甘い人間

本★ときどき★パン

パラダイスガーデンの喪失・仮 若竹七海

2021-06-29 12:24:16 | NetGalley
「葉崎市シリーズ」最新作が、8年ぶりに書下ろしで登場

表紙の書影はまだ出ません。
Amazonで検索しても該当無し状態。


内容紹介
2020年秋、葉崎市の崖の上にある個人庭園〈パラダイス・ガーデン〉で、身元不明の老女の自死死体が発見された。
庭園のオーナー・兵藤房子は自殺ほう助を疑われ、ささやかな暮らしは大きく乱される。

葉崎署の二村貴美子警部補が捜査に乗り出すが、
署内は新型コロナのクラスター騒ぎで落ち着かず、
事件を端に、他の住民たちの日常にも綻びが見えはじめるのだった。

新作キルトの着想を得て心を躍らせる引退した大御所キルト作家、
亡くなった老女の正体を噂する房子の亡き母の幼馴染たち、
〈パラダイス・ガーデン〉の名を騙った老人ホーム詐欺の発覚、
不穏な動きを見せる出所したばかりの「日本一有名な殺人容疑者」、
ママ友の息子の身代金誘拐事件に動揺する移住ママ……等、
総勢15名以上の住民の物語を、様々な視点からパッチワークのように綴っていく著者の緻密な筆力は圧巻。

8年ぶりの、若竹七海氏の人気シリーズ〈葉崎市シリーズ〉。
今の世相とコージー・ミステリーの世界を見事に合わせた、書下ろし長編推理小説! 

共謀小説家 蛭田 亜紗子

2021-03-25 17:59:38 | NetGalley
「私たちは互いに利用しあって生きている」

尾崎紅葉と加藤籌子・小栗風葉夫妻
師紅葉が『金色夜叉』を未完のまま死ぬと、その続き『終編金色夜叉』を執筆した。

内容紹介と編集担当者コメント

その人は優しき伴侶か、おぞましい鬼か。実在の小説家夫妻を題材にした、衝撃的な愛の物語。
西洋化の波にもまれる明治時代。
小説家になりたいと願う17歳の宮島冬子は、当代きっての文学者・尾形柳後雄(ゆうごお)のもとで女中をしている。
同じ志で下宿する男弟子たちは次々と小説家として花開いていくのに、
女の冬子はまるで文壇から相手にされないどころか、指導者の柳後雄からの誘いを断れず彼の子を身籠もってしまう。

行き場がなくなり小説家の夢を砕かれそうになった冬子を救ったのは、弟子の一人・春明だった。
「あなたとおれで共謀しないか」と結婚を提案された冬子は、思惑がわからぬまま、春明の妻になることを決意する。
しかし、新鋭小説家の夫を支えながら、一人の無名の表現者として創作を続ける冬子に、
想像もしなかった壮絶な日々が待ち受けていた――。


社会の構造に抗いながら懸命に生きる冬子の選択を、ぜひ見届けて頂きたいです。
終章を読んだ時には、あまりの衝撃に涙が止まらず、しばらく呆然としてしまいました。
どんなに傷つき、憎み合うことがあろうと、
こんなにも美しい言葉をいつか誰かと交わせる日が来るのなら、私は一生人と関わり続けていたいと願います。
壮絶な旅路の果てに冬子が辿り着いたこの光景を、ぜひ読者のみなさまにも見て頂けたら幸いです。

【担当編集・田中】


感想
とても面白かった。
明治時代の作家先生の話か…。と、冒頭での苦手意識はあっという間になくなり、するする読んだ。
最後の方は衝撃も衝撃、さすが「共謀」小説家夫婦、お見事です。
「私たちは互いに利用しあって生きている」帯の惹句もいいし、文章も巧みで、新人とは思えない。

