殺4 恨みはらします」の石原興がそれぞれ担当。
金座後藤家の女中・お浅は、幼なじみの与七に想いを寄せていた。しかし、与七を乗せた御用船は無宿人に襲撃されて沈没。お浅は川へ身を投げようとするが、偶然通りかかった政に助けられる。金を乗せた御用船沈没によって江戸の金相場は急上昇し、そんな折り、主水に鎌イタチの元締おむらから裏の仕事の依頼が入る。後藤家の妻・千勢が御用船乗組員の仇討ちに五百両出すというのだ。主水は話がうますぎると仕事を断るが、数日後、無宿人どもを始末したおむら達が、紅蝙蝠を自在に操る黒装束の集団・地獄組に襲われる。新月の夜のある日、丘の上から突然立ち昇った不思議な光を見ようとると江戸中から人々が集まっていた。その中には千勢の企みを暴こうとする政や秀、おむらの姿もあった。だが、その光とは実は後藤家が無宿人どもに襲わせ、隠させた御用船の金の光だった。その真相を知られることを恐れた千勢らは、お浅ともども仕事人達を始末しようとしていた。すべては金の値上がりで儲け、その金で老中職を買おうとする勘定奉行・太田と金座後藤家の当主の座を狙う三之助が仕組んだことだった。無宿人どもに上納金を盗ませ、隠させ、仕事人に無宿人どもを殺させ、その仕事人を今度は黒装束の地獄組が襲う。そしてそのからくりを知った主水を始め、仕事人達は地獄組との死闘を繰り広げ、勘定奉行・太田と金座後藤組の三之助、そして千勢に怒りの刃を差し向けるのだった。

◇必殺!主水死す
1996年製作
製作国:日本
上映時間:100分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
1972年から20年間に渡って放送されたテレビ時代劇『必殺!』シリーズの5年ぶりの劇場版第6作。監督は初期テレビシリーズから『必殺!』にかかわり、劇場版第1作「必殺!」も監督した貞永方久。脚本は「復活の朝」の吉田剛、撮影は「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の石原興がそれぞれ担当している。音楽はシリーズ全てを手掛ける平尾昌晃。『必殺!』の代名詞ともいえる仕事人・中村主水にはテレビ版同様に藤田まことがふんし、三田村邦彦、菅井きん、白木万理、中条きよしらテレビのレギュラー陣に加え、名取裕子、津川雅彦、東ちずる、野村祐人、細川ふみえら多彩な顔触れのゲストが華を添えている。
仕事人仲間のおけいと不義を重ねていた中村主水は、家庭を捨てる覚悟で新たな生活を準備していた。そのころ、葛飾北斎が謎の死を遂げ、娘のお栄は犯人捜しを主水に相談する。主水は北斎の描いた似顔絵にそっくりの大道芸人・捨蔵に町で出会った。捨蔵は男の身なりをしているが実は女で、三味線ひきの養母・お夢に育てられている。お夢は20年前の傷がもとで記憶を無くしてしまっていたが、実は主水の昔馴染みの仕事人・お千代だった。同じころ、大奥では上臈年寄の姉小路が元老中・水野忠邦と組んで、将軍家世継の家定の双子の片割れを捜し出し、お家を乗っ取ろうと企んでいた。その動きを察知した家定の母・お美津は、大奥掃除人の元締め・権の四郎とその息子・清太に片割れの抹殺を命じ、清太はその始末をおけいに依頼した。ところが、この双子の片割れというのは捨蔵のことだったのである。捨蔵の似顔絵を描かされた北斎は、口封じのために姉小路らによって謀殺されたのだった。主水はおけいを通じて四郎と会うが、その男は主水がかつてお千代をめぐって争った宿敵・清吉だった。清吉はお千代を妻としたが、やがて生まれた清太の父親が主水だと思い込み、20年前にお千代を殺そうとしていたのである。四郎に捨蔵暗殺を思いとどまらせた主水は、おけいともども協力して姉小路と忠国を討つことになった。そんなおり、お千代と捨蔵が芸を披露するため大奥に招かれ、主水もその席に並んだ。捨蔵が女であることを知った姉小路は、もう用はないと斬り捨てようとしたが、主水たちがそれを救う。しかし、四郎は裏で主水の命を狙っており、仕事を終えたおけいが殺されそうになった。主水は罠と知りつつ、四郎のもとへ向かう。四郎は清太に主水を討たせようとしたが、記憶の戻ったお千代は清太の父は間違いなく四郎だと告げた。混乱した四郎は自分に逆らう態度を取った清太を絞め殺し、主水との一騎打ちに望む。主水は宿命の対決に決着をつけたが、自分たちの運命をはかなんだお千代に背後から刺され、断末魔の四郎が放った爆薬に吹き飛ばされるのだった。主水を追ってきた秀、勇次、おけいは、燃え上がる炎をただ見つめていた。
