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甘い人間

本★ときどき★パン

さよならの儀式 宮部みゆき

2019-07-17 09:40:18 | 読書


収録作品(全8編)
「母の法律」
虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」。でも、救いきれないものはある。
母親と対面したラストが秀逸。自分の都合のよい方に捉える生みの親。あきれたが、人は大なり小なりそういうものだろう。」自分も含めて

「戦闘員」
孤独な老人の日常に迫る侵略者の影。覚醒の時が来た。
監視カメラの恐怖がじわじわ迫ってくる。宮部氏からの警告。

「わたしとワタシ」
45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。「やっぱり、タイムスリップしちゃってる!」
自販機を使うときは慎重に...

「さよならの儀式」
長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶
ルンバ君、使ってます。お仕事ロボットが普及する近未来の人たちの感覚は分かる。
そこで終わらずに、人が生きて存在している価値にまで迫っている部分に考えさせられた。

「星に願いを」
妹が体調を崩したのも、駅の無差別殺傷事件も、みんな「おともだち」のせい?
おともだちに心を寄せる妹が健気。自分の気持ちを押し殺していた姉が気持ちをはき出せてよかった。

「聖痕」
調査事務所を訪れた依頼人の話によれば----ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。
これが一番読み応えがあった。探偵との会話や考察が長いなと感じながら読んでいたら、最後にびっくり。
『なんとなくSF』ではなく『ちゃんとSF』。すごい!

以下2作は「聖痕」の衝撃でぼんやりと読む...
「海神の裔」
明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。
「保安官の明日」
パトロール中、保安官の無線が鳴った。「誘拐事件発生です」なぜいつも道を間違ってしまうのか……

透明なきみの後悔を見抜けない 望月拓海

2019-07-15 18:26:09 | NetGalley



内容紹介
幽霊と、恋はできますか?
あなたは見抜けますか?
彼の秘密、彼女の真実――

世界はめまぐるしく反転する感動の恋愛ミステリー

気がつくと駿府城公園の中央広場にいた。
ぼくは――誰なんだ?
記憶を失ったぼくに話しかけてきた、柔らかな雰囲気の大学生、開登。
人助けが趣味だという彼と、ぼくは失った過去を探しに出かける。
心を苛む焦燥感。そして思い出す。僕は教師で、あの子を助けないと!
 だが僕の過去には驚きの結末が待っていて……。

本当の自分が見つかる、衝撃と感動が詰まった恋愛ミステリー。


「透明」はユーレイ(この表記 気になる)は読み始めてすぐに分かったが、
「きみ」は誰?

「君の後悔を」「見抜けない」最後まで読んで、ようやく、見抜けなかった後悔が分かった。切ない。
作品名「透明な君の後悔を見抜けない」がいい。二人の気持ちの純粋さが伝わってくる。

ズムスタ本日も満員御礼

2019-07-11 07:15:43 | NetGalley
#ズムスタ本日も満員御礼 #NetGalleyJP

「でも、あなたの席(チケット)はありません。」
カープという素晴らしいチームを、 そしてカープファンを、 球団フロントが喰いものにしている?

●身勝手すぎるチケット販売方法
●強引な球場移転の裏事情
●スキャンダル発覚と黒田博樹復帰の奇妙な符号
●衣笠祥雄への徹底した冷遇……
疑問だらけの球団の内幕に迫る、タブー破りの広島カープ論!


チーム一流、フロント三流。権力を握った人間が、組織を自分のカラーに染めるために人事に介入するのは世の習い。

三連覇カープのチームの顔:丸選手、巨人移籍のニュースは、カープファンでなくとも驚いた。
話題になっていたころは、球団の評価(報酬額)が低すぎるのは仕方がないと納得していたが、カープファンの心境は複雑だっただろう。

チケットの販売方法、故・衣笠氏に対する冷遇、地元ファンをないがしろにするなど、
どちらを向いて球団経営をしているのかと疑問だらけで読了。
スポーツのも小説第一人者の堂場先生の手で小説化してほしい。
広島言葉が巧みな柚月裕子氏の迫力満点の作品もいいかも。
マラソン・ラグビーと最近スポーツものが続く池井戸氏に切り込んでもらうのも面白そう。
2019年7月10日カープは11連敗で前半戦終了。

密室を開ける手 藤本ひとみ

2019-07-08 12:45:09 | NetGalley
「探偵チームKZ事件ノート」に登場する上杉和典:知的でクールな「数の上杉」が父と祖父の謎に迫る。


祖父の日記から切り取られたページ。
祖母のアルバムから抜き去られた写真。
そして父親の不審な行動――
全てが繋がったとき、第二次世界大戦が生んだ悲しき闇が明らかになる!

祖父が死んだ。たいして行き来もなかった上杉和典は葬儀にも出ず、いつも通り通学していたところ、
母親から父のクリーニングを取ってくるように言い渡される。
そこで店員から、父の服に広範囲にわたり血痕がついており、特に依頼はなかったが勝手に綺麗にしておいたと言われる。
さらに母親から、最近父親が不倫をしているに違いないという話を聞かされる。何度も長崎に行っていて怪しいという。
父親の度重なる不審な行動。いったい何が隠されているのか。
探ってみると、死んだ祖父にまつわる新たな謎が浮上してきた……。


厚生省に勤務されていた経歴のある藤本しのぶ氏の問題意識を感じる作品。

優生保護法の逆を突く、優秀児童調査と優生思想の実践が根底にあるような気がする。

その問題意識を祖父と地元の幼なじみとのつながりや、
太平洋戦争中、青少年の愛国心を利用した実験台(事実かどうか未確認)と祖父の過去が巧みに組み合わされ、
ミステリアスな展開に興味が尽きなかった。

探偵チームKZ事件ノート