サンチョパンサの憂鬱

昼下がりのサンチョパンサ(2)……悪事を働く人の哀しみと苦しみは

ここ三年小中高生の自殺者は一年間で四百人オーバーを続けている。

昔型の分かり易い不良、非行行為(いわゆる警察沙汰)は三十年間で激減しているという。
しかし、ネットでのイジメ件数は60数万件である。

分かり易い非行、不良少年というのが街から姿を消した代わりに地下に潜っての陰湿な(傷害事件と言ってよい)イジメが取って変わっただけ?とも言える。

今回、静岡県の保育所で起こった保育士による幼児虐待を聞いた時の驚きは大きかった。

しかし……ネットによる驚くべきイジメ件数をベースにして『現代の若者達の心模様』を考えてみれば……起こっても不思議はないのかも?と思った。

保育士ともあろう者が?という人は多いと思うけれど?……子供を守り教育を通して育成する『教師ともあろう者が?』的な性犯罪事件の多発を考えれば……同じ図式の流れだと思った。

これら奇妙な事件の多発……今や日常茶飯事となってしまった感がある。

個人の資質から起こる問題なんかじゃなく……社会構造・風潮が誘因となっていることは間違いないと考えるのが妥当だと思う…。
その重圧によって人間の心理が何らかの捩(よじ)れ、歪みを生じているのだと。

日常的に心が相当追い詰められている。
外すことが出来ないペルソナ(仮面)が彼等、彼女等を酸欠のような余裕のない情緒的圧迫状態に閉じ込めたあげくの暴発なんだろうと感じるのである。

演劇であれ映画であれ……バーチャル(疑似)的な興奮状態はおよそ二時間が良いところである。四六時中、同調圧力にさらされ演技を強要され続ける心は変調を来たさない方がおかしいのである。

勿論、リアル100%ってそれはそれでシリアスになり過ぎる。
ペルソナを装着し束の間、張り詰めた緊張を緩めることも必要なんだけど……。

旭川市のイジメによる少女の自殺を考える時……一人の命を死に追いやった同年代の少年少女達の『リアルを感じ取る感性の喪失』こそが最大の悲劇なんじゃないか?……最近、僕はそう感じる様になった。

彼等の親達の『子供を庇う?姿勢』というより『保身そのものといった対応』しか出来ないスタンスもまた深い悲劇性を孕んでいる。
親達もまた『慢性的パニック状態』を生きているのである。

『同じ目に合せてやれば良い!』なぁ〜んて軽くキレイな正義気取りなんて出来ない深刻さに気付かなきゃイケナイよね?

明日は我が身?なんて悠長な話じゃなく……『今日の我が身』そのものの感覚で『全体のそもそも論』を丹念に思考しなきゃ……この社会的限界の難局を乗り切れない。

イジメ等社会の何らかの歪みの犠牲者達は当然痛ましい。当たり前の話である。
しかし六十万件を超える『イジメている少年少女達の心の悲劇性』こそ救わなければ社会は瓦解するしかなくなるんじゃね?

自分が普通に暮らすために『他者の悲しみという犠牲』を必要とする人間の哀れ?である。
クラスメイトを追い込む為、深夜にスマホをタップしてる少年少女の孤立し切ってる心、その表情を想像してみて欲しい。

そんな『不自然で脆弱な心』で長い人生を生き抜く事は出来よう筈もなく……。
今回の保育士達はその心の完成形を表現してしまった?そう考えれば『無理のない自然な理解』に行き着けた気がしたのである……。

『表面化しなきゃOK』的に、大人達は刹那の小ガネ、利権、目の前の有利不利に窮々としているけれど……。
いつの日か……その行状の反作用を受け取る日がやって来る。因果応報という連鎖である。

少年少女、若者達の心に目を配らず、刹那刹那を積み重ねている大人達の行状こそ、今回の幼児虐待事件の『主犯』なのかも知れませんよ?

本当にリア充?……不都合に目を瞑っての充実? 
そうか?その充実を誇る為には?ギャラリーとして困窮している人間の存在を必要としてるもんね……?

なんだか?心寂しくなるものなんですね?
その『充実』って……。
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