★★★☆☆
●総体的に、好きなジャンルです。晴らせぬ恨み晴らします、金で請け負う殺し屋稼業、なんですが
そこには、人情が絡んで、何文という少ないお金から、何百両というお金まで幅が広い。必殺シリー
ズは中村主水が出てきてから、面白くなったと言える。家庭に帰ればさえない夫、裏稼業では凄腕の
殺し屋。それを取り巻く、様々な技を持った殺し屋たちが、悪人どもをバッタバッタと倒していく様は
痛快である。現代でも許せぬ悪ははびこってます。仕事人、いないかなぁ~。
≪解説 あらすじ≫
朝日放送テレビ(ABCテレビ)[注 1] と松竹京都映画撮影所(現・松竹撮影所)の制作で、1972年9月から1975年3月まではTBSテレビ系、同年4月からはABCテレビ・テレビ朝日(1977年3月まではNETテレビ)系で放送している殺し屋たちを主人公とする時代劇である。池波正太郎の小説『仕掛人・藤枝梅安』『殺しの掟』などを原作とした『必殺仕掛人』に始まる一連のテレビシリーズおよびその派生作品の総称で、金銭を貰って弱者の晴らせぬ恨みを晴らすために裏の仕事を遂行していく者たちの活躍と生き様を描く。主人公たちの多くは表向きはまともな職業についているが、ひとたび依頼を受けると各々の商売道具を使った裏稼業を行う。多くは暗殺であるが、シリーズ当初は、暗殺よりも依頼人の復讐を代行することが多い。原作付きの『必殺仕掛人』、原案付きの『助け人走る』を除いては完全なオリジナル作品である。一般的な勧善懲悪を旨とする時代劇とは異なり、主人公は基本的に善行者ではなく、あくまで金のために殺しを行うアンチヒーローである。殺し屋という社会的に悪とされる稼業をあえてなす理由は、「どう理屈をつけようと殺人は悪であり、自分達が「正義の味方」にならないよう敢えて金をとっている」「合法的には裁くことができない悪人のみを殺める」「殺しにあたり、万に一つの間違いもないよう調査をする」といった倫理面のあとづけがされている。また、作品には日活ロマンポルノ女優の泉じゅんや風祭ゆきらがゲスト出演し、好評を博した。シリーズによって多少変わるものの、基本的には現実主義的なハードボイルドタッチの作風となっており、仕事の依頼者や仲間が殺されても黙殺する場面がある。その一方で、純粋な人助けや世直しを願う者もおり、しばしばグループ内の軋轢やジレンマに苛まれ、それが作品テーマとなることもある。15作目『必殺仕事人』を境として前期と後期に分けられ、2作目の『必殺仕置人』や10作目『新・必殺仕置人』を前期の代表、『仕事人』のタイトルを冠したものを後期の代表とされることがある。また、中村主水がレギュラー登場するシリーズと、それ以外に区分する場合もある。前期と後期の違いとして、1970年代に制作された前期作品は、非情・ハードボイルドで反権力的な世界観を持っていた。また、映画的で深みのある脚本と演出が特長であり、シリーズを愛好するマニア層から高く評価されている。一方で1980年代以降の後期作品は、お茶の間向けに徹した作風で、毎回の筋立てはワンパターンながらも、より娯楽性を増した殺陣が見られ、劇場用映画が作られるほどの人気となった。後期シリーズにおいても、内容面で一定の評価を受けている作品は存在する。一般的にテレビ映画やテレビアニメなどの外注制作テレビ番組のほとんどは数年後に製作した放送局が著作権を手放したと同時に映像保有権が映像制作会社か広告代理店に移行されるが、本シリーズは例外で、2022年現在も朝日放送テレビが知的財産権を保有し続けているため、同シリーズの映像に関しては、朝日放送テレビが管理者となっている。