冬子が作家として成功するのかと思ったら、なかなかの策士ぶりで、
「内容紹介」に、実在の小説家夫婦を題材にしたと書いてあったので、「尾形柳後雄」→尾崎紅葉だなとか、
未完の作品は『金色夜叉』、ということは・・・など思い描いているうちに、話は次々に思わぬ方向に展開され、
衝撃的でありながらも、何だか納得、いい夫婦じゃないかと最後はしみじみしました。
実在人物をモデルにした小説は時間に沿って出来事をたどるだけで終わってしまうものが多いですが、
夫の小説家と「共謀」する文才のある妻、二人の設定とその後の関係がとてもよくて、良作だと思います。

転職の魔王様 額賀澪

2021-02-06 18:51:05 | NetGalley


内容紹介
この会社で、この仕事で、この生き方のままで――いいんだろうか。

大学卒業後に入社した大手広告代理店でパワハラに遭い、三年たたずに退職してしまった未谷千晴。
働く自信と希望をすっかり無くしてしまった千晴だが、
どうにか「普通の大人」に戻りたいと、
伯母が経営する人材紹介会社を活用しながら転職活動をすることに。
彼女はその会社で、「転職の魔王様」という異名を持つ凄腕キャリアアドバイザー・来栖嵐と出会う。
面談初日から不躾な態度で接してくる来栖に、千晴は戸惑うが……。

若手注目作家が未来の見えない大人たちに捧ぐ、渾身のお仕事小説。


生真面目で 身動きがままならない登場人物たちがもがく姿は 額賀さんの作品ではお馴染みですよね。
転職にスポットを当てたところに新しさを感じました。
「仕事とはもっと輝かしくて、熱量があって、心を弾ませるもの」
「私は私を必要としてくれるところで働きたい」
ほか、転職希望者の台詞には苦笑いです。
学校教育が原因でしょうか? 就活ですり込まれた結果なのでしょうか?
働くことは生活すること。収入を得ること。シンプルに考えられないのは若さゆえの純粋さなのか。

ワンダフル・ライフ 丸山正樹

2021-01-06 14:48:03 | NetGalley
刊行日:2021年1月20日


内容紹介

事故による頸椎損傷で、肩から下が動かず寝たきりの「妻」(49)を
自宅で介護している「わたし」(50)。

自由のない生活を長年送っているが、
身体が動かない以外は事故前と変わらない妻から「ありがとう」の言葉を言われたこともない。

なんのため、誰のためにこんな生活をしているのかと思い悩むなか、ある〝趣味〟をはじめる――

一方、設計士の一志(39)と編集者の摂(38)夫婦は、一年限定で始めた妊活が実らなかった。

摂から特別養子縁組を検討したいと打ち明けられた一志は戸惑い――

さまざまな悩みを抱える男女の〝過去と未来〟が、
人間の根源的な問いを投げかける傑作長編。

おすすめコメント
「わたし」の物語と3組の男女の物語が絡み合い繋がるとき、

見えていた景色は一変し、慟哭の真実が胸を衝く――


第12回角川春樹小説賞受賞作 『質草女房』

2020-10-30 18:54:40 | NetGalley


江戸から明治へ。幕末で彰義隊でちょっと苦手意識があり。
なのですが、
質屋の主とのやり取りや貧乏浪人の柏木の気安さで冒頭部分がすんなり進む。
読みやすくて、作品の世界にすーっと入っていくことができた。
女房を質草にして戦いへとか、それが まさかのスパイとか、
意表をつく設定。あの時代なら あり得るかな。
質草にされた“けい”さんがどうなるのかが気になって、一気読み。
めでたしめでたしで、おまけもついて、楽しめました。


内容紹介
幕末に取り残された男、質草にされた女、明治へと駆け急ぐ男
三人の生き様が交錯する、時代小説の傑作誕生!
「夫は必ず戻ってきます」彰義隊に入った夫に、戦いの前に手元に金が必要だと
質屋に預 けられた妻・けい。
そんな男なのに、けいはひたすらに夫を信じ、帰りを待っている。
捜索を頼まれた貧乏浪人・柏木宗太郎は、動乱を目のあたりにしながら会津へ向かう最中、
新政府軍の参謀・速水興平と出会い、行を共にすることに……。

選考委員にエンターテインメント性を高く評価された時代小説の新しい波!