日本の対ロシア政策は間違っている
望月喜市
日本はG7の1員としての義務を果たせというオバマ大統領の強い圧力に屈し、3回目の対ロ制裁を発表した。ロシアはこれに反発し、秋に予定されるプーチン大統領の訪日の可能性が薄らいでいる。
米国主導の対ロ制裁の根拠は、(1)「クリミアのロシア編入」、(2)「マレーシア旅客機撃墜犯人説」、(3)「親露派への武器提供説」、(4)「親露派への抑制力不十分説」などである。
(1)については、「覆水盆に返らず」でロシアは正当性を主張し返還は期待できない。これを理由に制裁してもその効果は期待できず、無用な摩擦は避けるべきだ。北方領土を返還しないのは怪しからんといって制裁を科す行為に似ている。日本は北方領土では対ロ制裁はしていない。(2)は米国が制裁の先頭に立った対ロバッシングの根拠であったが、その根拠を示すことなく、その後現在では米国でも「撃墜にはロシアの直接関与はなかった」説に落ち着いた。しかし、直後の強烈な制裁レベルを緩和する兆しはない。(3)は親露派の持っている重火器、とくに「ブーク」は、ロシアが提供したものではなく、ウクライナ正規軍との戦闘で分捕ったものだという説に落ち着いている。(4)については、ロシアはたびたび両者の和解を(EUなどを交えて)提案しているが、実現していないのが実態で、ロシアといえどもこれ以上の影響力行使は不可能だ。オバマ氏は、従来他国の内政に干渉し政府を転覆してきた経験をもつので、ロシアにも同じような影響力を発揮せよと言いたいようだが、ロシアはそうした行為はすべきではないと考えている。
こうしてみると、日本を含む欧米の対ロ制裁の根拠は立ち消えてしまう。さらに経済制裁のマイナス効果がロシアはもちろんEU諸国にも表れてきた。
何より肝心なことは、ロシアも参加している欧州安保協力機構(OSCE)の最終結論を待つべきで、そのうえで犯人を断罪すべきだということだ。それを待たないで根拠不明のまま双方が傷つけあう現状は異常であるし、傷が深くならないうちに即刻辞めるべきだ。
というわけで、日本がオバマに盲目的に追随してロシアをバッシングした結果、プーチン来日は不可能になり(バッシングしている国を大統領が訪問することは常識では考えられない)、しかもオバマ氏にとって日本のバッシングは不十分とい印象を与えている。まさに「2兔追うものは1兔も得ず」である。