◇必殺! THE HISSATSU
1984年製作
上映日:1984年06月16日
製作国:日本
上映時間:124分
ジャンル:ドラマ 時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
「必殺シリーズ」通算600回記念として製作された作品。『必殺仕事人IV』をベースに、シリーズの特色である殺しの様式美やバラエティ色などをバランスよく配分し、テレビシリーズの豪華拡大版といった趣きの強い作品である。 封切り当時の「テレビドラマの映画版は当たらない」というジンクスをはね除け、ヒットを記録。以後年一回のペースでシリーズ化されることになった。1985年4月12日にテレビ放送され、24.9%の視聴率(ビデオリサーチ調べ)を記録した。江戸の仕事人殱滅をたくらむ殺し屋軍団と戦う中村主水ほか仕事人の姿を描く。TV映画「必殺シリーズ」の映画化で、脚本は「白蛇抄」の野上龍雄と「恋の空中ぶらんこ」の吉田剛の共同執筆。監督は「海嶺」の貞永方久、撮影は「典子は、今」の石原興がそれぞれ担当。
中村主水は奉行所の同心だが裏では、“仕事人”という非情な稼業をしていた。主水のグループは三味線ひきのおりくを元締とし、おりくを母と慕う勇次、かんざし職人の秀、何でも屋の加代、医学生西順之肋がいる。江戸で身元不明の死体があちこちで見つかる。仕事人らしいと思われるその死体の口には三途の川の渡し賃、六文銭が……。それを聞いたおりくの顔色がかわった。ある日、愛しい人の仇をとってくれと十両そろえ、お君と名乗る女の子が現われた。調べてみるとお君は隠し売女。殺す相手はその売女宿の主・伝次で、その手下の仙太がお君の情婦で姿を消している。仕事にしようとした時、仙太は生きていることが判った。加代に詰問されたお君は、本当は可愛がっていた猫を伝次に惨殺されたという。お君は上方人形浄瑠璃の此竹朝之助と会い、彼に心情を話した夜、殺された。伝次と庄兵衛と名乗る男の江戸の仕事人殱滅計画を聞いてしまったのだ。朝之助は売女宿に出向き、伝次を殺した。彼もまた仕事人だった。それを秀が屋根の上から見ていた。山王の祭りの日、柳橋のお甲という芸者を元締とする仕事人グループが殺された。唯一人生き残った瓦職人の政は加代と順之助に救われる。旅から帰ってきたおりくは、連続する仕事人殺しの裏には関八州で取締に追われた殺し屋団・庄兵衛一味がいると告げた。おりくは庄兵衛と会った。かつておりくはこの男を仕込み、仲間としたが、その残虐さゆえに見捨てたのだった。政とその妻およねを加えた一同は助っ人を探し始めた。秀は朝之助を仲間に誘うが断わられる。庄兵衛一味である絵日傘のお葉が主水の身辺に現われた。庄兵衛が主水をスカウトしようとしたのだ。主水はお葉に庄兵衛と会う日取りを決めさせた。鎖筒の時次郎、胆臓潰しの石亀を雇ったものの一人は事件を起して死亡、一人は逃亡と結局、みんな散るしかないとおりくが言いだした。自分一人で闘おうと決意した主水は、嫁りつと最後の枕を交わし庄兵衛に会いに出かけた。その彼に、皆が追いつく。戦いは不利であったが、通りかかった朝之助に助けられ、彼の宿に庄兵衛らをおびきよせる。個々の殺しの技が光るなか、主水たちは庄兵衛を倒すのだった。

◇必殺!ブラウン館の怪物たち
1985年製作
製作国:日本
上映時間:122分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
徳川家康が建てたという黒谷屋敷の謎をかぎつけた倒幕派と外国人グループと戦う仕事人たちを描く。昨年公開された「必殺!」の第二弾。脚本は「哀しい気分でジョーク」の吉田剛、監督は「港町紳士録」の広瀬襄、撮影は「必殺!」の石原興がそれぞれ担当。
