「一律二ヶ月!」「団結ガンバロー!」
俺たちは闘って労働者になった
【決起の詩】
オレ達は忘れない
寒風吹きすさぶ十一月三十日
1975年のこの晩オレ達三十六名は決起した
こわくてこわくて仕方なかった
腰をぬかし歯をガチガチふるわせ
しかしあいつらへの憎しみがこわさにかった
オレ達は人間じゃなかった
パップ野郎、パッピ、バカ、アホウ、ビッコ、「子供」、ロボット、片輪
これが大久保製壜での十年間、オレ達に
浴びせられた呼び名の数々
オレ達は労働者でもなかった
御用組合はオレ達の名前に赤丸印で二重丸をつけて
食堂に張りだした
「加入資格なし」だった
オレ達には法律もなかった
モンキースパナで頭をなぐられても
風呂場で小便をかけられても
社長の実弟取締役に恋人が強姦されそうになっても
強制社内貯金で手元には数千円でも
月のうち二十二日間も無理やり深夜労働させられても
一ヶ月のうち休みがたった一日でも
法律は何も守ってくれなかった
箱詰めや検査は健常者より立派にやっている
それなのに賃金は大幅差別、ボーナスは乗率にまで差をつける
強制呼び出し 十二時間労働―出会い
通し勤務
酷使・虐待・差別・暴力
過労の中で発作でたおれた後藤君
救急車も呼ばれずパレットの上に放置された
次の日「かあちゃんに会いたい」と言って死んでいった
「お前らは生きたロボットだ」
「犬猫と同じだ」
「春になるとさかりがつくんだ」
「検査課はゴミのふきだまりだ」
オレ達の前でうそぶくあいつら
オレ達をぶっとばしてあるくあいつら
あいつらにビクビクしながらも
はらわたはにえくりかえる
酒や競馬で憎しみが消えるわけがない
クソッタレッ
決起!
オレ達は決起したぞ!
オレ達は決起したぞ!
オレ達は決起したぞ!
「チキショウ、チキショウ」とこれだけだった
憎しみ、憎しみ、憎しみ、憎しみ
殺してやりたいほど憎いあいつらを
やっつけるんだ「チキショウ」
あとは夢中だ
てつ夜で工場にすわりこみだ
あやまれ 今までのこと
ボーナスの乗率の差別だけは
絶対に認めないぞ
社長を呼んでこい
来るまでここを動かないぞ
鬼のような社長にはじめて逆らった
殺されてもいい やるしかない
こうなったらとことんだ
チキショウ チキショウ
朝方、工場を追いだされて
教会にろう城した
ろう城闘争が始まった
実力で闘った
会社は次から次と汚い手口でやってきた
暴力、おどし、親をつかっての切りくずし
捨て身で闘った
そしてオレ達の労働組合を
オレ達で作った
組合結成 一九七五年十二月三日
そして大声で叫んだ
イチリーツ ニカゲーツ
ダンケーツ ガンバロー
これしかなかった 何百回、何千回叫んだことか
朝起きて教会の庭で叫んだ
駅の改札口で、ホームで叫んだ
労政の中で、道をいく時も叫んだ
これしかなかった
夜、礼拝堂のストーブの回りで叫んだ
弱気になれば叫び
勝てそうだと喜べば叫び
団交が決裂すれば叫び
ノドがカラカラになっても叫んだ
みんな叫んだ
精薄者も身障者も健常者もなかった
叫んで叫んで叫びまくった
オレ達の叫びで
労政事務所の中がピリピリふるえる
会社側交渉員はそのたびに
ピクッと体をこわばらす
今度は連中がこわがっている
今度は連中のほうがこわがっている
今度は連中のほうがこわがっている
オレ達が連中をこわがらせた
オレ達は労働者になった
オレ達は闘って労働者になった
もうドレイじゃない
オレ達は連中をこわがらせた
オレ達の闘いにあいつらはこわがっている
オレ達が団結すれば
オレ達が闘うために団結すれば
連中はこわがる
オレ達は団結をしった
オレ達はオレ達の力をしった
オレ達の力を
オレ達の憎しみを
おもいきり発揮させてくれたのは
地域の仲間の限りない支援
不眠不休ではりついた副委員長とそれを保証すべく年休をとり彼の家業を代わりに働く東部労組員にみられる総動員体制
ピッタリと寄りそう墨田解放同盟青婦部
三里塚支援の葛飾の婦人達はタキダシと洗タクに四十名も参加
牧師は右ヨクの妨害をはねのけた
鉄パイプと軍手で取りまく職制と
労働者、保母、市民が敢然と対峙
体をはり、よってたかって支えてくれた
オレ達の恩人 兄弟達 何十何百の仲間
そして
全国から会社に殺到する抗議の嵐
勝ったぞ!
「勝ったよ」「勝ったよ」
森ちゃんが叫ぶ
よしおが
重幸が
角田が叫ぶ 叫ぶ
善場がうずくまって泣いている
ろう城闘争七日目だった 十二月八日未明
支援も叫ぶ 一緒に泣いてくれている
杉田がこぶしをあげて叫んだ
「もう二度と許しはしない
虐待を! 差別を! 暴力を! 絶対に」
イチリーツ 二カゲーツ
ダンケツ ガンバロー
ガンバロー
ガンバロー