南町奉行所同心、中村主水は役所では昼行燈と馬鹿にされ、家でも姑のせん、女房のりつに頭の上らぬ婿どの。だが実は奥山神影流の使い手で、裏稼業として金を貰って恨みを晴らす仕事人をしていた。ある夜、品川宿で彼が警護にあたっていた御公儀御用早駕篭が襲われ、密書が奪われた。天下を狙うものは必ず京都の帝を利用するが、徳川家康はそれを防ぐため秘かに京都黒谷に屋敷を築き、いざという時、帝を京都御所もろとも爆破し得る恐しい仕掛けを設けていた。密書は代々将軍家に伝えられてきたその屋敷の権利書、絵図面である。老中稲葉正邦は急遽、筆頭同心、田中と主水に京都への出立を命じ、さらに伊賀忍者の末えいのお庭番、藤林辰之進、百地お千にも同じ命令を伝えた。旅を急ぐ田中と主水の前に、仕事人の仲間の加代が現われた。品川宿の事件の真相究明のため、元締のおりくをはじめ、順之肋、政、竜たち仲間が主水を追って京に向っていると言う。箱根芦の湯で、主水は上方いで湯めぐりを楽しむせんとりつに会う。黒谷屋敷には徳川家の秘密を守るため、代々お守番をしてきた服部佐一郎、お時、小太、お国等がいて、主水たちは仕掛けを調べるどころでない。品川宿の件は佐一郎たちが起こしたのであり、お守番の馬鹿馬鹿しさに気づいたのだった。彼らは屋敷を売って自分たちの理想郷を作ろうとする。買い手として倒幕に利用しようとする不動産屋の角助たち公卿一派、内乱を起すのが狙いの神戸の武器商ブラウン、大黒屋如安一派が現われた。仕事人は彼らを利用してお金を儲けようとする。二派の抗争のなか、佐一郎たらは全員死んでしまう。主水たちは、純粋に生きてきたお守番が悲惨な最期を遂げたので立ちあがる。そして、ブラウン一派を倒すのだった。

◇必殺!III 裏か表か
1986年製作
製作国:日本
上映時間:126分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
闇の金融集団と闘う仕事人たちの姿を描く“必殺!”シリーズ第三弾。脚本は「必殺!」の野上龍雄、保利吉紀、中村勝行の共同執筆。監督は「逃がれの街」の工藤栄一。撮影は「必殺! ブラウン館の怪物たち」の石原興がそれぞれ担当。
ある日、南町奉行所同心・中村主水の同僚で隣家の主である同心・清原が殺された。清原は舛屋なる両替商をゆすっていた。清原の妻、おこうは、舛屋の代理人、真砂屋を訪ね、彼が殺ったことを白状させる。真砂屋は先代の娘おこうに自分たちの世界に戻って来て欲しいと告げた。数日後、そんなことも知らず主水は、知り合いの後家、おしのに頼まれ、貯金の利息の取り立てに舛屋に出向いた。そこで彼は、舛屋の言葉から清原殺しが舛屋の手によるものらしいと気付くが、退散せざるを得ない。後日、舛屋の勘定人、彦松が自殺する事件が起き、主水は再度舛屋と対決するが軽く追い返されてしまう。そして主水に刺客が迫るが、仕事人仲間に助けられる。主水は真砂屋が仕向けた小娘、おゆみと親しくなり、妻の座を迫られた。その挙句、おゆみは「中村主水は人でなしだ」と捨てぜりふを残して、五重の塔から投身自殺をしてしまう。窮地に落ち、家でも役所でも身の置場がなくたってしまう主水。さらに真砂屋に戻ったおこうに、彼らの絶対的な力を見せられる。そんな時、秀が帰って来た。秀からおゆみの自殺は真砂屋が仕組んだ殺しであると聞かされ、主水の怒りが爆発した。ある夜、主水は加納平馬に誘われ小舟に乗り、刺客に襲われるが、集まって来た秀ほか、仕事人仲間の竜、政、壱、参に助けられた。袋のねずみとなった彼らは、それぞれ身を隠すが翌朝、参の首があがった。主水たちは舛屋一味と闘う決意をする。竜が殺られ、政が倒れと真砂屋のもとにたどりついたのは、主水と秀だけだった。だが、真砂屋はおこうの手によって殺されていた。

◇必殺4 恨みはらします
1987年製作
製作国:日本
上映時間:131分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
貧乏長屋で起きた殺人事件を陰で仕掛ける美男の奉行と、仕事人たちの戦いを描いた「必殺」シリーズ4作目。脚本は「必殺!III 裏か表か」の野上龍雄、「火宅の人」の深作欣二、中原朗の共同執筆。監督は深作欣二、撮影は「必殺!III 裏か表か」の石原興がそれぞれ担当。
ある日、町奉行所・内部で、見習い与力・安田小兵衛が町奉行・長尾監物に切りかかった。与力・同心たらは薄情にも我さきに逃げてしまい、監物は逃げ遅れた主水を盾にするが、主水がよけてしまったため小兵衛に刺し貫かれてしまう。この事件の不手際により、主水は向う半年の御扶持半額をお取り上げにされた。後任の奉行には、若い女かと見まちがう美男、奥田右京亮が着任した。おけら長屋の居酒屋「おふく」でヤケ酒を飲む主水が、店の外の騒ぎに表へ出ると、京劇の仮面のように顔をくま取った旗本愚連隊が暴れまわっていた。キラッと光る物が主水の視界をかすめた途端、愚連隊のひとりが乗っていた馬が暴走し、あとに首の骨が折れた狼人、弥兵衛の死体が転っていた。この暴走に疑問を持った主水は、馬の後脚に十字手裏剣が突きささっているのを発見する。ある夜、仕事人たちの会合が開かれた。元締の弁天から“旗本愚連隊の首領格三人の仕事料、六両”が提示される。安すぎる仕事料に帰ってゆく仕事人たち。依頼主は弥兵衛の娘、お弓だった。結局、主水と独楽売り、わらべや文七がそれを受け、早いもの勝ちの勝負となった。ひとり目の的を文七に先取りされ、秀たちにからかわれた主水は、右京亮の素性を調べてほしいと彼らに依頼した。数日が過ぎ、右京亮があの若さで町奉行になれたのは、老中酒井雅楽頭のヒキで、寺小姓から六番組、御旗奉行、町奉行とトントン拍子に出世双六を登りつめたことがわかった。そんな折、主水は円光院で大奥年寄・松尾、老中酒井、右京亮が密会する現場を目撃した。そこでお上が、昔ここで慰みものにした菊という女の怨霊に悩まされていると知る。また、旗本がおけら長屋に乗り込んだ。主水が駆けつけると、おふく、杉江など多数の死体が横たわっていた。これを理由に、奉行所はおけら長屋の住人を強制立ち退きさせ、旗本の首領、神保主悦らを切腹させた。お弓も自ら命を絶ち、文七は本当の下手人を殺ると宣言、十字手裏剣の使い手九蔵と対決するが、相打ちとなって息をひきとった。その頃、円光院では酒井と右京亮が酒を飲みながら密談していた。「おけら長屋に寺を建てれば菊の怨霊も鎮まるから上様も大喜び」と語る酒井に、右京亮は菊の弟だと告げる。驚いた酒井は血を吐いて倒れた。お上に仕えることになり、酒井が邪魔になった右京亮が毒を盛ったのだ。そこに、主水、秀、政、お玉、順之肋が右京亮の命を狙いに現われた。そして、主水の怒りの刃が右京亮を貫いた。

◇必殺!5 黄金の血
1991年製作
製作国:日本
上映時間:104分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
問答無用で悪を斬る仕事人の活躍を描く時代劇シリーズ第五弾。脚本は「必殺! ブラウン館の怪物たち」の吉田剛が執筆。監督は「動天」の舛田利雄。撮影は「必殺4 恨みはらします」の石原興がそれぞれ担当。
金座後藤家の女中・お浅は、幼なじみの与七に想いを寄せていた。しかし、与七を乗せた御用船は無宿人に襲撃されて沈没。お浅は川へ身を投げようとするが、偶然通りかかった政に助けられる。金を乗せた御用船沈没によって江戸の金相場は急上昇し、そんな折り、主水に鎌イタチの元締おむらから裏の仕事の依頼が入る。後藤家の妻・千勢が御用船乗組員の仇討ちに五百両出すというのだ。主水は話がうますぎると仕事を断るが、数日後、無宿人どもを始末したおむら達が、紅蝙蝠を自在に操る黒装束の集団・地獄組に襲われる。新月の夜のある日、丘の上から突然立ち昇った不思議な光を見ようとると江戸中から人々が集まっていた。その中には千勢の企みを暴こうとする政や秀、おむらの姿もあった。だが、その光とは実は後藤家が無宿人どもに襲わせ、隠させた御用船の金の光だった。その真相を知られることを恐れた千勢らは、お浅ともども仕事人達を始末しようとしていた。すべては金の値上がりで儲け、その金で老中職を買おうとする勘定奉行・太田と金座後藤家の当主の座を狙う三之助が仕組んだことだった。無宿人どもに上納金を盗ませ、隠させ、仕事人に無宿人どもを殺させ、その仕事人を今度は黒装束の地獄組が襲う。そしてそのからくりを知った主水を始め、仕事人達は地獄組との死闘を繰り広げ、勘定奉行・太田と金座後藤組の三之助、そして千勢に怒りの刃を差し向けるのだった。

◇必殺!主水死す
1996年製作
製作国:日本
上映時間:100分
ジャンル:時代劇
配給:松竹
≪解説 あらすじ≫
1972年から20年間に渡って放送されたテレビ時代劇『必殺!』シリーズの5年ぶりの劇場版第6作。監督は初期テレビシリーズから『必殺!』にかかわり、劇場版第1作「必殺!」も監督した貞永方久。脚本は「復活の朝」の吉田剛、撮影は「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の石原興がそれぞれ担当している。音楽はシリーズ全てを手掛ける平尾昌晃。『必殺!』の代名詞ともいえる仕事人・中村主水にはテレビ版同様に藤田まことがふんし、三田村邦彦、菅井きん、白木万理、中条きよしらテレビのレギュラー陣に加え、名取裕子、津川雅彦、東ちずる、野村祐人、細川ふみえら多彩な顔触れのゲストが華を添えている。
仕事人仲間のおけいと不義を重ねていた中村主水は、家庭を捨てる覚悟で新たな生活を準備していた。そのころ、葛飾北斎が謎の死を遂げ、娘のお栄は犯人捜しを主水に相談する。主水は北斎の描いた似顔絵にそっくりの大道芸人・捨蔵に町で出会った。捨蔵は男の身なりをしているが実は女で、三味線ひきの養母・お夢に育てられている。お夢は20年前の傷がもとで記憶を無くしてしまっていたが、実は主水の昔馴染みの仕事人・お千代だった。同じころ、大奥では上臈年寄の姉小路が元老中・水野忠邦と組んで、将軍家世継の家定の双子の片割れを捜し出し、お家を乗っ取ろうと企んでいた。その動きを察知した家定の母・お美津は、大奥掃除人の元締め・権の四郎とその息子・清太に片割れの抹殺を命じ、清太はその始末をおけいに依頼した。ところが、この双子の片割れというのは捨蔵のことだったのである。捨蔵の似顔絵を描かされた北斎は、口封じのために姉小路らによって謀殺されたのだった。主水はおけいを通じて四郎と会うが、その男は主水がかつてお千代をめぐって争った宿敵・清吉だった。清吉はお千代を妻としたが、やがて生まれた清太の父親が主水だと思い込み、20年前にお千代を殺そうとしていたのである。四郎に捨蔵暗殺を思いとどまらせた主水は、おけいともども協力して姉小路と忠国を討つことになった。そんなおり、お千代と捨蔵が芸を披露するため大奥に招かれ、主水もその席に並んだ。捨蔵が女であることを知った姉小路は、もう用はないと斬り捨てようとしたが、主水たちがそれを救う。しかし、四郎は裏で主水の命を狙っており、仕事を終えたおけいが殺されそうになった。主水は罠と知りつつ、四郎のもとへ向かう。四郎は清太に主水を討たせようとしたが、記憶の戻ったお千代は清太の父は間違いなく四郎だと告げた。混乱した四郎は自分に逆らう態度を取った清太を絞め殺し、主水との一騎打ちに望む。主水は宿命の対決に決着をつけたが、自分たちの運命をはかなんだお千代に背後から刺され、断末魔の四郎が放った爆薬に吹き飛ばされるのだった。主水を追ってきた秀、勇次、おけいは、燃え上がる炎をただ見つめていた。
★★★☆☆
●総体的に、好きなジャンルです。晴らせぬ恨み晴らします、金で請け負う殺し屋稼業、なんですが
そこには、人情が絡んで、何文という少ないお金から、何百両というお金まで幅が広い。必殺シリー
ズは中村主水が出てきてから、面白くなったと言える。家庭に帰ればさえない夫、裏稼業では凄腕の
殺し屋。それを取り巻く、様々な技を持った殺し屋たちが、悪人どもをバッタバッタと倒していく様は
痛快である。現代でも許せぬ悪ははびこってます。仕事人、いないかなぁ~。